プロローグ
『ジリリリリ』
脳に直接入れられているナノソフト、通称『ブレイン・オブザーバー』が、鼓膜ではなく、脳の中でも聴覚を司る部分に直接7:00のアラーム信号を流し込む。
「んー、もう朝か」
重い体をのっそりと起き上がらせる。
すると脳波の変化を読み取ったブレイン・オブザーバーが、アラームを停止させる。
「祐樹、早く起きなさいよー」
次は下の階から母の声が鳴り響いく。
「今行くよ」
と、短く答え、ハンガーに掛けてある制服に着替えた。
階段に続く廊下の途中にある『愛莉』と書かれたネームプレートの掛かったドアの向こうからゴソゴソと音がするのを確認して、
「愛莉も起きてるか」
と自分の妹が遅刻する可能性が無くなったのを確認して、階段を下りていく。
「おはよう」
母が自分と妹の弁当箱におかずを押し込めながら挨拶をする。
「ああ、おはよう」
当然挨拶をかえす。
いつも通りの席に着き、皿の上に置かれたトーストを齧りながら朝のニュースに耳をかたむける。
「そう言えばあんたさ」
母が何かを言おうとしたが、
「待って」
自らの声でそれを止め、テレビの外出力端子と自分のブレイン・オブザーバーの波長を思想命令で合わせ、テレビの音声を直接脳に取り入れることにする。
理由は簡単だ、誰でも自分の家の近くで事件が起きていれば気になるだろう。
「母さんこれってこの辺だよね」
母に一様聞いておく。
「そうよ」
答えがかえってきたのを聞いて再度テレビの音に集中する。
内容は簡単だった。
「この辺で失踪事件ねなんて珍しいね」
外出力端子との接続を解き、ボゾリと呟く。
「確かにそうだね、平和だけがこの町のとりえなのにね」
いつの間にか下りてきた妹の愛莉が答えた。
「それより祐樹、今日あんた授業で宿題メモリーを提出するって言ってたけど、持ったの」
今日は日本史のレポートの提出日であることをすっかり忘れていた。
「まだ持ってない」
急いで階段を駆け上がり、ゴチャゴチャの机の中から提出用のメモリーを探すのはなかなか骨が折れた。
「母さん今何時」
リビングに帰ってきた頃にはすでに愛莉が居なかった。
「もう8時5分よ、早く急ぎなさい」
確かに、今から走って間に合うか微妙なとこだ。
しかたなくメモリーを手に持って走ることにした。
「いってきます」
靴を履きながら玄関で叫ぶ。
「あんた、メモリー鞄に入れないと落とすよ」
母の優しい気遣いも今は邪魔なだけだった。
「大丈夫、大丈夫」
そう言って、雪灘と書かれた表札の横を通り、私立波風高等学校への道についた。
初めての作品で面白くないかもですが応援よろしくおねがいします。
それとできれば感想などいねがいします。
2話以降は2千文字をベースのしていきます。