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ドラゴンNO涙  作者: caem
第2章・完全敗北、そして立ち上がる。
23/96

いきなりボス登場。JK達、雪辱を誓う。その11。

ふぅ……とりあえず、1本イッときます!

しつこい場面(描写)が続きますが、御容赦くださいませ…

 蒼空高く、季節を告げる野鳥が鳴き声を響かせている。




 または、装いを新たにした昆虫達が、もう一度場面を仕切り直すようにと。

 細やかなる羽音を羽ばたかせ、いざ、これから始まるであろう激戦の余波から回避すべく。

 そそくさと、集団で河川敷から待避していった。


 芽吹く風の暖かさは…さりげなく、相対するふたりの激闘の開始の合図を導き、観客は息を飲んだ。




「師匠。お手合わせを!」


「おう!! どッからでも……かかってこいやァ!!」




 目の前にいる巨漢を師匠と呼び、彼女は焔をその身に纏った。


 全身を燃え盛る焔で包み込んだ彼女は手にした長剣を振り上げ突進する。

 対する漢も一息でその身に焔を纏い、愉しそうに笑みを浮かべた。


 上半身裸で尚且つ、武器を持たずに素手で彼女を迎え撃つ。


 本来、漢は戦斧と槍を組み合わせたような武器・ポールウェポンを使いこなすのだが、彼女との実力差を鑑みてなのか、素手で十分らしい。


 事実、彼女の剣捌きを寸前で見切り、時には素手で剣を受け流していた。



「どしたァ!! 遠慮なんざァすンじゃあねぇ!! どッからでもきやがれッ!!」


 彼女の冴え渡る攻撃の全てに対応し、いつの間にか、戦況は漢のペースに成ってゆく。

 だが、そんな状況でも彼女は怯まない。


「うおおおッ!!」


 覇気を撒き散らし彼女は、トールは漢に突き進んだ。


「甘えッ!!」


 一瞬の隙をつき、漢は彼女の体躯に激しい拳撃を見舞う。

 装備されていた頑丈な鎧は僅かに凹み、鈍い音を響かせて

 彼女は大きく宙に舞い、やがて大地を跳ね回る。

 無理矢理体勢を整えるように足掻き、なんとか片膝をついては息を切らした。


「ナンだァ? その程度かァ!?」


………………


「ま…だ……まだまだぁ!! ……うおおおおおッ!!!!」


 たった今、鎮火した筈なのに再び…いや。

 今まで以上にその身に宿る焔は喧しい程に燃え盛る。


「良いね良いねェ!! さぁ!! もっともっとぉ……かかってこいやァ!!」



 響きが気に入ったのだろうか。

 「かかってこいや」を連呼する暑苦しい漢。


 師匠と呼ばれた『灼熱』のジャニアースと、同じくして『灼熱』の固有技能が覚醒された女子高生トールの激しいバトル。

 その訓練を眺めて、心底感心したレインシェスカは呟く。




「いや~トールくんは凄いねぇ……。まさかあんなにも使いこなせるなんて……」


「多分……。何度も何度も熱く抱き締めあっていたからじゃあないかな?」


 レインシェスカの呟きに対して鋭い洞察力を魅せる剣士ソード。

 だが、何処と無くいやらしい響きは否めない。


 彼が言うには、ただ『覚醒』しただけでは獲得出来たばかりの固有技能は発動する事すら困難らしい。

 だが、トールは一回で満足する事なく、3ラウンドもジャニアースと激しく熱い抱擁に挑んだのだから。




「でも……彼女達は違ったようだね。多分『伝播』はしていると思うけど……」




 ドワーフの神官・ガガザーザの回復魔法により癒しの恩恵に携わるヒナとカナミ。

 横たわる彼女達ふたりはまだ、漢との熱い抱擁の影響下から逃れられていないようだ。


「全く……ジャンは遠慮を知らんからのう。施す此方の身にもなって欲しいモンじゃわい」


 普段なら一瞬にして傷付いた被害者を癒す事が出来るのだが、どうやら今回は、『灼熱』の威力が強すぎたらしい。

 ガガザーザの魔法を以てしても、ヒナ達の傷。犯されてしまった心の傷は中々に癒せないのであろうか。


「そもそも、彼女達は運が良かった方だね。何せジャンは唯一『適性検査』が出来て尚且つ固有技能をも目覚めさせる事が出来るからね」


「問題は……あんなに情熱的で過激で野蛮な方法でしか其れが出来ないという事ですわ。全く……穢らわしいですわぁ……」


 どの口がそんな事を言っているのだろうか。

 日中場所問わずして男を喰らう魔性の女シアンナを見て正直驚きを隠せない面々。




「お。そろそろ……。決着がつきそうだなァ……」


 ジャニアースとトールの目まぐるしく激しい訓練を見ていたパッカードが呟く。

 狩人である彼は戦況を見抜く力に秀でているのだ。


 一瞬の隙をつき漢は相手の背後をとった。

 漢の異常に逞しい両腕が彼女の引き締まった腰をきつく抱き締める。

 そして、高角度原爆固めの体勢へと入った。

 いわゆる、ジャーマンスープレックスである。


「しま……ッ!?」


「ぬおりゃあああああッ!!!!」


 大地が激しく揺れ、意識は一瞬にして刈り取られた。

 と、思ったのだが……

 トールの後頭部が大地に叩き付けられる瞬間、ぴたりとその大技は止められた。




「ま、こんなところだァな」


 トールを抱き締め反り返った状態からゆっくりと上半身を起こしていく。

 漢の驚異的な全身のバネや下半身の強靭さを垣間見た彼女は呟いた。


「参り……ました……」


 抱き締めた彼女を優しく大地に立たせてあげるジャニアース。

 頬を伝う涙を優しく指で拭い彼女の髪の毛をワシワシと乱暴に撫でた。


「十分! ッてぇか……俺様相手にあンだけ出来りゃあ上等よ!」


 カッカッカ! と豪快に笑い飛ばす彼を見つめるトール。

 その瞳の奥底には尊敬とはまた違う別のモノが灯火を照らし、胸の中が熱くなってゆく。

 そんな初めての感情に戸惑いつつも無言で深々と頭を垂れ感謝の意を示した。


「ま、何度でも付き合ってやっから。気にすんない!!」



 次の瞬間、彼は一瞬にしてその場を後にした。


 美味しそうな匂いが漂う。

 実は、ヒナ達の訓練。もといトールとジャニアースの特訓の最中、手が空いてしまっていたレインシェスカが昼食の準備に取り掛かっていたのだ。

 とは言っても手の込んだ料理ではない。

 熱を通した鉄製の敷き台の上に、調味料を掛けた肉や野菜を並べている。




「ん……すんすん。この匂い……バーベキューだ~♪」


 食べ物の匂いで飛び起きる女子高生カナミ。

 ヒナもゆっくりと目を覚まし、お腹が可愛く鳴いている。




「さ、みんな。一旦お昼にして休もう!」


 一目散に肉に飛び付き既に口に運んでいるジャニアースがレインシェスカに叩かれている。

 いつもこんな感じなんだろうな、と思ったトールの心に僅かな嫉妬感が生まれたのは誰にも気付かれないでいた。


12話単位で章を仕切る予定でしたが…少し延長するかもです。

(^_^;)

次回の更新は、今週末までには行う予定で~す。

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