長雨に打たれて
雨に負けていいから
自然に負けるのは当たり前だから
雪も夏の暑さもつらいのは当たり前だから
体が丈夫かどうかは人それぞれなのだし
すさまじい欲望にのたうちまわり
すさまじい怒りにのたうちまわり
穏やかな表情なんて風前のともし火のように吹き飛んでしまう
ああ、三万円の寿司が喰いたい血のしたたる牛肉が喰いたい
それでも見栄があるからできればぶくぶく肥りたくない
あらゆることに
自分の影響力を期待してしまいながら
ばかにされたくないから自慢したいから一応それなりに読書し
読んだ本の内容は片っ端から忘れてしまう
東京の西の果ての駅の裏側の
六畳一間のワンルームにずるずると棲みついて
東に病気の子供があれども
どうすることもできず
西に疲れた母親がいることは知っているが
何年も帰って顔を見せてやりさえもせず
南に死にそうな人がいても
どうすることもできず
北に喧嘩や訴訟があっても
新聞で読んで知った気になって済ませてしまう
暑い時は暑いと騒ぎ
寒い時は寒いと騒ぎ
親戚一同から心底デクの棒だと見放され
血が出るほど褒められたいのになかなか褒められず
食うための仕事をすれば罵声が飛んでくる
そんな今のぼくのようなぼくにぼくはなりたくなかった