一章 : 新山編集社
新山編集社ーー、特殊記事編集部
「ーーーチッ、またか。」
「送られてきた録音、これで終わりですよ。江崎さん、死んだんじゃないですかぁ?。」
嫌味ったらしい笑みを浮かべる青年は、綾崎零時。
選ばれたエリートしか入れないといわれている新山編集社、特殊記事編集部へと若くして移動して来た。
実力があるのは分かるが少しは上司への敬意を払うということを考えてほしい。
「あほか、お前。不謹慎だ。」
黒髪に、整っている顔だがキツイ目の綾崎の教育係、出雲多々羅。
恐怖、というオーラを放っているが常識人なのは確かだ。
「なんですかぁ?出雲サンだってさっき死んだんじゃないかって言ってたじゃないですかぁ?」
「あ?」
「あは、冗談ですよ?」
ーーーピキッ
ペン先がおれような音がした。
しかし今ペンを使っている者はいない。
ーーーーそれは出雲の青筋が浮き出る音だった。
「!ーーーてッめェ」
そろそろか。
「あーはいはい。落ち着いてください出雲さん、綾崎調子乗るな。」
出雲は、学生時代からの有名なチーマーだった。
いや、一人で出歩いていたのでチーマーとは言わないか。
まぁただ、とても強い。一部からはバケモノと呼ばれている。
そして何より、出雲は、一度キレると誰も手を付けられない。
いや、ただ一人止められる者もいるが、、、。
それはまぁ、込み入った話になる。
後に分かることだ。
「別に、調子のってまセンけど、亜門サン?ま、いーや。」
へいへいと言いながら仕事に戻る綾崎と、信じられないぐらいの怖さの鬼の形相の出雲さんを置いておき、早速作業に戻る。
ここ最近、新山編集社はピリピリとした雰囲気に包まれていた。これも全て〔吸血殺人事件〕のせいだ。
吸血殺人事件は一般には何故か公開されていないが、マスコミはどこからか情報を受け取り、雑誌や新聞に載せ放題だ。まぁ、どこから手に入れた情報なのかだいたい検討はつくのだが、、、あまり関わりたくない奴『等』だ。いや、正確には『奴』なんだが。この吸血殺人事件の犯人は自らを吸血鬼と名乗る殺人鬼で、連続殺人を犯してきた。当初はただの愉快犯と思われていたが、殺人鬼は本当に吸血で人を殺していた。そしてなんと自ら撮った殺人動画をネットに上げる始末。
新山編集社は特殊記事編集部にこの記事を書けと命令した。
そしてーーー
ネットを見た私達、特殊記事編集部含めマスコミは血眼で犯人を探し出し、取材を求めた。
殺人鬼もとい吸血鬼は、取材を全て受けた。
しかし、記者は全て行方不明。
吸血鬼に殺されたとして間違いないだろう。
新山編集社、特殊記事編集部のメンバー、若くしての優秀な記者、そして、私の同期、江崎もその餌食となった。
私達は、もう少し対策を練り、取材をするべきだと止めたが江崎は聞かなかった。
そして昨日、あんな事にーーーー。
だが私は、亜門真は、江崎麻耶は生きていると考えている。
根拠はある。
手紙だ。
彼は取材に行く前、短い手紙を私にくれた。
『亜門。
お前とは随分長い。
一つだけお前に伝えようと思う。
吸血鬼は一人ではない。
そして、目的は殺人ではないはずだ。
もし俺が死んだら、いや、俺が死んだ
ことになったら、後はお前に頼む。
この事件は連続殺人事件ではすまない』
吸血鬼は一人ではないーーー
この言葉はとても引っ掛かる、第一動画にでているのはいつも同じ男だ。
マスクをしていてはっきり顔はわからないが、体格は全て一致する。
江崎は一体何を知っていたのだろう。
私はそれを調べているが、一行に分かりそうもなかった。