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ドラゴンNO涙  作者: caem
第2章・完全敗北、そして立ち上がる。
31/96

エピソード0.5【レインシェスカさんは巨娘です。】

茶番劇は続く(笑)

しかも…時は遡っています。『第2章その4』の宴の最中です。

エピソードのナンバーは気にしないでください。お兄さんとの約束だッ。

先に今話を放り込んでも良かったのですが…何となく、この流れの方が面白いかな?って。

では、お楽しみください。カチカチカチ… 3…2…1…。

 部屋の、ど真ん中に置かれた大きな酒樽。

 それは果たして、これから始まる惨劇の原因ではないだろうか。

 快晴広がる真っ昼間。宴の音頭は誰でもなかった。


「そこの所、もう少し詳しくお願いします!」


 多分に、これからふりかかるであろう災いについて詳細を求めるヒナは。

 擂り粉木のような棒を以て彼等にインタビューを開始する。



「えッとォ……『魔王の系譜』について、だったけか?」


「はい。アタシ達が……けちょんけちょんにやられたのは『暴虐』でしたよね?」


 思い出すに忌々しい……思わず額を擦る。


 何故ならばヒナはあの『暴虐』に2度も弓矢を弾き返されたのだ。

 だが、今はそんな事を言っていられない。



「あぁ、そうだ。あの……イカサマ臭い戦闘力の悪魔だァな」


 問題は、それ以外にまだあんな化け物が居るらしいのだ。

 『残虐』だとか『無道』だとか…そんな厳つい単語を聞いてしまったので、どうせならどんな悪魔なのか聞いておくべきだと。



「で、他の……『残虐』とか『無道』って言うのは…どんな姿形をしてるんですか?」


 木製のカップに並々と注がれた酒を軽く喉に流し込む。

 まだ、宵の宵の口であろう。

 レインシェスカは昔の記憶を捻り出す。


「ん~……アタシ達が直接やりあった事があるのは『残虐』と……こないだやり合った『暴虐』なのよね」


「だな。『残虐』とは2回ほど出会した事があってな……兎に角、ヤベェ。正直次は勝てねぇンじゃあねぇか?」


「そうさのう。姿は……普段はほぼ人間と変わらんのじゃが。いざ、戦いとなると変身しよるんじゃ」


「そうそう! しかも変身したら、とんでもなく強くなるのよね! あれは無いわ~……」


「わしらも1度は撃退したのじゃがなぁ……始末し損ねてのう」


「で、だ……暫くして、まァた出会しちまッてよ……何か前より遥かに強くなッてやがンのよ! あん時ゃマジでヤバかったな!」


「成長型? っていえば良いかな。アタシ達はまだ2回しか出会してないんだけど……次はジャンが居ても厳しいかも…」


「しかもヤツは……関係の無い者達まで捲き込みよる。というか、必ず死者が、犠牲者が出よるんじゃ。全く以て『残虐』極まりない方法で、の……」




「……うぅ。やだな~……ちゃんと止めを指しておいてよ~……」


 大人しく聞いていれば、どんどん恐怖が募ってゆく会話に、ベッドに横たわるカナミはぽつりと悲鳴を漏らす。

 変身して強くなるとか、戦う度に強くなるとか…何処かの戦闘民族かよ。

 いや、相手は悪魔だから……多分、丁寧語で話してくるのか?


 「再戦希望!」とも伺われる何故か嬉しそうなレインシェスカの呟きも痛いが……

 特にパッカード。

 笑い事ではない。


 手にしていた酒を一旦床に置き、「いやいやいや!」と彼は手を振る。



「いや、あんな? ……アレの止めを指すのは……ジャンがふたり居ねェと無理だわ」


 パッカードの視線の先には酒を片手に、固い干し肉に喰らいつく暑苦しい漢。

 どうやらジャニアースは酒盛りというよりは、ただ単に肉が食べたいだけではないだろうか。

 頬一杯に溜め込んだ肉を、更に肉で埋め尽くす。野菜も食べなさい。



「てか……初めに倒した悪魔もそれっぽかったけど……?」


「へぇ! どんなヤツだったの!?」


 瞳を輝かせてヒナに詰め寄るレインシェスカ。

 どちらがインタビューをしているのやら。



「う~んと……何か……女の人っぽくて……竜を黒い『雷撃』? みたいな魔法で攻撃してた」


「ンン? あぁ、そいつァ違えな。アレは『暴虐』ンとこの部下で……『苛虐』だったか?」


 思い当たる節があったのか。

 片方の眉を吊り上げ、怪訝な表情で記憶を遡るパッカード。

 に、しても……悪魔の通称なのであろうがそろそろ混乱してきた。

 何れが何れでも良いような気がする。決して言い訳ではない。



「でも……あの女倒したんだ……やるじゃん!」


「えへへへ。で、他の……『無道』ってヤツは?」


 嬉しそうに自慢するヒナ。だが違う。

 ヤツは勝手に自爆したのだ。

 くれぐれも、其処の所は勘違いしないで頂きたい。



「うむ。『無道』に関してじゃが……まぁ見れば分かる。とにかくでかい!」


 ドワーフのガガザーザはその両手を拡げて、精一杯想像を伝えようとする。

 お前が小さかった頃はこんぐらいだったぜ?の逆である。



「それこそヤツはこの大陸では『災厄』なんて呼ばれていた時代もあったからなァ」


 何故か遠い目をして懐かしむパッカード。過去に何かあったのだろうか。

 というのは『狼人』という種族はこの異世界大陸ファンタジスタに於いて、ドワーフやエルフに次いで、かなり長寿らしいのだ。


 と、ふと窓の外を指差すレインシェスカが言う。



「ほら、あそこに変な形の山が見えるでしょ? あれって『無道』が歩いてった跡らしいのよ」


 ふたこぶ山。表現するならそのような感じか。

 確かに見ようによっては『足跡』に見えない事もない。

 おそらく、長年の月日がその形状を変えていったのだろう。



「確か…大天使の軍勢との闘いだったか? 手酷くヤられて追い返される途中に通ってッたとか……あぁ、ヤダヤダ!」


「まぁ、アレは……遠く離れた地で封印されたと聞く。じゃが用心するように、の?」



 何のフラグを立てる。

 心配するのは此方の方だ。



「でも……まだ他にも居るって話ですよね? ……はぁ……先が思いやられるなぁ……」


「だよね~……」


 等々と、とりあえずの情報収集に勤しんではいたものの。


 本格的に興が乗ってきた酒盛りの現場。そろそろ……『ヤツ』が覚醒する。

 他の面子は「よっ! 待ってました!」とばかりに囃し立てた。




「ぷはぁ~……」


 額を伝う汗を拭い……暑くなってきたのか、上着を1枚脱ぎ下ろす。

 露出された肌が艶かしい。

 というか上着を脱いだので下着しか残っていない。

 はわわ。いや、たわわ。



「……んふふふ~……らんか気持ちよくらってきた~……」


 桃色吐息とはこの事なのか。


 『ヤツ』。

 レインシェスカは更に艶かしい声を室内に充満させる。

 一部では「暑いのかい? なら脱いじまえよ?」などと彼女に悪魔の囁きを耳に挿れている。



「ちょ、ちょっと! レインさん!?」


「なぁに? ヒナちゅわん?」


 ヒナの肩にしなだれ、とろんとした瞳で見つめる。甘い吐息が彼女の耳に、頬にと咲き乱れる。

 キャラ崩壊である。いや、違う。


 酒癖にも色々ある。


 笑い上戸。泣き上戸。鶏上戸。等々つまり人間というのは本質的に。

 朗らかであったり、泣き虫であったり、ニワトリであったりする訳なのだ。




「ヒナちゃわん……てぇ……かーいーれぇ……んふふふ~……」




 レインシェスカさんの場合は『甘え上戸』だったのです。


 一気にヒナに襲い掛かる彼女。

 何故かヒナの服も脱がそうと試みる。

 これはイカン!とばかりに布団に潜り込み完全防御の態勢に入るカナミ。

 ばっちり覗けるように隙間を開けているのは流石と言えよう。



「ちょ…ちょ…だッ! ダメですぅッ! みんなが見てますぅッ!!」


 成る程、見ていなければ良いのか。

 見られなければ、どうという事はない。

 しかし、約1名がその光景を見ていないのが不思議なのだが。


 彼は今、肉に夢中なのである。

 『肉の虜』……響きがなんとなくいやらしい。


 なので、みんなが見ている、という訳ではない。

 ドワーフが見ている。狼人が見ている。

 幼馴染みが見ている。

 マリア様は見ていない。


 今、最後の砦を越えた彼女レインシェスカは…

 ヒナの適度に引き締まった柔らかいお腹に吸い付いていた。

 ちゅーちゅー。タコかいな。




「あは……何これ……可愛い……」




 これが母性本能というやつなのか。

 ヒナは僅かに感じる擽りと愛撫を受け入れてしまった。

 まるで乳飲み子を優しく慈しむが如く、聖母マリア…ヒナはここに降臨したのだ。




「は~ぁ、喰った喰ったぁ……さてと……ッて、うおいッ!?」


 漸く食事を終えたジャニアースはその異様な光景を目の当たりにしてかつて感じたことのない程の衝撃を受ける。

 ヒナの服に潜り込み、お腹をちゅーちゅーしている巨大な娘レインシェスカ。たまにペロペロ。




 何故か身震いがした。

 そして誰も止めようとしない。

 神官のドワーフなどは「ありがたや、ありがたや」と合掌すらしている。

 パッカードは笑い死に。

 カナミは何やら布団の中でもぞもぞしている。




 危険だ! 逃げろ! と本能は彼に告げ……

 その場を後にしたのであった。


ヒャッハ~ッ!!

汚物は……俺だぁ。消毒してくれい。

も、あと1本程エピソード投下したら、本編・第3章を開始しようと思います。

本編開始は9月以降かな?

刮目して……待たないで良いです(爆)

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