エピソード0.25【大家族・BIG・DADDY】
今話は『第2章その3』などのヒナ達と出逢う直前の回です。
要は…ドワーフの神官ガガザーザの家族の話。彼の温かみに触れてみました。
ですが…ちょいとごちゃごちゃしています。そこんとこ、ご容赦くださいませ…
( ノ;_ _)ノ
巨大な岩壁には幾つもの洞窟の入り口があった。
その入り口には頑丈な梯子が建てられており更に、穴から穴へと移動できるように足場が組まれている。
何かの襲撃に備えているのだろうか、その入り口全てに兵士が常駐されている。
さて、幾つかある内のひとつ、地上から行けそうな一際大きな入り口から入ってみる。
潜ろうとすると門番らしい者に許可証を提示された。
怪しいものじゃあないよ。
暗い筈の洞窟の中は壁を伝うように明かりが灯されていた。
不安定ではないかと思った足場も整備されているので案外ラクだ。
矢印などの標識も掛けられている。新手の観光地か?
しばらく進んでいくと……とても広い空間に出た。
何故か暖かい陽の光を感じる。
眩しさを堪え頭上を見上げる。
登頂部にぽっかりと大きめ穴が開いていた。どうやらそこから陽射しが注がれているようだ。
そして今、目の前には……森に囲まれた街があった。
洞窟に入った筈なのに。
その中心部には何処までも伸びているかのような大木。
この樹何の樹? 気になる樹。皆が集まって街が出来た。
思わずその光景に見とれてしまい足を止めてしまったが、更に歩み続けてみよう。
然程深くない森を抜け、街中に入ってみる。
加工された岩石で組まれた立派な建物が数棟目立つ。窓から窓へと繋がれた縄の数々。
洗濯物が夥しく干されている。
やや広めの通りに出ると、皆が皆ではないが、やや小肥りで筋骨粒々とした住人達が賑かに街を彩っていた。
岩の妖精・ドワーフの街『ゴゴドド』。
その一角の住居で子供達は父親の帰りを今か今かと待っていた。
「父ちゃん、いつ帰ってくるかなぁ」
縁側にて座り足をぶーらぶらさせる男の子。
退屈そうに空を眺めている。
「心配しなくても、もうすぐ、帰ってくるよ」
片手で団扇を扇ぐ薄手の少女。もう片方の手には爪楊枝が刺さった果物の欠片。
既に頬一杯に溜め込んでいる。
だが、まだ足りないのか強引に口に放り込んだ。
育ち盛りなので、いっぱい食べなさい。
「そうだね。だってこないだの手紙に書いてあったもんね」
庭で木工細工に勤しむ少女。
飛び散る削りカスなど気にしない。気にしない。
望みは高く果てしなく。
幾つか完成した物をみるに商品としての価値がある。
素材はプライスレス。見込みがある。
「ちゃーん。はーい」
その完成された木工細工を奪い我が物にしようと赤子が手を伸ばした。
ように見える。
「あ、ダメだよう。お母さ~ん、グーが外に出ようとしてる~」
ばたばたママ。
料理をしていた最中だったのか。
片手に包丁をもった母親が引き戸を開き、ふと感慨に耽る。
「あらあら。ダメよ。グーググったら。もう……こんなに歩けるようになったのね」
母親は赤子を拾い上げ、優しく抱き抱えた。
まだ片手には包丁を持っている。
非常に危険だ。人質にとられてしまった。
がらがらがらっ。
表の戸が明るく開かれた。
「ただいま。じゃな」
声を聞いた一同は皆、急ぎ足で彼の元へ集う。
「あ! 父ちゃん!」「おかえりなさい!」「ちゃーん。はーい」
「スゴいな、グー。父ちゃん帰ってくるのが分かったんじゃあない?」
断じて違う。とも言い切れない。
赤子の行動はいつも自由で謎ばかりなのだ。
「あなた。御勤め、お疲れ様です。お食事にします? お風呂にします? それとも…」
「その先は子供達の前では内緒じゃぞ? バイエルル」
帰ってきた夫は妻の唇を優しく塞ぐ。
まだまだ現役だ。
老いて尚、益々盛んなのだろう。
「あ、お父さん。おかえりなさい」
2階から降りてきたのは父親の面影が色濃い男性。
何か仕事をしていたみたいで、服の所々に泥が付着している。
「おお。ドドッド、お主も元気そうで何よりじゃわい」
「うん。ブロジジャは今お使いに出てるけどね」
今、名が挙がったブロジジャというのは長男ドドッドの嫁である。
まだ彼等夫妻には子供が産まれていない。
「うむうむ。皆が元気そうで良かった良かった!」
さて。そろそろ家族構成を説明しよう。
父親は高位の神官としてその名を知られるガガザーザ=ドドゴーダ。
年がら年中酒を呑んでいるが彼曰く「水」らしい。
芸術にも明るく店を開ける程の腕と才能を持つ。
長男はドドッド。最近結婚したばかりである。陶芸家としての稼業を営む。
次男ザザンブ。父親が大好きな明るい男の子。
長女ジャジャ。常に何かを食べている。果物が大好物。
次女カカリ。木工細工にハマり今では内職として貢献している。
ちなみに、この3人は『三つ子』である。魂は百までではない。ドワーフなので。
三男グーググ。年の離れた、まだ産まれて1年目の赤ん坊。好奇心旺盛で元気いっぱい。
妻バイエルルは頑張りました。
本来は織物屋に勤めていたのだが、育児休暇の真っ最中。グーググが2歳になったら本職に戻るらしい。
あと、長男の嫁ブロジジャ。
バイエルルの良き参謀であり軍師である。
ふふふ、きれる。
「ねぇ、父ちゃん。おみやげは?」「これ! ザザンブ。いきなりせがむんじゃあありませんのよ」
「ザザンブったら口を開けば『父ちゃん、父ちゃん』っていっつも言ってるんだよ~」「あ! 内緒にしろって言ったのに! もう! ジャジャ姉!」
「ジャジャ姉は仕方無いよ。何度言ってもね?」「カカリ。お前がリーダーだろ? ちゃんと教えておけよ!」
騒がしくなってきたところで、一層輪を掛けるように暑苦しい漢が声を張り上げた。
「いよう!! ちびっこども。元気してッかあ!!」
「「あ! ジャンのおじちゃんだ!」」「ジャンのおじちゃん! おみやげは?」「ちゃーん。はーい」
「あら、ジャニアースさん。お久しぶりです」
意外にも?子供に大人気のジャニアース。『灼熱』は子供にもモテモテなのだ。
4人の子供を抱っこしてはその場で回転する。
玄関先でしないように。
「……アタシも……いるわよ~♪」
「「あ! レイン姉だあ! わーい!」」「レイン姉! おみやげは?」「ちゃーん。はーい」
レインシェスカに一瞬で子供達を取られてしまったジャニアース。前言撤回である。
だが、そんな事は日常茶飯事なのだ。
「あら? パッカードさんは?」
「奴さんは今、宿の手配をしとるよ。流石に家では皆を泊めてやれんでの」
「じゃあ……せめて。夕食でも食べていってくださいな♪」
「ありがとうございます。バイエルルさん!」「おう! ありがとうッ!!」
「さて、では夕食が出きるまでゆっくりしていってくれい」
とりあえず家に入り荷物を下ろしにいくガガザーザ。
子供達を抱っこしたままレインシェスカは庭へと回る。
「んじゃあ……アタシとジャンは子供達の相手をしとくよ~!」
「「やったー! ねぇ、何して遊ぶの!」」「こないだの『もぐら叩き』が良い!」「ちゃーん。はーい」
『もぐら叩き』とは。
レインシェスカの『幻影』の魔術により『もぐら』と化したジャニアースが、地面に掘られた穴から頭を出したり引っ込めたりして、ひたすらに叩かれるという哀しい漢の定めである。
ちなみに穴を掘るのも埋めるのも、ジャニアースの大切な役目であるのだが。
「うふふ。何でも良いわよ~……って……グーちゃんまで連れてきちゃった!」
「よし! 俺ッちが連れてってやらァ! 」
「ぶー! ぶー!」
極めて激しく断固拒否する赤ん坊グーググ。
親指を下に向けているのは気のせいだろうか。
「それ、『イヤだ!』って言ってるんじゃあないかな?」「ちゃーん。はーい」
「ほら。『そうだ!』って言ってる」
「あちゃー……そうなんだ……って事で、ジャン。後は頼むわよ?」
「ヨッシャ! 任された!!」
「「「わーい! わーい!」」」「ちゃーん。はーい!」
4人の子供達を相手にいよいよ本格的に遊び出す。だが、そんな和やかな空気を乱すように、彼は現れた。
「……す……すまねェ……」
『狼人』パッカードである。
ばつが悪そうにポリポリと頭を掻いている。
「……あ……あんた。まさかッ!?」
「いや! ンなつもりは無かったンだ! いやマジで! でもな? 勝てる相手だと思ったンだ!」
彼の悪い癖が出てしまった。
どうやら賭け事が大好きな彼は勝負に負けて有り金全てを失ったらしい。
しかも2人分の宿泊費にまで手を着けてしまっていたのだ。結構な大金である。
この馬鹿!とレインシェスカは彼を叩き説教をしようとしたのだが如何せん。
子供達の前では明るく優しい歌のお姉さんでいたかったので躊躇してしまう。
「やれやれ。相変わらずじゃのう。まぁええわい。庭にでも泊まればよい」
荷物を下ろし、ゆったりとした私服に着替えたガガザーザは言った。
彼は縁側に「どっこらしょ」と座り片手にした様々な果物が盛られた皿をを床に置いた。
「さぁ。皆、食べなさい」
群がる子供達と大人達。
真っ先に飛び付いたのは果物が大好きな長女ジャジャ。
肉では無いのでジャニアースは出遅れてから頂いた。
そういえば……何故かいつも彼はパッカードに甘い。
というか他の面子に怒る姿も見たことがない。
それこそが神官であり妻帯者でもある証明なのだろうか。
「ま、家族のようなモンじゃから、の?」
その日。
ガガザーザの家は、大家族での楽しい宴会場となっていった。
う~む。ヤバイなあ…第3章からの本編。筆が進まない。些かエピソードで楽しみすぎたか?(汗)
いや!頑張って更新しますので、どうか生暖かい目で待っていてください!!
( ノ;_ _)ノ




