表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンNO涙  作者: caem
第2章・完全敗北、そして立ち上がる。
27/96

いきなりボス登場。JK達、雪辱を誓う。その15。

ずぇい!!……一旦貯めてたモンをゼロに近づけます。じゃないと……テンションがあがらない(笑)

って事で、更に更新ッ!!

 それは些細な一言から大喧嘩に発展した。




「アタシは帰らない!!」


 彼女はその名の通りに、頑なに通し続ける。

 だが、もう一人も頑なに己を貫き通す。


「だから! なんでよ! なんで一緒に帰らないのよ!!」


 ふたりの間に取り巻く険悪さと変わる事の無い極端すぎる平行線。

 もう以前の、仲が良い姉妹のような関係には戻れないのでは、と。

 カナミは、言い争うヒナとトールの間を行ったり来たりしては慌てふためいていた。



「せっかくバレンシアさんが許してくれて、一旦向こうに帰らせてくれるってのに……」


「そうだよ~……ねぇ、トール。向こうでもやらなきゃいけない事あるじゃない。部活もそうだし、実家の道場とか~……」


「アタシはまだまだこっちでやらなきゃいけない事がある。だから、ふたりだけで帰れば良い」


「……だからぁ……何なのよ!! それを話しなさいって言ってんの!!」


 胸ぐらを掴み、その瞳には只ひたすらに怒りの感情を灯していた。


「……今は言えない」


「何でよ!! あんた……言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ!!」


「言えないと言ってるだろッ!!」




 あわわわ……

 あかんて、あきまへんて!

 一触即発なんてモンじゃあない。

 殺気に満ち溢れる現場で、カナミは両手を忙しなく振り乱し、狼狽えに狼狽えまくった。




 時は少し遡る。


 『偉大なる魔術師バレンシア』から赦しを得たヒナ達はその場に居た他の面々からも暖かく迎え入れられた後。

 レインシェスカと大浴場にて湯船に浸かり、女性4人だけで和気あいあいと語り合っていた。


 ちなみに、バレンシアは、過酷な事務作業に追われているらしく参加出来なかったのだが。


 彼女は近隣の農村から王国の雑務に到るまで、忙しさは終わりを知らない。

 様々な権限や地位、資格を持つ彼女に休みなどなど皆無であった。

 一個人として異世界に於ける、極めて不条理なブラック企業なのである。


 なので、そんな彼女には申し訳無かったのだが、レインシェスカとヒナ達3人は一緒に大浴場へと迎い、文字通り『裸の付き合い』をしていたのだ。




「そういえば~レインさんって……気になるヒトとか居ないんですか~」


 何気無く発されたカナミの一言。

 女子会にての興味深い台詞にヒナも追い討ちを掛けるように言った。


「そうそう! 例えば……あの暑ッ苦しいヒト。ジャニアースさんとか?」


「うえぇぇぇ……無いよ、無い無い! 何であんなヤツに……」


 ブンブンと手を激しく振り、断固拒否を顕す彼女レインシェスカ。

 そんな彼女を見て少しばかり苛立ちを覚える約1名の女子高生。


「まぁ恩はあるよ、確かに。何せ、誰からも見棄てられたアタシに声をかけて……仲間として受け入れてくれたのはアイツだからね……」


 少し遠い目を、当時を懐かしむ彼女に羨望が募る。

 彼女よりも前に彼と出逢っていたらと。

 そう。トールはどうやら話題に上がった男性『灼熱』のジャニアースに恋心を抱いているらしいのだ。


 思えば、固有技能を覚醒させる為の最初の熱い抱擁。

 見も心も焦がされたあの焔に、勘違いを植え付けられたのかもしれない。

 だが、トールにはその時感じた『灼熱』を、いや初めて芽生えた想いを、どうしても忘れる事も出来ず、やがてそれはどんどん膨れ上がっていった。


 あんなに激しく心を揺さぶられた事は無かった。

 たった1度彼に抱き締められただけで熱量を感じただけで、トールは初めての恋心を。『初恋』をしてしまっているのだ。


 そして、先程のレインシェスカの発言。

 それは更にトールを焚き付けた。


「……師匠は凄いひとだ。きっと……レインさんは気付いていない。あの人の情熱に……」


 誰にも気付かれないように呟いた筈だったが、要らん事に気付き突っ込みを入れてしまうカナミ。


「なに、な~に……? トールってば気になってんの~?」


「ば……ッ!! そんな事無いッ!! アタシはあんな男……丸っきり眼中に無いッ!!」


 勢いよく湯船から立ち上がり彼女はカナミを睨み付けた。

 真っ赤に染まる頬は風呂でのぼせたせいではないだろう。


「いや、でもね。ああ見えてジャンてば結構モテるんだよ。女にも……男にも」


 レインシェスカは以前に彼が女性に告白されたのを見たことがあった。

 ちょっとドキドキしながら、その様子を眺めていたら。なんと、彼はその告白をさらりと断ったのだ。


「その時、確か……『好きなヒトがいる』とか言ってたかな? あんなヤツでも恋とかするんだなぁって少し見直したモンだよ」


 その意中のヒトが他の誰でもない…自分である事に全く気づく様子はない。

 トールはそんな彼女に対して、己に対して殊更に腹をたてる。


「……さきに上がらせてもらう……」


 火照った身体を、苛立ちを醒まそうとしたのか。トールは浴場を後にする。


「……何か……トールくん少し変じゃあなかった?」


「え、そうですか? いつも通りだと思うけど…?」


 この人達は何故にこんなにも鈍いのだろうか。恋愛経験が無い自分でも気付いているのに……。

 カナミは深く溜め息を漏らし、脱衣室で壁に寄りかかっているトールを遠目に眺めていた。


 そして、皆それぞれが入浴を済まし、準備された豪華な食事に舌鼓を打ち、一服がてらに部屋に戻った後、その事件は起こったのだった。



「あんた……何かアタシ達に隠してるでしょ? それを吐き出せってんの!!」


「くどい!! ヒナには関係ない!!」


「ちょ、ちょっと止めなよふたりとも~。お、お、落ち着いて、ね?」


 慌てふためくカナミは勇気を振り絞って言い争うふたりの間へとその身を滑らせた。

 「ふん!」と気概を顕し、トールは激しく扉を開けて部屋を出て行く。

 ガン!バン!メキッ!て言った。扉に罪はない。解せぬ。



「全く……何なのよアイツ!!」


「ヒナちゃんも……ちょっと落ち着いて、さ。ゆっくりじっくり話そうよ~。そしたら、多分トールも話してくれるよ~」


「でもね? アイツったら……。食事の最中も全ッ然会話に入らないし、ずっと黙ったままだったんだよ!? あんなの無いよ! 最後の方なんて『ごちそうさま』の一言すら無かったんだよ!? 楽しい雰囲気ぶち壊しじゃん!!」



 そう、先程の会食中、トールは一切黙りこくっていた。



 ジャニアースが豪快に笑い、そんな彼の口から飛んできた食べ物の欠片がレインシェスカの顔に跳ねる。

 鉄拳制裁を喰らう彼を見ては、やはりこいつは子供だ、とヒナは説教をし始める。

 パッカードは食事を少なめに済ませ、彼等の漫才を肴にしつつ早々に酒を呑んでいた。

 そんな彼に付き合うように、いや会食時から酒を呑んでいたガガザーザは屋敷の執事と昔話に花を咲かせている。

 カナミはそんな彼らを見ながら楽しそうに美味しそうに片っ端から口に放り込んでいた。

 屋敷の主人バレンシアは黙って食事を楽しんでいたが、話を振られれば、冷静ではあるが、何処と無く、楽しそうに微笑んでいるようだ。

 そんな団欒の最中、トールは一切言葉を発する事なく僅かばかりの食事を済ませ、早々にその場を去っていったのだ。



「何かあるんだよ……きっと……」


 カナミは気付いていた。だが、こればかりはトール本人から皆に、ヒナに告白して欲しい。

 そうじゃないときっとこの先、蟠りが残り、行く行くはもう二度と会えないような気がする。



「だからヒナちゃん。もう少しだけでも良いから。待ってあげて……」


「……カナミがそう言うんなら……ん、分かった。でも、アタシ達は3人揃って帰るんだから、ね」


 幼馴染みの3人組。

 いつも一緒にいるのは当たり前なのだヒナにとっては。

 そして、困った時は助け合おうと決めたのに……


 一時期凹んでいたカナミに「迷惑をかけろ」とまで力強く勇気づけてくれた熱い女の子。

 トールに、だってアタシ達に迷惑をかけろ!と言ってやりたかった。

 でも、正直、ヒナはあんな彼女を見たくなかった。


 まるで自分達を守り愛してくれる強く逞しい……本当の兄貴のように思っていたから。




 自分は何をやっているんだ、と枕に深く顔を押し付けて誰にも聞こえないようにヒナは号泣したのであった。


後悔はしています(爆)


次回は公約通りに来週頭辺りに。

逃げませんから!!


多分。


(´゜з゜)~♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ