いきなりボス登場。JK達、雪辱を誓う。その8。
舞台はちょいと変わります。
うぅ……盆参り(オヤジの3回忌)から帰る道中から気持ち悪い……ストックから1本、あげておきます~……
それは豊かな森と渓谷に囲まれていた。
多種多様な人種が行き交い、馬車が所狭しと駆けずり回る街並み。
大きく幅広い通りが真っ直ぐに延びていく。
その大通りを少し逸れれば、飲食店が軒並みを連ねる。
様々な露店が建ち並び、買い食いをする冒険者や旅人達が舌鼓を打っていた。
その他にも、朝から呑める酒場や宿屋、質の良い物を取り扱う武器屋や道具屋等々……
商業が盛んに行われており、有りとあらゆる商売人達が群雄割拠しているようだ。
そんな賑わいを見せる城下町を従え、一際高い中心部に聳え立つ巨大な城。
広大且つ肥沃な土地を開拓し、繁栄を極めんとする王国。
異世界大陸ファンタジスタの唯一の王国『シェラザール』。
場面は、その王城の一室で集う面子による会議室へと移り変わる。
「ふむ……まさか、『紅の蜃気楼』と異分子どもが混ざり合うとは、のう……」
長く延びた顎髭をなぞらう年老いた男。
絢爛豪華な椅子にて、あからさまに相対している全てを見下している。
毎日その椅子で暮らしていようなものなので、『痔』も覚悟の上であろう。
だが、何処からともなく周囲に振り撒く威圧感がその地位を語っていた。
「陛下! 今が機です! あの『天災』どもを取り除くのです!」
「そうです! あのような……迷惑極まりない奴等を生かしておいてはいずれ我が国にも被害が及びますぞ!」
「あの偉そうにでしゃばる魔女然り。奴等にこれ以上好き勝手をさせてはいけませぬ!」
国王シェラザール=ルスカ。
彼の元では国の重鎮達が集まり過激な意見を述べていた。
「しかし、のう……。彼等に世話になっとる部分も大きい。迂闊に掌を返せばその被害は甚大じゃぞ」
そうなのだ。
実際、この国の発展の際には幾度か彼等によって助けられていたのだ。
特に魔獣や悪魔といった外部からの脅威に対抗できる存在『冒険者』は貴重だ。
しかも『紅の蜃気楼』ともなれば他の冒険者とは格が違う。
『天災』と呼ばれ、誰もが畏れ戦く『灼熱のジャニアース』などは規格外である。
数日前、彼によってとある大草原が焼け野原になってしまったのがこの会議の発端なのだ。
「恐れながら、陛下。私に任せては頂けませぬか」
「……ディスク卿か。申してみよ」
片眼に黒い眼帯を付け、その頬には大きな傷跡を見せるオールバックの中年男性。
数々の戦歴を重ね、今では陸軍総都督にまで成り上がった元平民の剣士が前に出た。
「は。我が長男ソードに彼等の調査、ならびに粛清の任を与えて頂けませぬか」
「ほう。そなたの息子の……確か『黒の外套』じゃったかな。確かに今の冒険者の中では一番可能性がある。じゃが……」
「大丈夫ですわ。彼ならば……必ずや陛下の御期待に応えてくれましょう」
そう支持したのは、この場に似つかわしくない程の眩しい魅力を解き放つ美女。
彼女はディスク卿の逞しい腕に組み付こうとするが彼はするりと身を交わす。
「相変わらずイケズですわね。女性に恥をかかせるなんていけませんコトよ?」
「……何処からともなく現れて誰彼問わず喰らう貴様に恥をかかすのは当然の事だ」
初めからこの会議に参加していなかったその美女は僅かに顔をしかめる。
だが、次の瞬間には国王の隣に現れ、彼の膝元に頭を乗せていた。
「愛いヤツじゃのう。シアンナや。お主が言うのであれば間違いないであろうのう」
その表情には最早国王としての威厳など一切感じられなかった。
彼女の艶やかな黒髪を撫で、ついでに、たわわに実る膨らみを摘まもうとする。
「もう、陛下ったら。この様な神聖な会議ではダメですよ」
次の瞬間には再びディスク卿の傍らで彼の腕を組もうとするシアンナ。
だが、やはり身を交わされてしまい不機嫌な表情を浮かべる。
「ワタクシも彼等に同行致しますので……大事はないかと存じ上げますわ、陛下」
うむうむ。と頷く国王だが、その場にいる重鎮達も彼女に対して同意の意を示している。
約1名のディスク卿を除いて。
「では。早速取り掛かります故、此にて」
そう言うと彼は会議室を後にしたのであった。
………………………
「いずれ……貴様も処分してくれよう」
その呟きは、彼以外の誰の耳にも届いていない。
そう、彼はこの国の腐った果実を修正する為に、その生涯を費やすと決めていたのであった。
………………………
「おや、これは父上様。此のような場所へなどと来られようとは……。如何なさったのでしょうか?」
喧騒豊かな昼飯時、旅人や冒険者達が美味しい料理に舌鼓を打っている。
中には、早くも酒の勢いに酔ったのか喧嘩をおっ始める連中もいたのだが。
そんな酒場の角でふたりは向かい合い、酒を酌み交わしていた。
「うむ。ソード。お前に頼みたい事がある……というか。勅命に近いが、な」
そう言うと彼はグラスに入った酒を一気に飲み干す。
と同時に、空いたグラスに並々と酒を次いでいく息子。
「うむ。すまんな。実は……お前も知っているだろう『紅の蜃気楼』を」
「ええ、そりゃあ勿論。あの『灼熱』を知らない冒険者などいませんよ」
「うむ。少々言いづらいのだが……お前に彼の身辺調査を依頼したいのだ」
「……それは、また……難易度の高い依頼ですねぇ……」
正直困る! と言いたげな息子はどうせ断れもしないだろうと分かっているらしく深い溜め息を落とした。
そんな息子に父親は陳謝の意を示さない訳でもないが痛く同情はしているようだ。
「多分、あの件でしょうね、相変わらず……。全く以て、派手にやらかしてくれますよ、彼は……」
遠い目で現実逃避に務めているようだが、何処か懐かしそうな表情を浮かべている。
「元同僚のお前には心苦しいと思うが、すまんな。ただし、始末しろという訳ではない。あくまでも『身辺調査』だ」
何故か要らない事を聞きたくない事をいちいちぶっ混んでくる父親。
「始末しろ」だなんて到底出来っこない。
出来っこないをやらなくちゃ、なんて……。いや? 殺れない事もないか。
「まぁ……行ってきますよ。でも、他の面子がどう言うか……」
「其れについては問題ない。いや、問題はあるのだが……」
誰にも見つからないように、父親は息子に目で合図を配る。
スッと何かを手渡された息子はとてつもなく嫌な予感がした。
2杯目の酒を空にして、父親は席を立った。
「後は頼んだぞ、ソード」
酔った素振りもなく、そそくさと酒場を後にする。
「…………うわぁ…………これまたハードだなぁ…………」
その何かを確認した彼は心底嫌そうな表情を浮かべ机に突っ伏したのであった。
次回は……体調がマシになっていれば……来週中にはあげます……(;´Д`)ハァハァ




