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トリックスターは英雄になれない  作者: 清野
必然を成し、
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第二十五話 細工 + 移動 = もしかして迷子?




『闇』が消えてから、果たしてどのくらいたったのだろう?


「あれは、なんだったんだ?」


抜き身の剣を持ったまま、ガイが呟く。


「分からない。だが奴等が戻ってくるかもしれない。移動しながら話そう。」


青い顔のまま、スレインが杖を消さずに、歩く様に促す。アリアが離れて地面から笛を拾い上げ、戻ってくる。


「これ、持って行った方が良くない?」


ラムゼイは笛を受け取り、スレインと共に見る。

私とサイは手を繋いだまま、そちらまで行き、一緒見る。


犬笛ってこんな感じなのかなあ?


笛は銀の細かい細工がしてあり、美しい。


「いや、止めておこう。」

「そうで御座るな。魔力が感じられるで御座る。追跡されたら厄介で御座る。」

「この模様に魔力を感じる…。」


サイが目を凝らして見ている。


「見えるの?」

「見えると言うか、なんと言うか……感じる?」


ふむ。なら……


「ガイ、さっきのサイの短剣貸して?」

「あ?ああ。ほい。」

「サイ、ちょっと貸してね?」

「うん。」


笛の模様を良く見る。

不自然にならないように小さく模様の上から傷をつける。


「これで、どう?」

「……魔力が消えた。」


精密に刻まれた魔方陣みたいのを、足でゴシゴシと踏み消した様なものだろう。


ちょっと自慢気に皆を見ると、呆れた顔をされている。あれ?なんで?


「吹いてみるか?」

「ガイ、止めて。またさっきの来るかも。」

「え?」


気味悪そうに、ガイが笛から離れる。


「捨てて良い?」


皆を見回すと、頷かれたので、念のためにネジみたいのを外し、本体をさっき落ちていた場所辺りに、ネジを草原に向かって投げ捨てる。


「じゃあ、行くで御座るよ。」




暗い夜道を、月明かりを頼りに歩く。

灯りは発見されやすく、危険だから点けていない。


どうやら、暗い中、ちゃんと見えてないのは私とアリアだけの様だ。てかガイも見えてないけど感覚で分かるらしい。

すごい、野生な感じ。


なので、先頭をガイ、スレインが、真ん中に私とサイが手を繋いで、最後尾をラムゼイとアリアがやはり手を繋いで歩いている。

全く見えなくは無いけど、アスファルトの様なまっ平らな道ではないので、細かい凹凸が見えない。

たまに躓き掛けては、サイに助けてもらってる。


しかし、歩きにくいなあ、灯りが無いと。


必死に歩いていたら、隣から小さい声で話し掛けられる。


「結局、さっきの何だったんだろう?」

「魔力は感じた?」

「それが、よく分からないんだ。」

「ん?」

「何かは感じるけど、魔力、なのかどうか?」

「まあ、純粋な魔力じゃねえな。」


振り向かずに前からスレインが答える。


「正直、俺にもよく分からない。まあ、それが異常なんだ。」

「拙者も、で御座るよ。」

「まあ、俺には魔力が無いからよく分からねえけど、『あれ』が良いもんじゃないのは本能で分かるわ。」

「私もよ。」


ガイとアリアが続けて会話に参加してくる。


「なんかあの笛に向かってったね。音が止んだら戻ってったし。」

「え?そうなの?」


サイが驚いている。

あれ?


「森から出てきて真っ直ぐに笛に向かってたよ、途中、彼奴等の出した音とかに反応して動く速度は変わってたけど方向は変わらなかったし。」

「チイ、よく見てたね。」

「一度見ちゃうと怖くて目が離せなくて…」

「チセ、お前いつから気が付いてた?」

「ガイが短剣を受け取って、私がスレインの後ろに回ったすぐ後かな。たまたま横向いたら、いた。」

「だからあんなに震えてたのか。」

「うん、武者震いではないよ。」

「そりゃ、良かったと言うべきで御座るか?チセ殿が戦うと怪我ばかりするで御座るから。」

「それは男が情けないからよ!」

アリアが軽く、ラムゼイの鳩尾に裏拳を入れる。


あれ?ラムゼイ、噎せてる。


「話がズレてるよ、で、あの笛は何?」

「あれか。」


私の問に、スレインが嫌そうな声を出す。


「グフッ、あれは、ゲホッ!」


ラムゼイ、まだ噎せてる。

アリア、背中擦ってあげてるけど、元はと言えば、アリアの裏拳の力加減がちょっと、だったのでは?


「ありゃ、うちの一族が使う懲罰用の笛だ。」

「懲罰用の?」

「ああ、俺達の一族は『声』を媒介に『術』を使うんだが、耳も発達しててな。普通の人間が聞こえない音域まで聞き取れるんだ。」

「ゴホッ、あの笛の音はかなり不快な音で、聞き続けると目眩やら吐き気やらで気が遠くなるで御座るよ。」

「だから『術』に必須な集中力を著しく妨げる。俺はそれでも辛うじて使えるがラムゼイにはまだ無理そうだな。」

「御座る、お前は修行不足か?」

「……あれは本来、懲罰用だから、耐えれる兄上がおかしいので御座るよ。しかも変な魔力で増強されてたしで御座る。……修練足りてないのは事実で御座るが……」

「番犬ストーカーが変なだけよ。ラムちゃん、気にしないで。」


ブハッ!


サイが噴いた。多分、理由は分かる。

てか、むしろ私、よく耐えた!


「おい、番犬ストーカーって、真逆なもん混ぜるな。気持ち悪い。せめてどっちかにしろ。」

「スレイン、そこ?!」

「師匠、否定はしないんだ。」

「じゃ、『変態』。」

「…………おい。」

「アリア、悪化してない?」

「アリア殿、『変態』はガイの称号で御座るよ。」

「あ、そう言えば!」

「……チセ、そこで納得しないでくれよ、命の危機を感じるから。」

「あら、何したの?」

「やめっ!言う

『下着姿のイタイケな女性に抱き付いた』

って、俺死んだー。」

ガイが制止する前に、私とラムゼイの声が重なった。


「よし。ガイ。松明持って俺たちと反対方向に全力疾走と、森に松明持って朝まで走るのどっちがいいか?」

「スレイン!それマジで両方危険だから!俺、危ないから!」

「でも地味に私達は危険が減るわね、それ。」

「確かに良案で御座るな。」

「……アリア、御座る、お前ら鬼か……」

「流石師匠!一石二鳥ですね!」

「サイ……そこなのか?」


ガイは、残された私に縋る様な眼差しを向けてくる。

しょうがないので、笑顔で言ってやる。


「足元には気を付けてね。」


だって、私が被害者だもん。


あ、ガイが撃沈された。邪魔だからそのまま地面とオトモダチにならないでよ。


「皆、ひどい…。」



閑話休題。



何とか夜道を歩き続けて、何時間か経ったのだろう。空が明るくなってきた。

サイが手を繋いでくれているから歩き続けていられるが、それがなければもう地面に寝転がっていただろう。


しんどい。よく見えない道を神経を使って歩くのが、ここまで消耗するとは……。


でも私だけでなく皆、辛いだろう。無口になってきた。

それでも休憩を求めないのは、追われる恐怖が拭えないからかもしれない。

怖いのは『神殿』ではない。あの『闇』だ。

得体の知れないもの程、恐ろしいものはない。対処の仕方どころか、避け方すら分からないから。

早く、安全な所で休みたいのは皆同じだろう。


「大丈夫?」


サイが心配そうに聞いてくれる。


「大丈夫、じゃないけどまだ歩けるよ。」


苦笑いになってしまう。繋いだ手をギュッと握られる。心配そうな顔を見て、サイの表情、豊かになってきたなあ、とぼんやり考える。


「もうすぐ、街の筈だ。頑張れ。」


ガイが振り返りながら励ましてくれる。


「元はと言えば、なんで村に着かなかったのかしら?」


アリアがラムゼイと繋いだ方の手を挙げる。

……勝利選手の手を掲げるレフェリーの様だ。

そう言えばその問題があった。


「なんか『術』使われたか?」


スレインが不可解そうに言う。でも何らかの魔力が作用してれば誰か気が付いた筈だ。

もっと、単純な見落としがあった?

………あ、もしかして。


「ねえ。前に寄った村ってさ。入り口から入って、そこから出たよね。他には出口、無かったの?」


『あ。』


全員の声が重なった。


「そう言えば村の奥にそれらしき所が……」


アリアが言うと、留守番してた私とガイ以外が皆頷く。


村を回って買い物してそこも見てたのに、その可能性に誰も気が付かなかったんか!


つまり、次の村に行くには道Aから『入り口』へ入り、『出口』から出れば、次の村に行く道Bに入れる訳だ。しかし、村を出る時、『出口』ではなく『入り口』から出たら、この道、つまり道A を歩き続けるはめになる訳だ。

この予想が正しければ……


「この道、どこに繋がってるの?」


『…………』


ここに来て、まさかの迷子?!



『…………。』



沈黙が、痛い。

どっと、疲れたよ…………。





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