お忍び王子と断罪令嬢
書きたくなったので書きました、ヒロインが悪役してないから悪役令嬢ではないなと思い断罪 (される)令嬢となりました、色々間違ってる気がします
この国の奴らはバカばっかだな。
あぁ、言い方が悪かった。
これじゃあ他の人もバカ呼ばわりだ、バカなのはこの国の未来の王とその側近達・・・余計にダメだ。
別に自分の国の未来を嘆いているわけではない、だって俺この国の人間じゃないし。
俺はこの国・・・『ホーライ王国』の隣の国『ヒューレン』の国に住んでいる、今はわけあってこの国のホーライ学園にいるけど。
で、なんで早々にバカだ何て言ったのかと今の状況について俺は言っている。
状況説明の前にまずこの学園について説明させてほしい。
俺の通うホーライ学園は貴族も平民も通うことができる、これは我が国ヒューレンの能力主義をホーライの国王が参考にして創立したそうだ。
だがそれは他の選民思想の貴族たちには受けがあまり良くなかったらしく平民というだけで差別をする貴族の子息たちが大半で、国王は頭を悩ませているそうで。
中には差別しない貴族たちもいたが、他の貴族たちから白い目で見られ段々数が減って行った。
しかし、どれだけ白い目で見られようが一切態度を変えることがない人物が一人だけいた、それが王子の婚約者でもあったレイチェル・フォレット嬢。
彼女は生徒会にも所属しており非常に優秀で、責務を殆ど一人で行い分け隔てなく接するため平民と貴族(一部のみ)にとても人気があった、しかし婚約者であったゼイン王子はよく思っていなかったようだが。
そして今、学園の卒業式の祝宴パーティで先ほど話したレイチェル嬢とゼイン王子その他が対峙しており、その周りを他の生徒たちが囲み人だかりができている。
そしてこの騒ぎの原因は・・・
「レイチェル!おまえとの婚約を破棄し、私はアニーと結婚する!」
この王子である、正確に言うとアニーと呼ばれた平民の女性が原因のような気もするが。
アニーと呼ばれた女性は去年入ってきた平民の女性で、どういう方法を使ったのか、王子を筆頭に次期宰相、騎士団長の息子などなど有力貴族たちに取り入り、いわゆる逆ハーレムを築いていた。
そして、そんなアニーの虜になった王子がレイチェル嬢との婚約を破棄し、この場でアニー嬢と結婚するとか世迷言を言い始めた。
「本気で言っているのですか?」
「あぁ本気だとも・・・君が裏でアニーを傷つけている、悪魔のような女性だとは思いもしなかったよ」
「・・・?なにをおっしゃてるんですか?」
「この期に及んでまだしらを切るつもりですか?」
と、宰相の息子が呆れた様にため息を吐きながら前に来て割り込んできた。
何を言ってるんだこいつら?レイチェル嬢がアニーを傷つけた?
「あなたがアニー嬢に嫉妬して僕らの気付かないところで怪我を負わせたり彼女の私物を壊したんだろう!?」
「身に覚えがありません」
「おい、嘘を吐くな!」
お、今度は騎士団長の息子が乱入してきた。
大きい体躯を怒りに震わせて脅すように声を荒げる、それに対して特に怯える様子も無く淡々と答える
「嘘を吐いた覚えはないのですが・・・」
「お前がやったと、アニー本人が証言してるんだぞ!」
「・・・それだけですか?」
「あぁ?」
「他に何か証拠は?」
「アニーの証言があると言っているだろう!!」
「・・・わかりました」
向こうに気付かれないようにこっそりため息を吐くレイチェル嬢、これには俺も同じ心情だ。
本人だけの証言とか証拠にならないし、物証もないとかいう・・・次期宰相の方と王子にはぜひ気が付いてほしかった。
と、今度は財政管理の管理長の息子が語り出した
「あなたが壊したアニーさんの私物、総額にしたらいくらになるのとお思いですか?」
「さぁ・・・壊してないのでわからないですね」
「チッ・・・いいですか?あなたが壊したものの中には私たちが彼女に送ったプレゼントもあったんです、とてもあなたの家の全財産を持ってしても足りません、どう落とし前つけるつもりですか?」
舌打ちした後、とんでもないことを言いだした次期管理長。
レイチェル嬢の実家は王子と婚約できる程で身分が高い、その家の全財産を持ってしても足りないってどれだけ高額な物をプレゼントしたんだこいつら・・・。
っていうか、私物が壊されてるなら物証あるだろう・・・なんでさっき言わなかった
「も、もうよろしいのです皆様」
「アニー・・・」
「私は大丈夫ですから、この場はもう終わりにしましょう?」
「アニーは優しいね・・・でも大丈夫、君を困らせた奴をこの場で裁いて見せよう!」
「ゼイン様・・・」
何この茶番?アニー嬢が涙ながらに訴えて私優しいですよアピールをしてそれに見事に嵌ってる王子たちを見せられて茶番以外の何と言えばいいんだ
「見ろレイチェル!君のくだらない嫉妬にもアニーはこんなに優しく対応してくれている。君はそんな彼女に最後はせめて誠実になろうとは思わないのか!?」
「・・・真実を語ることが一番の誠実を現すと思っています」
おー良い事いうな。
「ならお前は誠実さを欠片も持ち合わせてないな」
「そうですね、自ら墓穴を掘るとはバカな女です」
「お前がそう思うなら、早くアニーに謝れ!」
「・・・」
おーこいつら救いようがないな。
流石にそう思い始めたのかレイチェル嬢の顔が少し険しくなっている
「真実を語れというのならば、私は無実ですと言う他ございません」
「まだそんな戯言を・・・!!」
「私はただ一言・・・あやまって・・・くれればそれ・・・で・・・よかったのに・・・」
「あぁ!アニー泣かないで」
「いえ・・・だいじょ・・・ぶです・・・」
「てめぇ!早く謝れ!」
俯いて両手で顔を覆って泣き始めたアニー嬢に動揺する取り巻きたち、良く見るとアニー嬢、本当に泣いてるわけではない、だって涙が流れてないし。
まぁ顔を俯かせてるから周りにいる連中は気づかないか
「・・・もういいレイチェル、今すぐここから出ていけ。そして二度と私たちとアニーの前に姿を現すな!」
「・・・わかりました」
「あぁ、レイチェル嬢。あなたが壊したアニーさんの私物はあなたの家に弁償を請求しますので、あなたは最早ただの平民ですよ」
「・・・」
次期管理長の言葉に何も答えず会場を出ていくレイチェル嬢、周りも今までの出来事にザワついている。
そんな中で俺は、次期管理長様の言葉に心の中で狂喜乱舞している。
レイチェル嬢が平民になった・・・それはつまりこの国に仕える義務がなくなったということ。
俺にとってこれほど嬉しいことはない!だってそれは彼女の自由を意味しているのだから。
俺はすぐレイチェル嬢の後を追いかけて彼女に声をかける。
足も速いのか、結構遠くまで離れた噴水のふちに彼女は座っていた
「レイチェル嬢」
「あなたは確か・・・シュニー・ガーディアン?」
「あ、覚えていてくださいましたか」
「えぇ・・・あなた、平民だって言う割にはしっかり学と品があったから印象に残っていたの」
あー、隠してるつもりだったんだけど・・・やっぱこの人すごいわ。
あれだけのことがあったのに普通・・・ではないな、声に元気がないし少し顔が暗い
「それで、何の用かしら?あなたもさっきのできごとを見ていたのでしょう?」
「えぇまぁ・・・」
「彼女が来てから、彼ら・・・ゼイン達は変わってしまった。優しかった婚約者は冷たくなり、生徒会のみんなは仕事をしなくなった・・・」
「・・・」
「泣きたいのはこっちの方よ・・・喚きたいのは私よ・・・怒りたいのも、叫びたいのも文句言いたいのも・・・みんな私の方よっ!!!!」
人気のない手入れのされた噴水に彼女の心の叫びが響きわたった。
彼女の今まで我慢していた心の叫びに対して、俺は何も言わなかった・・・言えなかったか。
できることは、ただ隣に座って彼女の愚痴を聞くことしかできなかった、そうして言いたいことが言えてスッキリしたのか、落ち着きを取り戻した
「ありがとう、あなたのおかげで大分スッキリした」
「いいえ、どういたしまして」
泣いて真っ赤になった目でこちらに笑いかけてくる姿は心に来るものがある
「あの・・・レイチェル嬢」
「ん?何かしら?」
「こんな時に言うのもなんですが・・・実は俺、いえ私はヒューレンに住んでいるんです」
「あら、そうだったの?」
「えぇしかもただ住んでるのではなく、第二王子という肩書も持ってるんです」
「・・・は?」
「それでこの学園に身分を隠してまで来たのは貴族に邪魔されず、伴侶となる人物をこの目で探し出すためでそれで・・・」
「ちょ、ちょっと待って!」
まくしたてる様に説明しようとするとレイチェル嬢に止められてしまった、説明するのに必死で気付かなかったけど、ひどく動揺しているようだった。
頭を抱えながら、ゆっくり確認するように俺に質問してきた
「え?ん?第二王子?あなたが?」
「えぇそうです」
「でも名前・・・あ」
「はい、シュニーは偽名ですがガーディアンはヒューレンではよくある苗字ですから。本当はレドと言います」
「レド・ガーディアン・・・確かにその名前はヒューレンの第二王子の名前、だけど」
「まだ、信じられません?」
「・・・いいえ、ここで信じなかったら話しが進まないもの。それで?伴侶を探すためだけに身分を隠してまでこの学園に来たの?」
頭を抱えて悩んでいたけど、吹っ切れたのか開き直ったのか一応は俺の言うことを信じてくれた。
さっきに続いてのとんでもないことに頭が追い付いてないのか彼女にしては珍しく混乱している様だった
「いいえ、伴侶は自分で探すんですが本来ならば探すところは自分で決めます。ですが今回、我が国ヒューレンを参考にしたという学園の様子が知りたいと父から願われ、ここで探すことになったのです」
「なるほど・・・それを知っているのはこの学園にいないの?」
「いいえ、私の身に何か起きた時のために理事長と国王には事情を説明していました、生徒の視点からの様子が知れるいい機会だと快く快諾してくださいました」
「そう、まぁ普通そうよね・・・それで?ここまで私に話したのはどうして?私はもう平民よ?」
そう自嘲気味に笑う彼女を見て改めてバカどもに軽く殺意が湧いた、いつか見返してやろう
「私の国は知っての通り実力主義です、そしてあなた平民になったことでこの国に仕える義務は無くなった」
「それはつまり・・・?」
「レイチェル・フォレット嬢、私と結婚して、ヒューレンでその素晴らしい能力を使ってみませんか?」
「・・・喜んで、とは言えないけど。わかりました」
俺の唐突すぎる告白に、最初は面食らったように目を丸くしていたがやがて微笑みに変わっていき返事をしてもらった。
良い返事だったかどうか微妙だけど、イエスと言ってくれただけで俺の中で心が躍った。
最後まで言わなかったけど、俺は彼女に・・・レイチェルに一目惚れだったのかもしれない。
この後、俺たちはそのままレイチェルの実家に向かい事情を説明し、色々あったが納得してもらいフォレット家全員でヒューレンに移動、父に報告して、俺たちは無事に結婚した。
そして数年で俺は宰相、彼女は宰相補佐に任命された、ちなみは国王は兄さんがなった。
そしてその数年後にホーライが財政危機に陥り援助を要請され調停会見でそこで奴らとまた会うが・・・それは別に語る必要はないか
どうでしたかね?私はこういう展開は見たことないんですがもしあったら報告お願いします。
もしかしたらレイチェル嬢の視点も書くかもしれません