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ドラゴンNO涙  作者: caem
第2章・完全敗北、そして立ち上がる。
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いきなりボス登場。JK達、雪辱を誓う。その13。

短いですが…1本イッきま~す。

 ヒナとトールの訓練が激しさを増し観客一同が熱狂していった?その頃……。


 少し離れた拓けた場所では、分厚い本を片手にした教師と、熱心に話を聞いている生徒による青空授業が行われていた。

 雰囲気は一転、和やかに時は流れていたのである。



「ふむふむ。どうやら理論は理解出来たようじゃな。では、ぼちぼち……実践といこうかの」


 ドワーフの神官ガガザーザはカナミに回復魔法や防御魔法といった『聖なる魔術』を伝授させようとしていたのだ。




「よいかの? 先程の『灼熱』を受けた感じを思い出すのじゃ。多分、おぬしにも魔力として熱さは伝播されておる。あの感触をようく思い出すのじゃぞ」


 怒る事など決して無いのではないだろうか。

 優しく淡々と語りかける彼に対して、カナミはいちいち頷く。

 そんな彼女の背後に立ち、彼の大きな掌がそっと触れられた。


「じっくり……じっくり……。ワシの掌の熱さを感じるのじゃ。そして、あの時感じた熱さに近付けてゆく……」


 じんわり、と優しい温度がカナミの中に伝わってゆくと同時に…涙がその瞳に滲み出た。






 現代世界での実家でも、カナミはいわゆる『お爺ちゃん子』であった。

 だが、数年前に祖父は他界してしまい…それがネットにハマった原因でもあったのだ。

 祖父が亡くなってから数日間、自室に閉じ籠り、泣き崩れる毎日を送った。

 更には、共働きの両親との疎遠化が進む一方で、彼女はあの暖かく優しかった日々を忘れようとしていたのかもしれない。


 神官ガガザーザは、そんなお爺ちゃんの雰囲気を色濃く醸し出していたので、カナミは亡くなった祖父が戻ってきたような気がして、嬉しくてしょうがなかったのだ。




「あ……。何か……。あったかくなってきた…よ…」


「よしよし、その調子じゃ。ゆうっくり……ゆっくりと……。それを高めてゆくのじゃ……」


 その暖かさが増すほどに、止めどなく、涙が込み上げてくる。

 そして、嗚咽が漏れそうになるのを必死に堪えてカナミは集中する。


「うむ。では、両の掌を前に出して……。『誰かを守りたい』『誰かを癒したい』と願ってみようか、の」




 私は……大好きだったお爺ちゃんを助けてやれなかった。

 お医者さんは言っていた。「御愁傷様です」と。


 何が! アンタ達は治す事が仕事だろうが!

 人の命を救う事が仕事だろうが!と。

 寿命だ運命だと言うけど……そんなの関係ない!

 大好きだったお爺ちゃんを返せ!と……。


 それでも普段は、口にも出さず表情にも出さず、祖父が亡くなってからも、ヒナ達との付き合いにも心の内は隠して普通に接してきたつもりだった。


 だが、ある時。暗闇の近づく道すがら、何てことの無い下校中にヒナは言った。


「カナミ。アンタ……無理しなくて良いんだよ? 泣きたい時は思いっきり泣いて……言いたい事は、叫びたい時は思いっきり叫びな? ね?」


 その言葉を……頭を、髪を、優しく撫でてくれた誰よりも暖かい手を、忘れることは決して無いだろう。

 合流した部活帰りのトールも、口数短いが励ましてくれた。


「遠慮する必要なんて無い。アタシ達に迷惑をかけろ」


…………


 涙が止めどなく溢れる。

 彼女は帰宅途中の学生達や社会人といった他人の目など気にする事なく、周りに一切遠慮する事なく心の奥底から号泣した。


 ヒナとトールはそんな彼女の魂の慟哭を、全てを優しく受け入れてくれた。

 幼馴染み。そんな言葉でまとめたくない。

 彼女にとってふたりは、かつての祖父と等しく、大切で、どうしようもなく大好きな存在なのだ。


 唯一の問題は……結局……

 カナミ自身がネットゲームや漫画・アニメなどにハマってしまった事ぐらいか。

 まぁ、それはさておき。


 彼女はヒナとトールのふたりや出会った人達を。

 かけがいのない、愛すべき人達を。

 助けたい、守りたい、癒したいと心から願っていた。


「そうそう、その調子じゃ。お前さんは……いや。カナミの手は暖かいのう。癒しに満ちておるわい」




 我慢できなくなった。

 涙がどんどん溢れだしてくる。

 それでも、魔力の流れを制御し暴走させる事の無いように消失しないようにと、必死に集中しては魔法を形成させようとする。


「うむ、よく頑張ったの。あとは……今まで学んだ詠唱を口にするだけじゃ。ようく、落ち着いて……の?」



 その時。

 一際優しく、哀しくも暖かな、癒しの力は産声をあげ

 たくさんのシャボン玉が辺りに一斉に舞い上がった。




「ン? なンだこれ……」




「あ……なんだろ。あったかいねぇ……」




「……ぐすん……悲しいねぇ……でも……ぽかぽかするよ」




 そのシャボン玉に触れた者達は……

 河川敷を通りすがる行商人や家族、または、馬車を引いていた馬や、羽を休めていた小鳥達でさえも、皆が涙を流しながらも嬉しそうに笑っていた。

 訓練に励んでいたヒナやトールは勿論、あの『灼熱』のジャニアースでさえも泣いていたのだ。




「うむうむ。よくやったの、カナミや」




 お爺ちゃんは愛しの孫の頭を撫でるように。


 まるで、本当の家族のように、優しく、何度も、何度も…………。



多分?今週の更新はラストかな?

いや、ノッてきてストックが貯まればあげますが(笑)


一応、次回は来週の予定ですッ

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