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トリックスターは英雄になれない  作者: 清野
偶然は集いて
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第五話 自己紹介 + 現状確認 = 色々と台無し



「俺の名前はガイ。本当はちょっと違うんだが発音しにくいらしいから、こっちで呼んでくれ。」


まず自己紹介を始めたのは焼き鳥野郎、改めガイ。ガイは短めの黒髪、黒目。180くらいの長身に、筋肉質っぽい固そうな感じ。あれだけ動けるってことは多分柔軟性もありそう。悪い奴ではなさそうだけど、なんか変な感じ。直感だけど。

取り敢えず、自分から話し出してイニシアチブを取ろうとしてるのかも。

その利点としては…話したくない事を避けやすい、とか?



「出身はここからだいぶ離れた島国だ。今は旅をしている。特技は剣、格闘、まあそんなとこ。」


ん、私も島国って言うつもりだったのに。まあ、被ったからって問題は多分ないけど、多分。


いや、待てよ……ちょっと考えてみよう。



「あとは、弓も使えるぞ。狩猟みたいことやって食いもんよく捕るしな。職業は傭兵みたいなもんだ。今はフリーだけどな。……以前はある国に仕えてたんだけど最近辞めてさ。」



……しーん………



ペラペラと、自己紹介を進めてくれるが、自分は考え中だし、背の高い彼はひたすら無言。

てか、彼は出会ってから一言も声を発したのを聞いていない。

こんなに盛り上がらない自己紹介は多分初めてだろう。


考え中、の札欲しいなあ。



ガイはこの無反応さに焦っているのか、最早全く関係ないだろう、以前の仕官先での甘酸っぱい恋の話までしてる。どうでもいいから聞き流すけど。


夜の城の廊下での逢い引きなんてどうでもいい。心底どうでもいい。もう一回言うけど、どうでもいい。


切ない別れのシーンを遮って、おもむろに自分も自己紹介を始める。まずは姿勢を正す振りをして指輪の石を弄る。



「あー、次は『自分』かな。『私』はチセって呼ばれてる。私も本名は言いにくいらしいからチセかチイって呼んで。」


さて、ここからが本番だ。


「私は、こことは異なる世界から来たんだ。『別の世界』に呼ばれて、色々とやった後、『元の世界』に戻ろうとしたら、何故かこの世界に『落ちちゃった』みたいでさ。」


ここで、一回言葉を切ると、残りの二人は揃って驚愕の表情を浮かべている。まあ当たり前だ。


問題なのは、これは『どっちの』驚きか、だ。

『信じられない』もしくは、


……『聞いたことがある』。



「ちょっと待て、お前っ、『別の世界』って……、」


吃りながらガイは頭をかきむしる。


「……お前もか!」


やっぱり!! ガイもだったか!!


私とガイで、背の高い彼を見上げると、深く頷かれる。


「お前も!?」


「あなたが声を出さない理由も、『あなたの世界』では普通でも『この世界』では異質な何かに聞こえるんじゃないんですか?」


私のこの台詞に、彼は大きく目を見開き、驚きを表現しながら、頷いた。


私が私以外の二人も私と同じような状況じゃないかと疑ったのはいくつかの理由がある。


ガイについては私と、同じ場所で同じような状態だったこと。

しかも、もし彼が言うように、旅人だったとしたのなら塩や食べ物がないなんておかしな話だ。

しかもこの場所について、知らなすぎる。それこそ、『異世界人』である私と同じ程度だなんて。

自己紹介の時に固有名詞を全く使わなかったのも、こちらの世界でなんて言うか分からなかったからだろう。


背の高い彼に関しては、実は根拠は弱い。

まず、私たちと同様に季節外れの旅人であるとこ。

彼がくれた岩塩が一般的ではなさそうであるということ。この宿のスパイスたちの中になかった。旅人用なら、補充できるように宿に常備してあってもおかしくはないのに。

そして、何より、彼は話せるのに話していない、と予測したことだ。

大抵、話せないなら、身振り手振り、手話、筆談などの手段をとるはずだが、彼は全くその素振りはない。話す気がないならそもそも『情報交換』に応じないはず。

まあ、魔法とかあるなら別だが………

筆談には言語という大きな壁が立ちはだかるから難しい。


なら、何故話さないのか。

声が明らかに異質である、もしくは話し方に癖がある(例えば方言みたいな) などが考えられた。


なんて、私がつらつら話すと、彼は頷き、口を開いた。


彼の声は、大柄な男性には不釣り合いなほど、高い、まるで小鳥の囀ずりの様に綺麗な声で、





「仰る通りで御座る。拙者、ラムゼイと申す。」




…………なんか、もう、色々と台無しだ………






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