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ドラゴンNO涙  作者: caem
第2章・完全敗北、そして立ち上がる。
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エピソード1【灼熱はたまに沈む】

うむ。お祭りの夜だ。

どうせなら、アゲて泣きます、俺がね!(字余り)


前半シリアス?後半カオティックエロス…略してカオス!

苦情は受け付けます(ナニ

 それは産声をあげた。

 太陽の如くぎらぎらと。


 母親が彼を身籠ってからというもの、その街は連日、日照り続きだった。

 ある日、たまたま通りすがった占い師が母親に使命を告げる。

 その赤子が天災をもたらしているのだ、と。

 堕胎せねば、此の地に恵みの雨は降らないと。


 騎士団長を務めている父親はそんな事は無いから大丈夫だと妻を励ました。

 寧ろ、産まれてくる子が、妻が元気であれば良いのだと。


 男の子であれば、私のように弱気を助け強気を挫く騎士になってくれたら。

 女の子であれば、妻のように優しく逞しい可憐な女性になってくれたらと。


 だが、あの占い師の宣告は決して間違いではなかった。


 妊娠期間が経つにつれ、街中の至る場所にある井戸水が徐々に、やがて全てが干上がっていったのだ。

 元来、此の街は緑豊かで資源も豊富な恵まれた土地柄である。

 しかし、その街は確実に干ばつに蝕まれていったのだ。


 貴重な資源を求めて争いも増えた。


 その度に父親は騎士団長として立派に務めた。

 日に日に増える犯罪を、その全てを取り締まる。

 妻や住人達の為にと、節約の日々が続き彼はみるみるうちに痩せこけていった。


 もう、騎士団を辞めて遠い地へ旅立とうかと、何度も考えた。

 だが、その度に妻が彼を支えてくれたのだ。

 ギリギリの栄養だけを摂取し、愛する夫を立てる妊婦。

 果たして、妻は、子どもは無事に…家族全員が幸せになれるのだろうか。


 もう、今以上これ以上の暴動は抑えきれない。


 だが彼はどんなに切羽詰まった状況でも仕事へと赴き、深夜遅くまで激務に努めた。

 そんなある日の事。朝早くに、妻が破水した。

 報告を聞いて急いで夜勤から帰ってきた父親は異様な光景を目の当たりにする。


 燃えている。何もかも。

 全てが焔に包まれている。

 呆然と立ち尽くした彼の視線の先には、妻が愛しそうに赤子を抱いていた。


 燃え盛る部屋に構わず妻に駆け寄る。

 彼女は産まれたばかりの赤子を夫に託した。


「私はこの為に生かされてきたのです」


 涙ひとつ流さずに笑みを浮かべ、たった一言そう告げて、最愛の妻は消滅した。

 彼は泣いた。付き添いの騎士達も、お手伝いさん達も。

 釣られて、赤子も泣いた。



 そして、天は涙を流した。



 数か月ぶりの雨だった。それはどんどん激しさを増し、やがて大河を作り上げた。

 一頻り泣き止んだ彼は大河に名を付けた。最愛の妻の名を。


 『ライカル』。

 後に豊かな街として繁栄していく街の名であった。


 それから数年の月日が経ち、赤子はすくすくと成長していった。

 父親はそんな彼を厳しくも優しく育てていた。


 ある日、遊びから帰ってきた息子の様子がおかしい。


 傷だらけで……。喧嘩でもしたのだろうか。

 どうした?と聞こうとした矢先、彼は言う。



「どうしてうちにはかあさんがいないの?」



 遂にこの時がきてしまったか。

 彼は深くため息をつき……覚悟を決めた。

 母さんはお前を産む為に天に召されたのだと。


「じゃあ……ぼくがいなければ、かあさんは……」


「あぁ、そうだ。だが、お前は今こうして生きている。産んでくれたのは母さんだ」


「ぼくは……いきていていいの?」


「当たり前だ! お前は誰よりも母さんに……天に愛されて産まれた! だから自分も、全てをも愛せよ!」




 ふと、目が覚めた深夜遅くに。

 何故か手が震えている。

 涙が止めどなく溢れてくる。窓の外から雨の音が聞こえる。



「ッだよ……なんで……今頃……思い出すンだ……」



 『灼熱』の漢、ジャニアース=シャイニング。

 彼は今、とある屋敷の一室で寝起きざまに涙を流していた。

 あの事件が切っ掛けかもしれない。不意討ちとはいえ…

 明らかに好意を示された。接吻をされた。

 しかも初体験だったのだ。



「てかよ……俺はレインが好きなんだよなぁ。それは間違いない……はず?」


 首を捻る。むむむ。

 なにがむむむ、だ。いや違う。

 違う、違う。そうじゃ、そうじゃない。


 雨は止んだみたいだが、相変わらず雲がどんよりしていた。

 どんより、どよどよ……いや、そんなことはどうでも良い。


 小難しい事を考えてうんうんと唸っていたらコンコンとノックされた。

 こんなタイミングで来るのは多分ヤツだ、と扉を開き、思わず壁まで飛びずさる。



「ちょっとジャン。そこに座りなさい」


 予想の斜め上どころか、直球その者だった。

 いや無理。マジ無理。

 いっそのこと、このまま壁をぶち破って何処か遠くの街に出掛けよう。

 海にでも行って思いっきり叫ぼう。

 何て叫ぼうかな……確かこういう時は「~~が好きぃぃぃ!」て叫ぶんだよな?


 ってか……。

 そのヒトが今、目の前に居ます。



「は……はひ……」



 暗く閉めきった個室に突然現れたレインシェスカ。

 何やら普段より一層に据えきった瞳をしてなさる。

 ふふふ、きれる。

 ジャニアースより先に床に胡座をかき、その手には酒瓶があった。

 よく見るとかなり顔が朱色に染まっている。酔っ払いである。



「あんたァ……どーいうつもりなろッ!」



 呂律がまわっていない。

 やはり彼女は酔っていなさる。

 床を手で叩く仕草が何処と無く可愛い。

 あれ? やっぱり俺レインが好きなんじゃあ……。



「アタシは……どーしららいーのかって聞いてんのろッ!」


 ?

 だんだん聞き取りづらくなってきた。

 彼女は更に酒をかっ喰らい一瞬で空瓶にした。



「たんないらろ~……しゃけえ……もっれこい!」


 多分……酒を所望しておられる。

 だが、これ以上呑ませて暴走されては。


 最早、聞き取る事はおろか、会話にならない。

 文章にも興せない。


 ついでに言うと……ジャニアース自身が素面なので、もの凄く気の毒である。

 だが、彼は条件反射とでもいうのだろうか。

 思わず鞄の中に隠していた酒を取りだし渡してしまった。



「だらら~……あーしはろーしららいーのかって……んのの!?」


 酒を呑むのか、喋るのか、酔っ払うのか。

 何れかに決めて欲しい。


 いや、まてよ……?


 このまま俺の部屋で既成事実を作っちまえば。

 いや、イカン!


 それだけはイヤだ。ちゃんと向かい合って付き合いたいんだ。

 くだらないかもしれないが、それが俺の誇りなのだ!


 ちなみにいうと、この部屋は借りているのでやめて欲しい。



「んんん~……ろうらのよ~……」



 あ、だ、ダメよダメダメ!


 酔っ払いのレインシェスカは彼の膝に頭を乗せてきた。

 うにうにしている。

 彼の逞しい太股に顔を埋めてくる。腰に手を回してきた。



「………………ッ!!!!」



 己の中の『灼熱』ではない何かが爆発寸前である。

 ぱふぱふー、ぴー、どんどん。


 ン? 待てよ……


 そして、ふと気付く。

 もしかして、これは……あの時トールにされた状況と同じなのではないかと。


 もしくは、トールにあの行為をさせてしまった状況かもしれない。


「そうか……そういう事かァ……」


 ジャニアースは、何て馬鹿な事をしたんだと自分を責めた。

 て、そんな場合じゃない。

 いよいよ以て彼女は彼の膝の上でトンでもない行為をし始めた。



 ……大変美味しそうに太股を舐めていらっしゃる。



 まるで一流のお店の脇道で猫が余り物のスープを頂くように。

 もしくは、肉球でぷにぷにと母乳を絞りだそうと頑張る仔猫のように。猫縛りか。

 てな事を考えていたら、どんどんどんどん彼の太股は、レインシェスカの唾液で染まって逝った。



「ぬえいッ!!」


 

 彼は咄嗟に彼女を抱き抱え、ベッドに押し倒し…その部屋から一目散に逃げ出した。


 廊下ですれ違った男の証言によると、泣き笑いながらピョンピョン跳ね回っていたとの事。


 翌朝、朝食の場に必ず居る筈の約1名のその姿はなく酷い頭痛を引きずるレインシェスカが遅れてやってきた。



「あっれー……記憶とんでる……」



 相変わらず、報われないジャニアースであった。



「本編よりぶっ飛んでんじゃねーか!」

などという戯けた突っ込みは期待してます(おちつけ


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