むりやり喚ばれて、冒険者になったJK達。その11。
『私は……間違っていたのか……?』
ゆっくりと、仄暗い水の底に落ち逝く彼女は、自問自答していた。
悪魔・ベルトーグは、現代世界の女子高生3人という、異世界に召喚された冒険者達によって嵌められた罠により、奥深い湖の底へと導かれていたのであった。
何度も何度も彼女は、湖底に沈みゆく、その媒体とした『竜』を引き離そうとした。
だが、『破壊した瓦礫(物体や生命体)を吸収する』という魔力に、その全てを費やしてしまったせいで、その媒体から離脱する事すら出来なかったのだ。
攻撃魔法や補助魔法など僅かな精神力で行使する事の出来る魔法でさえも。
唯一、自分が認めた、絶対なる存在【悪魔・グランヴィア】様…
彼に主従を誓った彼女は、その一切を悔やむ。
いや、彼の御方のせいにはしてはいけない。
やはり、自分の不甲斐なさを悔いるべきなのだ。
自覚するのは大切な事なのだ。
今、必死にそこで足掻き続けている彼女、悪魔・ベルトーグに、『それ』は告げる。
『我は【真竜】の系譜である。たかが一介の悪魔である貴様に、望むべき未来は無い』
何が……誰が、私を裁ける?
そんな疑問を払拭したい。
だが、現状は屈する事を得難い。
今、彼女は…覆る事を赦さない事実に突っ伏しているのだから。
………………
何故に、自分はこんなにも浅はかだったのだろうか。
………………
『魂の泉』と呼ばれる湖の奥底へと沈んで逝く己を慮る。
地上から注がれる、清らかな、その輝きは…まるで己を憎むかのように。
だが、そんな彼女は。悪魔・ベルトーグは、どこか澄んだ気持ちでいた。
唯一、絶対なる存在の【悪魔・グランヴィア】。
彼に仕えて、様々な目標を駆逐・達成するに等しく。
『やりたいようにやる』
それを覆した、あの冒険者達に評した気持ちが無い訳ではなかったのだ。
寧ろ、彼女達に敬意を示したいのかもしれない。
しかし、それでも、足掻く。
沈みゆく、湖の奥底で。
悪魔・ベルトーグの本質が…その魂が叫ぶ。
それは、唯一つの…生命への執着。
『生きたい』と願う万物の証。
「離れろぉぉぉッ!……ワタシの方がお前より上位だろうがぁぁぁ……ッ!!」
水中に於て、喋る事はおろか、息をする事も出来ない。
『悪魔』であろうとも、呼吸はするのだろう。
ベルトーグは構わずに叫び続けた。
取り込んだ『竜』を引き離そうと、何度も足掻く。
痛みなど介さないかのように、己の両手からの夥しい程の流血。
幾度も幾度も、その媒体である竜に殴り、叩きつける。
または、己の身を剄き。
半身が引きちぎれるのも厭わない如く、その華奢な腰の括れ。
何処からともなく現れた魚群や、水辺に巣食う魔物が、彼女の散らばった身体や本体に、その食欲を余す事無く欲する。
流れる血液を飲み、欠片を喰い、追い溢れる精神をも蝕む。
ベルトーグがその総てを還元していく姿そのものは、彼女が今まで行ってきた非道をまざまざと顕しているのであろうか。
それでも、足掻き続ける。
例え、細切れに成ろうとも。
叶わないと分かっていても。
『やりたいようにやる』が施した結果なのだろう。
今やベルトーグは【悪魔・グランヴィア】に抱いた忠信に背いたに近く、互い違いなる存在、慈悲なる【魔術師・バレンシア】にも程遠い。
まるで『こども』が駄々をこねるように。
悪魔の象徴であろう美しき漆黒の角。
地獄の業火のように燃え盛る翼。
そして…異性を誘惑するに相応しい美貌。
その総てを失っていた。
かつて、強さ・我が儘を貫き通していたベルトーグの暴威は。
もう、微塵も無い。
「ワタクシは……。居ては生きてはいけない、の、ね……」
一頻り、駄々をこねた彼女は結果…その行為に無駄を感じ、大自然の事象に抗う事も出来ず、身を委ねる事にしたのだ。
しかし、その真意は違うとばかりに、それは応える。
『貴様は侮った。自分を、相手をその総てを……』
竜は告げる。
彼は、何も、その総てをベルトーグに乗っ取られた訳では無い。
真に見極める事象を、その理由を彼女に一時的に与えたに過ぎない。
果たして、その真意はまた別なのだろうか。
『哀しき定めに産まれたのだな……。我が【魂技】にて、貴様に、総てをやり直す事を誓おう……』
そう、ベルトーグに竜は告げると……。新たなる宇宙の神秘を顕すが如く、さんざめく煌めきを施す【生命】を彼女に与える。
『何処かの世界で……。始めから、やり直すが良い……』
果たして、悪魔に救いは通じたのであろうか。
遠く、それを見つめた彼女は初めて、心の底から涙を流す。
僅かに、微笑んで。
とりあえず…投稿…(;´Д`)ハァハァ
次は…来週かなぁ。




