表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンNO涙  作者: caem
第1章・竜と悪魔と魔術師と
10/96

むりやり喚ばれて、冒険者になったJK達。その10。

 遺跡を後にしても、彼女達は走り続けていた。

 そして、自分達の自転車を見つけ次第、搭乗し、後ろを振り返る。


 問題は……。

 カナミの自転車はこの孤島に辿り着いた際、壊れてしまったので。

 トールの自転車の後方座席にて座っている。

 いわゆる『2ケツ』状態である。


 暫くして一斉に、遺跡周辺の森が騒ぎだし鳥達や野性動物が逃げ惑う。

 そして盛大な破壊音とともに、それは遂に地上に顕現したのだ。



「うわ……。あれ、なんて怪獣?」


 良い得て妙である。

 何せ…竜であった頃の原型が、ほぼ留まられていない。

 遺跡の入り口を破壊したそれは超巨大な岩の蜥蜴を連想させた。

 やがてそれは鈍い動作で周辺の何かを探している。




「ほっほ~い、こっこまでおいで~♪」


 突然、カナミはレディにあるまじき行為をする。

 女子高生がそれをするには…いや、今時、小学生でもしないのではないだろうか。

 他人の自転車の後部座席にての『おしりペンペン』であった。


「ちょッ! アンタ、はしたないッ!」


「いーから、いーから。ほら、ふたりもやって!」


 全く照れもせず、自信満々なカナミ。

 何か作戦でもあるのだろうか。

 とりあえずカナミを信じて。ヒナは、顔を赤らめながらもそれをした。


「へ……へ~い。鬼さん、こちら、手の鳴る方へ~」


 いや、相手は正確には『悪魔』なのだが。

 ヒナは恥ずかしながらも手を叩きながら、慎ましく引き締まったお尻をフリフリしてみた。


 そして次に、トールは至って冷静にそれをやらかす。


「キスマイ……アス!!」


 右手の中指を立てるという行為をする冒険者……もとい女子高生である。

 多分今頃、実家の剣道場に飾られている『質実剛健』がガタンと落ちているかもしれない。



…………ぷちん。




『ガキどもがぁぁぁ…………。舐めやがってぇぇぇぇぇッ!!!!』




 最後の挑発が、その意味を知らないベルトーグであっても怒髪天を衝くに到らしめた。


 その巨躯を大きく激しく揺さぶらせながら、ヒナ達へと進撃を開始する。

 辺りの木々をなぎ倒し、或いは、大地を根こそぎ削りとる。


「きた。きたきたぁぁぁッ! 走って走ってぇぇぇッ!!」


 自転車に乗ったふたりをせっつかせるカナミ。

 何せ彼女はトールの後部座席なのでやる事が無い。

 せめて、御札を新しいものと換えるぐらいだ。


 『魂の泉』と呼ばれる湖のほぼ、中心に位置する浮島。

 浮島自体は其ほど広くは無い。

 恐らく、自転車で浮島の周囲を走っても30分もかからないぐらいであろうか。


 しかも、その島の中心部に遺跡はあったので、脱出するのにそう時間はかからない。

 それでも、自転車に対する悪路はあるので…あとは体力と運転技術次第なのだが。




 後方をチラチラと気にしながら、カナミは一旦自転車を、ヒナ達2人を止めさせる。


「……け……つ……お尻が。痛い……」


 一瞬、『ケツが』と言いかけたが言い直したのは流石にレディだからなのだろうか。

 だが、まぁ。それは、そうであろう。


 ベルトーグを惹き付けながらも撒く為に、右往左往しながら、悪路をお構い無しに駆け巡ってきたのだから。

 しかも、後ろの車輪には『立ち乗り』用の部品が無かったのである。

 無論、運転手達2人は立ち漕ぎだったので、ダメージは無い。


「あいたたた………。うん、やっぱりな~………。多分あいつ、今飛べないんじゃない?」


 そうなのだ。

 『悪魔・ベルトーグ』は彼女達の前に現れた時、確かに『飛行』していた。

 更に、竜に対して『雷撃』の魔法も使っていた。

 だが、今のベルトーグを診るに…『周囲を取り込み巨大化する』という魔法以外に、他の魔法を使用していないのは明らかであった。




「あ~……。何となく分かったよ、カナミのやりたい事」


 ヒナ達も理解したようだ。

 なので、更に…彼女達はベルトーグを挑発する。


「ほ~ら、こっこだよ~! 悔しかったらジャンプでもしてみたら~?」


「おっそいな~? そんなにブクブク肥っちゃって。もうバテちゃった?」


「マザー……ファッ」


 トールの挑発は2人から口を押さえられたので最後まで言えなかった。




『そぉぉぉ……こぉぉぉ……かぁぁぁぁぁッ!!!!』


 浮島に激震が走る。

 その巨躯は大地を踏み締め天に昇るが如く、中空に身を投げた。

 狙いは勿論、ヒナ達である。




 だが、彼女達は今。

 『魂の泉』という『湖』の上にいたのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ