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異世界に召喚されたと思ったら、妹の情操教育的に宜しくない展開が始まった

BL展開アリ?






ピン!


「えー。またー」


つい10分前に異世界召喚されたばかりだというのに、早くも第六感が新たな異世界召喚が迫っているということを告げてくる。


一日の内で何度か異世界召喚されるというのは、今までも何回かあった。だけど、たったの十分って……幾らなんでも早すぎる。


あたしは読みかけのマンガ本をたたむと、妹の部屋へと向かう。


「入るわよ。あやめ」


当然だが、この台詞を言い終わる前に、あたしは妹の部屋に入っていて、ドアも閉め終わっている。


先程と同じく、妹はそこにいた。

パソコンの前に座って、街を造る的なシミュレーションゲームの続きをやっている。


あやめは何も言ってこない。だが、あやめが生まれたときから一緒に暮らしていることもあって、あたしには気配だけで妹が何を言いたいのかは分かる。

その心は、


『さっきもだけど、そういうことは入る前に言ってよ』

、だ。




だけど、そこはスルー。

あやめの隣に立つとローブを掴む。


ふっ!

これであたしの準備は万端。

いつでも来い、異世界人共。どんな奴が召喚して来ようと、返り討ちにしてくれるわ。


……あやめがだけど。




そうやって暫く待っていたら、足下に黒い穴が突然出現。

あたし達はその穴へと吸い込まれ、落ちていくことになる。




周囲は真っ暗闇で何も見えない。ただ、あたしの平衡器官が、下へ下へと落ちていっていることを告げている。


「暇だなあ」


落ちている間中、何もやることが無い。

もうちょっと早く移動できないモノなんだろうか?


と言うか、こんなことならマンガ本を持ってきていれば良かったかもしれない。


と、横であやめが首を傾げているのが、気配で分かる。それは単に首を傾げているだけだが、あやめが生まれたときから一緒に暮らしていることもあって、あたしには気配だけで妹が何を言いたいのかは分かる。

その意味するところは、


『こう暗くっちゃ、本なんて読めないでしょ』

、だ。




暇だ。暇だ。

そう思いながら、30分ほど落ち続けていたら、下の方に光の点が一つ見えてくる。それはグングンと大きくなって、ついにあたし達は光の中へと放り込まれることになった。


やれやれ。ようやく目的地か。

単に世界間を移動するだけなのに、なぜこんなにも時間がかかるのか?効率化を要求する!




闇の空間から放り出されたあたしが周囲を観察すると、そこは崖の上のようだ。

左手に崖の縁があって、その下側には都市が広がっている。


そうして、右手にいるのは、人、人、人。人の群れ。貴族らしき豪華な服を着た連中に、甲冑を纏った兵士らしき連中、ローブを纏った魔導士風の人間たち。


いや、人間の中に一匹、豚が混じってる。そいつは矢鱈と豪華な服に身を包んで、偉そうに椅子の上でふんぞり返っている。

他の連中は突っ立ったままであることを考えれば、一匹だけ座っているこいつがこの中で一番偉い奴なんだろう。

多分。




と、豚の横に控えていた金髪美少女が一人進み出る。


「ようこそいらっしゃいました。勇者様。私はドラキア王国の第三王妃、ミリマリアと申します」


へー。

王妃かー。

となると、その横にいるあの豚は、国王と言うことなんだろうなあ。


10代前半にしか見えない少女を妻にしてるとか、現代日本人的な感性で言えばドン引きな感じだ。けどまあ、日本でもつい最近まで、10歳ぐらいで成人と考えられて、普通にそれくらいの年齢で結婚していたらしいし、そういうものと言えばそういうものなんだろう。

と言うか、そもそもここは異世界。目の前の金髪美少女が300歳超のロリババアである可能性はかなりある。


などと失礼なことを考えている間にも、王妃の説明は続く。


「……ですので、勇者様には是非とも魔王を討ち取りっていただきたいのです!」


えー。

また魔王退治とか。

めんどくさい。

毎回毎回、同じような理由で人を呼びつけるなっての。

もうちょっとこう、変化をつけられないのだろうか?


変わり種の異世界召喚なら、あたしのテンションが上がるのに。



ピン!


と、いきなりあたしの危機察知が警報を発する。

方向は上、かなり近い。


この感じは……

何かが転移してきてる?


あたしは慌てて、危機察知が告げる脅威の方向へと視線を向ける。


面倒臭がっていようとも、あたしはこれでも異世界被召喚体質者。最初に異世界召喚されていたころはあやめを連れていなかったこともあって、真面目に魔王だの勇者だの世界管理者だのをこなしていたのだ。


その甲斐あって、あたしは気配察知スキルには結構自信がある。




そうして、あたしが上へと視線を向けると、そこでは空間がグニャリと歪み何者かが出て来ていた。




転移して来たのは男。肌は青色で、額からは立派な角が突き出ていて、禍禍しい黒色の甲冑を身に纏っている。いかにも悪魔といった感じの偉丈夫だ。


「ぐはははははははははははははははははは!」


そいつは、出て来るや否や、高笑いを上げる。



何こいつ?

頭おかしいんじゃないの?

出てきていきなり高笑いとか。


「勇者よ!残念だったな。お前が守る筈だった王都はもうすぐ滅ぶ!このオレ、魔王ベルゼブブ様によってな!」



……。

……。

……いや、あたしに王都を守る気なんて、最初からないんだけど。


こんな馬鹿みたいなのが魔王なんて……。この世界の魔族には、チョットだけ同情してしまいそう。




と、あたしがノンビリと見物を決め込んでいる頃。


「なに?!魔王ベルゼブブだと!?陛下をお守りしろ!」


周囲では、甲冑姿の連中が慌てて陣形を整えようとしている。


「無駄!無駄!無駄!人間如きが何をしたところで、どうにもならんわっ!」


そう言って、腕を振る魔王。

そうすると、腕の先から魔力の渦が放出されているのが分かる。



あれは?

それは、ほとんどの異世界でよく見かける一般的な土魔法だ。


せっかく魔王(自称)が出てきたのに……使うのがただの土属性魔法とか。しょぼいなああ。

と、あたしが残念がっていると、


「ぎゃあああああああああああ!!」


「ひがああああああああ!!」


「うあああああ!」


「いやあああああああああ!!」


「があああああああああ!」


魔王の魔法を受けて地面が盛り上がり、鋭いトゲトゲの様になる。それらのトゲは、人間達を貫いては絶命させていき、一瞬で甲冑兵士たちや魔導士風の男達を殲滅する。


どうやら、魔王が使っているのはタダの土属性魔法でも、この世界の住民にとってはそれなりの威力があるらしい。


魔王様の面目躍如といったところかな?

と、ノンビリ見物していると、


「いやあああああああああ!!放してください!陛下ああああああ!」


女の子の悲鳴が聞こえてくる。それに釣られてそちらを見ると、そこにいたのは、先程第三王妃と名乗っていた少女。どうやら、国王(仮)の盾にされている模様。

あの国王()!なんて非道な!あんな可愛らしい女の子を盾に使うなんて!


横ではあやめが首を傾げている。いつも一緒に行動しているあたしには、それだけで妹が何を考えているかが分かる。


『私を盾にしてるのに……。蒼姉あおねえだって』

、だ。



そんな妹の非難がましい気配は放置。


魔王の魔法を観察する作業に戻る。


あ!

新たなトゲが地面から生まれ、国王夫妻を狙う。


「ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


恐怖に目を見開く国王夫妻。国王は全力で王妃を前に掲げ、自分の身を守ろうとするが、唯の人間が盾になる筈もなし。国王(仮)は、第三王妃と二人仲良くトゲに貫かれて絶命した。






「ぐはははははははははははははは!これで邪魔な人間達は消えて、召喚装置も壊れた!最早、元の世界には戻れぬぞ!勇者よ!」


いや、あたしは普通に帰れるんだけど。あやめがいるから。


「だが!オレ様の配下になれば、助けてやってもよかろう!」


配下?

この魔王の?

ない。全くない。あり得ない。

そんなのメンドイし、何よりあたしの好みじゃない。



などと考えていると、勘違いする魔王。


「何を逡巡しておる!配下と言っても、人間の街を攻めろなどとは言わんわ!オークの赤子を身籠るだけの簡単な仕事だ!安いものであろう!それだけで命が助かるとは!」


いや。

だからないんだって。

と言うか、オークの赤ちゃんを産むだけの簡単なお仕事って……。それで魔軍に降伏した女性なんているの?


「オークはイイぞ!でっかくて!力強いのだからな!一度オークの子を身籠った人間のメスは、もう二度と人間の子など産もうとはしないのだぞ!オークと言うものは、それくらい気持ちいいらしい!」


うーん?

それって、オークが素敵だからってのとは違うような……。




って。

あれ?

あやめが首を傾げている。生まれたときから一緒に暮らしていることもあって、あたしにはその角度だけで、(以下略


その心は、

『だったら自分が産めばいいのに』

だ。


あれ?

妹のやばいスイッチが入ってる。なんか。


あやめが軽く腕を振る。

いつも通り、あやめからは魔力が全く関知できない。だけど、きっと何かをやったんだろうなあ。

碌でもない何かを……。





唐突に、


「なに?!ぐわあああああああああああああああ!」


悲鳴を上げて墜落してくる、魔王。


先程まで偉そうに空中で静止していたのに、なぜ落ちてきたのか?


答えは簡単。

何処からか出現したオークが、魔王に掴まっているから。きっと、バランスを崩したんだろう。




二人が墜落すると轟音が響き渡る。

同時に、砂埃がもうもうと立ち込めて、あたしの視界を閉ざす。


「ブヒッヒ!ブヒヒ!ブヒッヒ!ブヒブヒ!」


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「ブヒッ!ブヒッ!ブヒッヒヒ!ブヒブヒ!ブモ!」


「何をするかっ!貴様ああああああああああああああ!!」




嬉しそうなオークの声と、魔王の焦った声。それが砂ぼこりの向こうから聞こえてくる。

ついでに、魔王が身に纏っていた甲冑の残骸が砂ぼこりの向こうから飛ばされてくる。


やばい。

このまま砂埃が晴れたら、妹の情緒教育的に余り宜しくない光景が広がることになっていそう。


「やめろおおおおおおおおおおおお!!オレは魔王だぞおおおおおおおおおおお!!やめんかあああああああああああああああああああああああああ!!」


「ブヒ!ブヒヒ!ブモモヒ!ブブヒ!」


「やめてくれええええええええええええええええええええええええ!!こんな馬鹿なあああああああああああああああ!!」


と言うか、この魔王の絶叫だけでも相当マズイ。





「帰ろっか?悪も滅んだことだし」


正直な話、魔王とオークが砂埃の向こうで何をやっているのかについて、あたしは興味津々だ。

とは言えその光景を、妹にも一緒に見せるのは何かが激しく間違っている気がする。



幸いにも、コクリと頷くあやめ。


次の瞬間、あたしと妹は元の部屋に戻っていた。









「ふう。今回もまた、悪の召喚者は滅んだ。めでたし、めでたし。ありがとね。あやめ」


お礼を言うあたしを見て、首を傾げる妹。

その意味は、


『気にしなくて良いよ』

、だ。




妹がコテンと首を傾げるさまは、中々可愛らしい。こうしていると、普通の大人しい子っていう感じなんだけどなあ。


そう思いながらも、あたしは戦慄する。いくら敵とは言え、オークをけしかけるとか……。

幾らなんでもやりすぎなような気が。


と、あやめの首の角度が変化する。妹が生まれたときから一緒に暮らしていることもあって、今のあたしには妹の首の角度だけで、妹が何を言いたいのかが分かる。

その意味するところは、


『私を盾にしてオークの群れに突っ込んだことがあるよね?蒼姉あおねえも』

、だ。





あ。

やばい。

矛先がこっちに来そう。このままだと。


あたしは思いっきり視線をそらして、別のことを考えることにする。




次の異世界召喚は10年後とかにならないかな?

無理だろうなあー。

と言うか、今日中にあと一回ぐらい召喚されそうだと、第六感が告げている。


……勘弁してほしいなあ。





そんなことを考えながら、ドアを開けて、あやめの部屋から出る。三十六計逃げるに如かずって言う奴だ。




って!?

へ?

何これ?

意味が分からない。



ドアの先、そこは異世界だった。








ちなみに、以下は没にしたネタ。


「あーははははは!!!」


ビキニアーマーを着た女が出現。


そいつは、出て来るや否や、高笑いを上げる。



高笑いで、ビキニアーマーって……そんな典型的な敵女キャラみたいな奴がいるとは!アニメやゲームでもあるまいし。


「勇者よ!残念だったわね。あんたが守る筈だった王都はもうすぐ滅ぶわよ!このあたい、魔軍四天王のシエル様によってね!」



……。

……。

……いや、あたしに王都を守る気なんて、最初からないんだけど。


言動もアレで、着てるのがビキニアーマーなんて、何てイタイ女。しかも結構美人で、プロポーションも良いせいで、残念感が倍増している。そんな奴が四天王とか、魔軍とやらにはマトモな人材がいないんだろうか?


ちょっとだけ、この世界の魔王には同情してしまう。





と、あたしがノンビリと見物を決め込んでいる頃。


「なに?!四天王シエルだと!?陛下をお守りしろ!」


周囲では、甲冑姿の連中が慌てて陣形を整えようとしている。


「無駄!無駄!人間如きが何をしたって、無駄よ!」


そう言って、腕を振る魔軍四天王。

そうすると、腕の先から魔力の渦が放出されているのが分かる。。



あれは?

ほとんどの異世界でよく見かける、一般的な土魔法だ。


せっかく幹部クラス的な奴が出てきたのに……使うのがただの土属性魔法とか。しょぼいなぁ。

と、あたしが残念がっていると、


「ぎゃあああああああああああ!!」


「ひがああああああああ!!」


「うあああああ!」


「いやあああああああああ!!」


「があああああああああ!」


魔軍四天王の魔法を受けて地面が盛り上がり、鋭いトゲトゲの様になる。それらの棘は、人間達を貫いては絶命させていき、一瞬で甲冑兵士たちを殲滅する。


どうやら、四天王が使っているのはタダの土属性魔法でも、この世界の住民にとってはそれなりの威力があるらしい。


「いやあああああああああ!!放してください!陛下ああああああ!」


女の子の悲鳴につられて、そちらを見る。そこにいたのは、先程第三王妃と名乗っていた少女。どうやら、国王(仮)の盾にされている模様。

あの国王()!なんて非道な!あんな可愛らしい女の子を盾に使うなんて!


横ではあやめが首を傾げている。いつも一緒に行動しているあたしには、それだけで妹が何を考えているかが分かる。


『私を盾にしてるのに……。蒼姉あおねえだって』

、だ。



そんな妹の非難がましい気配は放置。


四天王の魔法を観察する作業に戻る。


あ!

新たなトゲが地面から生まれ、国王夫妻を狙う。


「ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


恐怖に目を見開く国王夫妻。国王は全力で王妃を前にかがげ、自分の身を守ろうとするが、唯の人間が盾になる筈もなし。国王(仮)は、第三王妃と二人仲良くトゲに貫かれて絶命した。






「きゃはははははははははははははは!これで邪魔な人間達は消えて、召喚装置も壊れた!あんたは元の世界に戻る術を失ったのよ!勇者!」


いや、あたしは普通に帰れるんだけど。あやめがいるから。


「でも!あたいの配下になれば、助けてやるわよ!」


配下?

このイタイ女の?

ない。全くない。あり得ない。

大体、そんなのメンドイし。



などと考えていると、勘違いする四天王。


「何逡巡してんの!配下と言っても、人間の街を攻めろなんて言わないわ!オークの赤ちゃんを産むだけの簡単な仕事よ!安いもんじゃない!それだけで命が助かるなんて!」


いや。

だからないんだって。

と言うか、オークの赤ちゃんを産むだけの簡単なお仕事って……。それで魔軍に降伏した女性なんているの?


「オークはイイわよ!でっかくて!力強いんだから!一度オークの子を身籠った人間のメスは、もう二度と人間の子なんて産もうとしないのよ!それくらい気持ちいいんだから!」


うーん?

それって、オークが素敵だからってのとは違うような……。




って。

あれ?

あやめが首を傾げている。生まれたときから一緒に暮らしていることもあって、あたしにはその角度だけで、(以下略


その心は、

『だったら自分が産めばいいのに』

だ。


あれ?

妹のやばいスイッチが入ってる。なんか。


あやめが軽く腕を振る。

いつも通り、あやめからは魔力が全く関知できない。だけど、きっと何かをやったんだろうなあ。

碌でもない何かを……。





唐突に、


「え?!きゃあああああああああああああ!」


悲鳴を上げて墜落してくる、四天王。


先程まで偉そうに空中で静止していたのに、なぜ落ちてきたのか?


答えは簡単。

何処からか出現したオークが、四天王に掴まっているから。きっと、バランスを崩したんだろう。




二人が墜落すると轟音が響き渡る。

同時に、砂埃がもうもうと立ち込めて、あたしの視界を閉ざす。


「ブヒッヒ!ブヒヒ!ブヒッヒ!ブヒブヒ!」


「いやああああああああああああああああああああああああ!!」


「ブヒッ!ブヒッ!ブヒッヒヒ!ブヒブヒ!ブモ!」


「ひぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」




嬉しそうなオークの声と、四天王の悲痛な叫び。それが砂ぼこりの向こうから聞こえてくる。

ついでに、ビキニアーマーの残骸が砂ぼこりの向こうから飛ばされてくる。


やばい。

このまま砂埃が晴れたら、妹の情緒教育的に余り宜しくない光景が広がることになりそう。


「ひぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


「ブヒ!ブヒヒ!ブモモヒ!」


「やめてええええええええええええええええええええええええ!!こんなのいやああああああああああああああああああああ!!」


と言うか、この四天王の絶叫だけで既にアウトな気もする。





「帰ろっか?悪も滅んだことだし」


コクリと頷くあやめ。


次の瞬間、あたしと妹は元の部屋に戻っていた。






「ふう。今回もまた、悪の召喚者は滅んだ。めでたし、めでたし。ありがとね。あやめ」


お礼を言うあたしを見て、首を傾げる妹。

その意味は、


『気にしなくて良いよ』

、だ。




妹がコテンと首を傾げるさまは、中々可愛らしい。こうしていると、普通の大人しい子っていう感じなんだけどなあ。


そう思いながらも、あたしは戦慄する。いくら敵とは言え、オークを女性にけしかけるとか……。

幾らなんでもやりすぎなような気が。


と、あやめの首の角度が変化する。妹が生まれたときから一緒に暮らしていることもあって、今のあたしには妹の首の角度だけで、妹が何を言いたいのかが分かる。

その意味するところは、


『私を盾にしてオークの群れに突っ込んだことがあるよね?蒼姉あおねえも』

、だ。





あ。

やばい。

矛先がこっちに来そう。このままだと。


あたしは思いっきり視線をそらして、別のことを考えることにする。


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