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ドラゴンNO涙  作者: caem
第2章・完全敗北、そして立ち上がる。
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いきなりボス登場。JK達、雪辱を誓う。その5。

余裕ができたので一本イッときます♪

 喧しい宴会のあったその次の朝。

 朝食を終えた面々は宿の近くの河川敷に集まっていた。


 司会進行役のレインシェスカが、こほん、と軽く咳をする。


「さて……。知ってるとは思うけど。きちんと自己紹介しよっか」




 昨日の宴会では、ほぼ約1名が暴走しまくりで、尚且つ、酒の臭いがその室内に充満していたせいか。

 ヒナ達はまともに会話が出来ていなかったのだ。


「先ずは……この暑苦しい漢。一応これでもアタシ達『紅の蜃気楼』のリーダーだから」


 と彼女が言うと暑苦しい漢は、ぶおん! と豪快に挙手する。


「おうッ!! ジャニアース=シャイニングッてんだ!! 気軽にジャンて呼んでくれ。ヨロシクゥゥゥッ!!!!」


 河川敷に馬鹿でかい声が響き渡る。

 早朝から漁をしている連中が何事かと此方を観た。

 彼を観た連中は「あぁ、あいつか」と漁を再開する。

 ここ『ライカル』の街ではそれほどまでに普通にみられる光景なのだ。


「基本は剣士やってる。だが格闘も得意だぜェ?」


 怪しい手付きで強さを表現しているのだが、女性陣にはいやらしく見えた。

 すかさずレインシェスカに頭を叩かれる。


「まぁ、こんな奴だけど……強さだけは規格外だから……」


 ため息をつく彼女。

 きっと毎日大変なのだろう。

 ヒナ達も心中察し、激しく同情する。


「次は……パッカー。よろしく」


「おう! ……って、このノリじゃあジャンと同じ括りになっちまうな?」


 進行役の開始宣言を真似て、こほん、と軽く咳をしてみる。

 そして狼の耳をピンと立て、髪を整える。


「俺の名はパッカード=ウルフラド。パッカーで良い。基本、小剣か飛び道具だ」


 彼の背中には特注らしい弓が装備されていた。

 いわゆるクロスボウに近いが、軽量化され、且つ細かい装飾が施されている。


「確か…嬢ちゃん。あーヒナちゃんだったか。弓使ってたよな? もし、分かンねぇとこあったら聞いてくンな」


 格好つけているつもりらしいが、チャラい感じに仕上がってしまうパッカード。


 だが彼は、様々な弓を取り扱う事の出来る優秀な狩人でもある。

 ただし、別の趣味が有名なので、その名を度々貶めてきた。


「パッカー……。余計なことは教えんじゃあないよ? 特に賭け事は、ね!?」


 そう、彼は重度のギャンブラーである。

 実は昨日の宴会の後、街の賭場で有り金全てを失い

 朝早くに質屋に行っていたのを彼女は見ていたのだ。


「ったく……ウチの男どもは……」


「おい、一緒にせんでくれい」


 珍しく、ドワーフに突っ込みを入れられるレインシェスカ。

 そんな彼は朝早くから、いや、今も片手に酒を呑んでいる。


「ワシの名はガガザーザ=ドドゴーダ。ガガで呼ばれておるが、ドドでも良い」


 名前が暑苦しいのはドワーフの常識なのだろうか。


 昨日の宴会で言っていたのをヒナ達は微かに覚えている。

 彼は妻帯者であり、子供がふたり居るらしい。

 里に残った家族の為に出稼ぎにきて、彼等とパーティーを組んだのだ。

 さて、気になるのは家族全員の名前だが……それはまた、別の話にしておく。



「ま、知っとるとは思うがの。ワシの本職は神官じゃ。『治癒』『結界』などが得意じゃな」


「でも、俺の得物を改良してくれたのもガガッちなンだぜ。この弓とか小剣とか……。あ、今手元に無いわ」


 そうなのだ。

 パッカードはガガザーザが見事に装飾を施した小剣を質に入れていたのだ。

 だが、その事を聞いた彼は何故か満面の笑みを浮かべた。


「いや、まさか金貨1枚に換わっちまうたぁな……。戦闘用の小剣なんて銅貨20枚程で買えンのに……」


「うむうむ。ワシの技術も向上したもんじゃわい!」


 何でもこの大陸のドワーフは大概、工芸技術を得意とするらしい。

 戦闘では無く、その工芸を本職にしているドワーフも数多く存在しているのだ。


「さて、たかが訓練じゃが……。可能性によっては死にも繋がる。怪我をしたらちゃんとワシにみせるように、の」


 ガガザーザはヒナ達に優しく暖かく微笑む。


 カナミが彼を敬愛しているのも少し分かる気がする。

 現代に於ける、田舎の優しいお爺ちゃん。

 ヒナとトールは、ふと現代を思い出し、零れ落ちそうになる涙をグッと堪えた。


「さて、最後はアタシ。レインシェスカ=バーナード。レインて呼んでね? 専門は勿論、魔術師よ!」


「勿論てこた無ぇだろ、その図体で……あいたッ!」


 小声で呟いた筈なのに、パッカードはレインシェスカに肘で突かれた。

 お前の突っ込みはジャン専門だろうが、と言いかけたが、更にキツい一撃は喰らいたくないので黙ることにした。


 何せ彼女レインシェスカは身長の高さではメンバーの中で一番でかい。

 ジャニアースでさえ2メートルは超しているのに、彼女はそれの更に上をいく。


「大体アタシは『巨人族』とのハーフだかンね? ってか……見た目で……判断するなっ……て、のよ…………」




 これまた珍しいモノを観た。

 皆の時間が一瞬止まる。


 大粒の涙がどんどん彼女の瞳から零れ落ちてくる……

 レインシェスカが泣いていたのだ。




 在り大抵の事ならば、突っ込みはすれど何もなかったように笑い飛ばす気っ風の良い彼女なのだが。

 実は凄く繊細な心の持ち主だったのだ。

 特に、身体的な見た目での悪口に弱く、直ぐに泣いてしまうのだ。


 自分がどっち付かずの身体だったからかもしれない。

 彼女は普通に巨人族の村で育てられていたのだが、中途半端な身長や体躯を理由に、他の巨人族によく苛められては泣いていた。

 そして成人になり村を出ていってからは、今度は人間達に「デカイ女だな」と言われ、また涙を溢した。


 時には精一杯空元気を振り撒き、弱い自分を誤魔化したりもした。


 此のままではいけないと、変わらなければいけないと。

 何度も何度も立ち上がりやっと克服した…と思い込んでいた。


 この事は『紅の蜃気楼』の面子にも必至に隠し、耐え続けていたのだが…どうやら今回、遂にそれが決壊したらしい。




「あ~……スマンスマン!! 俺が悪かッた!!」


「泣ぁ~かした、泣ぁ~かした♪ パッカーが~泣ぁ~かした♪」


「煽るなジャン、この野郎!! いや、ホント悪かったレイン!! いや、この通り!!」


 河川敷で大女を泣かすおっさんふたり、最低である。

 パッカードがその場で正座をして頭を下げている中、小躍りをして助長するジャニアース。


 そんな情けない大人達を見ていたヒナは突然、正直に腹を立て叫んだ。


「心の底から謝ってない!! あと、ジャン!! アンタ子供か!! アンタも謝んなさいよ!!」


 殺気さえ帯びるヒナの怒声にギョッとした3人。

 平謝りのパッカードと場を煽るジャニアース。

 そして泣いていたレインシェスカでさえも。




 怒ったヒナが一番怖いのはトールとカナミ2人は、ようくその身に沁みている。

 手を出しはしないのだが…延々と続くその説教は精神的にかなりキツい。最早、説法ともいえる。

 とにもかくにも…『曲がった事が大嫌い』な彼女。

 路上でのマナー違反の若者や駆け付けた警察を含め

 大人達数人をその場で正座させたのは巷では有名な話だった。


 まして、彼女が憧れを抱いているレインシェスカを苛めるのを目の当たりにしてしまったのだから。





……………………






 その丸1日が、ヒナによる説教で埋まったのは仕方のない事であった。


 ただし、パッカードはともあれ、ジャニアースに本当に伝わったのかは定かではない。





今週、もう一本ぐらい上げようかと。

ではッ

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