いきなりボス登場。JK達、雪辱を誓う。その14。
よしゃ!貯まってきた貯まってきたぁ……ホントは来週に更新予定でしたが更に1本あげときま~す。
「ふぅ。やっと着いたね~」
「ん。そうだな……」
「……ちゃんと謝らないと、なぁ……」
女子高生3人は冒険者グループ『紅の蜃気楼』との激しくも厳しい訓練を終え、更に、彼等に送迎された上で『偉大なる魔術師バレンシア』の屋敷へと帰還を果たした。
かの魔術師の屋敷は…3人が訓練に励んでいた『ライカル』の街からそう遠くはなく、馬を走らせれば途中休憩を挟んでも3日程で着くらしい。
道中、モンスターの遭遇もあった。
だが、その全てが低レベルであり付き添いの連中ならば、僅か数秒で片付ける事が出来るのだから気楽なものであり。
たまに彼女達3人が相手をしても全く苦戦する事はなかったのだ。
そんな訳で、特に苦労をするでもなく一同はバレンシアの屋敷へと帰還したのだった。
豪邸とは云えないまでも。
周りを豊かな自然に恵まれた郊外の、それなりに立派な屋敷の一室にて。
「御苦労様でした。皆さん。部屋を紹介いたしますので、此方へどうぞ……」
黒を基調とした上着とズボン。
中に着ている白いワイシャツとネクタイがよく合っている。
「あ、御無沙汰しています。ランドリーさん!」
ヒナは白髪の男性に声をかけた。
『執事』ランドリーはにこやかに応える。
「ヒナ様もトール様もカナミ様も、御無事で何よりです。そして『紅の蜃気楼』の皆様、感謝を……」
「ッか~ッ! 止めてくれよじっちゃん!」
「パッカード。相変わらず元気そうですな……。皆様にご迷惑をお掛けしてはいないでしょうな?」
「ははは……。まぁ、今のところは大丈夫……かな?」
「おう! マブダチだかンな! こいつがいねぇと全ッ然楽しかねぇよ! な!!」
「やつはよくやってくれとるよ、ランドリー。おぬしも元気そうで何よりじゃ」
会話を察するに、どうやら彼等はその屋敷の執事と顔見知りらしい。
特に狩人パッカードは彼に全く似ていないのに「じっちゃん」と呼んでいた。
多分、昔から家族のように接していたのかもしれない。
ドワーフの神官ガガザーザも同じくして、その執事と握手を交わしている所をみるに、随分古くからの付き合いがあるのではないだろうか。
「では、皆様。此方へどうぞ」
『偉大なる魔術師バレンシア』の屋敷に集った面々は執事ランドリーによって一先ずの休息をと案内された。
ちなみに、剣士ソードが率いる『黒の外套』とは「別件がある」との事で途中で別れたらしい。
「浴場の準備が整っております。どうぞ、御自由に御使いください」
それぞれに部屋を割り当てた彼は皆にそう告げ、食事などの準備へと取り掛かるらしく大広間を後にした。
「ッし。風呂だ風呂だッとぉ……」
「だな! ここの風呂ァ結構でけぇかンな!!」
「うむ。久々の大浴場じゃしのう。堪能するとするかい」
「全くもう。男連中ったら……でもアタシも入ろうかな! ヒナちゃん達もどう?」
と、そんな団欒を余所に屋敷の主人は静かに顔を見せた。
空気は一瞬で一変する。
「皆様、御苦労様でした。先ずは感謝を……」
……執事というのは屋敷の主に似るのだろうか。
同じような態度を振る舞う美女がその頭を垂れる。
大空の蒼を現す如く美しい長髪。
その体躯は、さほど目立ったところはないものの。
全身から溢れる美貌は彼女を包み込んでいた。
だが、どこか……以前に会った時より痩せている気がする。
「あ、バレンシアさん。今回は……すみませんでした!!」
ヒナは彼女の顔を見るなり床に正座して彼女よりも深く深く謝罪の意を示した。
トールとカナミも同じくして深く謝罪する。
「依頼を失敗したのに……その上、訓練したいからって……報告まで他人任せだったし……」
これぐらいの謝罪で済まさないでほしいと、何なら重い罰を与えてくれんと云わんばかりに、彼女ヒナはその額を床に叩き付けた。
「いや、俺ッち言ったじゃん?報告は任せとけって。それに……」
「私は仕方がなかったと伝えた筈ですよ。あの『魔王の系譜』……。その中でも『暴虐』に出会って生きて帰ってこれたのは不幸中の幸いですよ」
あの特訓が始まる前に狩人パッカードは既にバレンシアに報告を済ませ、後日、ヒナ達の元へ折り返しの手紙は渡された。
確かに、その内容には気にしないようにと書かれていたのだが。
「いえ! 勝手気儘過ぎたのは……調子にのっていたのは確かです! どうか罰を与えてください!!」
そんなヒナ達を見て、バレンシアは兎も角その他の面子は顔をしかめている。
スッと彼女はヒナの頭に手を差し伸べた。
「では、罰を与えましょう。元の世界に帰りたくなったのなら、直ぐに言ってください」
……意味がわからない。
「逃げたくなったのなら。もう辞めたいと思ったのなら言ってください。直ぐにでも還してあげましょう」
……分かった。叱られているのだ。
でも、怒られている感じが全くしない。
これは……凄く……心の中に響く。
「でも、あなた達はそうではない。だからこそ私はあなた達をこの世界へ喚んだのです」
「……買い被りですよ。アタシ達なんてちっぽけで、何の役にも立たない……口ばっかり、態度ばっかり達者で……」
流す涙で床を濡らし、ヒナは身体を震わせる。
そんな彼女をバレンシアは優しく抱き締めた。
「大丈夫ですよヒナ。あなたなら、あなた達ならやり遂げます。何せ私が選んだのですから……」
バレンシアはヒナ達3人を優しく包み込んだ。
「こんな……アタシ達で……良いんで……すか」
「あなた達じゃあないと困るのです」
こんな彼女は始めてみた。
こんなに優しい笑顔をする彼女なんて見たことがない。
表情を、感情を表に出す事など見たことがない。
「あ……ありがとうございます……」
そんな心暖まる光景を見て。
「こっちにもそのちょっとでも優しくして欲しいモンだが、なァ」
と漏らしたパッカードの呟きに一同は頷き合うのであったが。
一応、初めから設定にあったバレンシア家の執事さん……まるっと忘れていました(涙)
ですので、ニューキャラとして出してしまいましたが……
御容赦くださいませ……
( ノ;_ _)ノ
次回こそは来週頭辺りで更新予定ッ!!
……本音、もっとストックをためたいので(笑)




