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美少年を捕獲してみた













ダンジョン第二階層。


そこは空だった。

第二階層へと続く扉を開けた先、あたしの目の前には空中神殿が浮遊していた。


因みに、この扉もまた空中に浮いている。

扉と空中神殿の間には、当然のように何もない。


どうしろと?


一般の参加者にとっては完全に手詰まりじゃない、これ。あの美少年神には、明らかにダンジョンを攻略させる気が無い。まあ、あたしは飛行系魔法を習得しているし、あやめもいるから問題ないけど。


「フライ!」


久々に使用する、自前の魔法。

随分久しぶりだ。この魔法を覚えたのは、中学校一年の二学期の時の異世界召喚時。あのときは、あたし一人で魔王城に特攻させられて危うく死にかけたんだけど、なんか魔王が良い人で、色々教えて貰った。そのとき教わった魔法の一つがこれだ。



あたしに首根っこを掴まれたまま、空中を運ばれて行くあやめは相変わらず何も言わない。だけど、その背中が雄弁に物語っている。


『どうにかなるよね?別にあたしがいなくても』

、と。


「あやめはまだ子供だから分からないのよ!不幸を分かち合う為に存在するの!姉妹と言うものは!」


そう言って、適当に誤魔化しておく。





空中神殿に近づくと、そこには天使たちがいて、弓を構えている。こちらに向かって。


そいつらは、天使のくせに女型だ。しかも、生意気なことに、巨乳。


ぐぬぬぬぬぬぬぬ。


思わず歯軋りしてしまう。

牛乳女どもめ!

あんなでっかいオッパイをつけて……。あたしの胸が成長期前だからって、馬鹿にして!


「あやめ!殺っちゃって!」


当のあやめは若干呆れた様子だが、コクリと頷くと、腕を振る。


相変わらず、あやめが何をしているのかは分からない。あたしの魔力感知も、危機察知も、いかなる魔法の行使も認識できていない。


しかし、その効果は抜群だ。




空中神殿の一部が粘土細工のようにグニョリと変形すると、100本ほどの剣が出現する。それらの剣が何をするかと言うと、答えは簡単。天使たちをスパスパと切断していく。


「きゃああああああああああああああああああ!!」


「いやああああああああああああああ!!」


「ぎぐぎぎぎ!」


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!」


断末魔の悲鳴を上げながら絶命していく天使たち。


何匹かの天使が、慌てた様子で翼を広げて神殿から逃げ出すが、剣はそれらの天使を追従。羽を切断し、飛行不能状態にしていく。


「そんなあああああああああああああああああああああああ!!」


「たすけてえええええええええええ!」


「きゃあああああああああああああああああああああ!」


絶叫を上げながら、恐怖を顔に張り付けた天使たちが地面へと墜落していく。そうして、地面と熱烈な抱擁を交わした天使たちは赤い花を地面に咲かせて、自分自身の人生の最期を彩っていく。





「ふっ!悪は滅びた!」


これはいつもの決め台詞。

身体を細切れにされたり、空中から転落死したりと、牛乳女にふさわしい最期だ。


流石はあやめである。やる気が無さそうに見えて、実は結構空気の読める子だ。





そんなことを考えながらも飛行を続けていると、あたし達は空中神殿に到着。


あたしは、第二階層のボス部屋を探して、空中神殿を歩き回る。

空中神殿内部にいた天使たちもまた、全身をズタズタに引き裂かれて死んでしまっているので、何の障害も無くドンドン進める。



と、ボス部屋発見!


いつも通りにあやめを前に構えると、ボス部屋へと突進していく。


「どりゃああああああ!」


扉の先、目の前にいるのは、マントを羽織って杖を構えた骸骨が一体。




……

……

なんでよ?

場所が空中神殿で、巡回モンスターが天使なんだから、普通ここは神的なモノをボスに置くべきでしょうに……。

何でスケルトン?


確かに、第一階層のボスがミノさんだったときは意外性を求めはした。だけど、こういうのは意外性を超えて邪道っていうのよ!


あたしは、ここにはいない美少年神へと悪態をつく。








「ふははははははははは。我があやめ(無敵盾)に破れぬものなし!」


勝負は一瞬、第二階層のボスはあっさりと沈んだ。

杖を持っていたことから簡単に予想できた通り、骸骨は魔法職だった。


あやめには、常時発動パッシブスキル『鏡面障壁』がある。その効果は、魔法攻撃・申請攻撃を無効化し、10倍にして返すという凶悪なもの。


このため、あやめ(無敵盾)相手に、魔法攻撃を放ったところで無駄。骸骨は最初の一撃を10倍返しにされ、文字通り一撃死した。








という訳で、次の階層へと続く階段へと進む。








階段を進んだ先の第三階層、そこにいたのはドラゴン。


「ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!」


何やら口から火を吹き出しながら、こちらを威嚇してくる。


えー。

ぶー。ぶー。


確かに、ダンジョンと言えばドラゴンだけど、それじゃあ変化が無いんだって。分かってないなあ。あの美少年。




「ロケットパアアアンチッ!」


あたしは身体強化魔法を使うと、あやめを構えてドラゴンへと全力で投射する。

砲弾のような勢いで飛翔するあやめ。

その速度は、あたしが放射したときの勢いを遥かに超越している。

どうやら、あやめ自身が、自前の推進スキルでも使って加速した模様。


急速に飛来する物体に、ドラゴンは慌てて防御態勢を取ろうとする。


だが、もう遅い。


「グガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


あやめは、勢いそのままにドラゴンに激突。


否。


衝突するだけにとどまらず、ドラゴンの胴体に風穴を開けて、反対側へと突き抜けていく。


「ギュウウウウウウウウウウウウウウウ!!」


絶叫を上げて倒れ伏すドラゴン。

5階建のビル程もあるその巨体は、大穴が開いた部分から砂になっていく。流石に、それほどの巨体ともなると、完全に砂になるのにはそれなりの時間がかかるらしい。


「ギュゥ」


かなり弱った鳴き声を出しながらも中々死なない。


尤も、あやめがテクテクとあたしの横にまで歩いてきた時には、既に完全に消滅していたんだけど。












それじゃあ、ドラゴンも倒して、あやめも戻ってきたことだし、ダンジョン探索に戻るとしよう。


そう思いあたしが一歩を踏み出したところで、


【流石にこの展開は予想外だよ】


神の声が聞こえてくる。


いつの間に現れたのか、ドラゴンの死体があったあたりに神が立っている。


美少年来たああああ!

テンションが上がるあたしを無視して話を進める神。


【しかも、そっちのローブの子はどうやら招かれざる客のようだね】


そう言って、あやめを睨む神。

神の横の空間が歪み、中から剣が出てくる。


【君にはここで死んでもらう】


剣を手に取った神は、まるで散歩するかのような軽い足取りで、のんびりとあやめへと向かう。


ふははははははははは。

馬鹿め!

このあたしを前に、余裕ぶって行動するなんて。


という訳で、


「あれ出して!あれ!」

と、妹にお願いする。



微かに首を傾げる妹。

その角度からすると、


『あれじゃ分からないよ』

と、いったところ。


尤も、懐に手をやったあやめは目当てのアイテムを取り出して、あたしへと渡してくる。


「れいぞくのぉくびわぁ!」


道具を受け取ったあたしは再度、青狸型ロボットの口調でアイテムを掲げる。


【?そんなものが僕に通用するとでも?】


不思議そうな顔をする神。

ご褒美です。美少年のあほ顔。

出来ればこのまま堪能したいところではあるが、サクサク話を進めることにする。


ダラダラやると、疲れちゃうもんね!


「とりゃ!」


あたしが美少年へと放った首輪は見事な放物線を描く。


【そんなもので】


軽い感じで剣を振るい、首輪を弾こうとする神。


【?!】


しかし、そんなのが上手く行くわけもなし。

首輪は急に進路を変えて神の攻撃を逃れると、再度進路変更。


【そんな!】


驚愕する神の首に、ガチャリと締まる。






【そんな!なんで!】


必死になって首輪を外そうとしている神。

馬鹿め!

無駄なことを!

外れる訳が無かろう!


「ふはははははははははははははははは!残念だったな!美少年!その首輪はあやめの手作り品なのだよ!お前ごときではどうにもならんわ!ふはははははははははははははははは!」


やったね!

美少年ゲッチュ!

テンションが上がる。


「跪けっ!」


【!?】


あたしの命令に従って、跪く美少年。


【あり得ない!人間如きにっ!】


「ふははははははははははははは。あたしのことは御姉様とお呼び!」


【かしこまりました。御姉様】


自分自身の台詞に、目を見開いて驚愕する神。

ふははははははははは。

あやめの作ったこの首輪は中々良くできていて、自我はそのまま残した状態で、相手を自分の命令通りに動かすことが出来るのだ。そのお蔭で、相手の顔が屈辱に歪むさまも堪能できるようになっているのである。

ちなみに、反乱防止機能はデフォルトで搭載されているので、実際に反抗されることはないという安心設計でもある。




「ちょっと向こうむいて、耳を閉じといて」


これはあやめに対するお願い。


あやめは特に気にすることもなく、コクリと頷いて明後日の方向を向く。


ふはははははははははははははははは。

これで、準備万端。


「服を脱いで裸になれ」


そう、美少年に命令する。


【なっ!!】


神は抵抗しようとするものの、そんなことが出来るはずもなし。


【そんな!そんなっ!?】


一枚、また一枚と服を脱いでいく。


【あり得ないっ!こんなの!】


何やら喚いている神。

だけど、もう遅い。

神が身に着けているのは、もはや下着だけ。


それにしても白いシャツに、白のブリーフなんて!

流石は神。

乙女心が分かってる。


ドキドキ。

ワクワク。

期待に胸が躍る。



【いやだ!イヤッ!】


羞恥に頬を染め、抵抗しようともがく神。だが、抵抗は空しいもの。自身のブリーフに手を掛けると、一気に引きずりおろす。



「へ?」


あれ?

なんで?

美少年の両足の間。

そこにはあるべきものが付いてなかった。


【こんな……。こんな……】


神がシャツを脱ぐ。

美少年の胸の部分。そこには僅かながら膨らみがあった。




「はひ?」


そんな馬鹿な……。

女の子ですとおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?!!


「女なら女らしい格好をしなさいよっ!!あんたっ!」


【ひっ!ご、ごめんさないっ】


泣き出す、美少年神改め、少女神。



それにしても、どういうことなのか?

あたしはあやめを見る。


明後日の方を向いて、背中を向けている妹。

ローブを着ているせいで分かり辛いが、その肩は微かに震えていた。

どうやら、笑いをこらえている模様。


「は、謀ったなああああああああああああああああああああああああああああ!!」








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