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トリックスターは英雄になれない  作者: 清野
必然を成し、
23/48

第二十話 軽んじてきた痛み + 弟子入り認可 = 家族扱い?

スレイン視点です。






‥…――――――――


触れていた唇を離すと、千歳は静かに寝息をたて始めた。


「千歳。」


身体に燻ってる熱と一緒に、声をかけても目覚める兆しは、ない。

巧く、『術』が効いた様だ。

癒す為の、夢も見ぬほどの深い眠りを誘う『術』を唇を通して千歳に『刻み付けた』。


千歳自身が思っているより、千歳の状態は悪い。

身体を半分氷付けにされ、腹を氷の槍で貫かれていたのだ。当然、出血も多く、重要な臓器の損傷も見られた。

『前の世界』だったら、既に完治していただろう。だが、『神剣』や『世界』からの加護が無い今は、千歳はただの華奢な少女と何ら変わらない。その為、無理矢理『術』で癒したら、身体への負荷が強すぎる。

そして、俺自身も『この世界』へ渡った代償に魔力を半分持っていかれた。全く惜しいとは思わないが、力の調整がまだままならない。

俺も千歳も今のこの身体に慣れないといけない。


怪我をしたら痛いこと、大きな怪我は治りにくく、つらいこと、無理をしたら身体に負担がかかること。


当たり前の事を、俺達は余りにも軽んじてきた。千歳に到ってはそうせざるを得なかった。だからこそ、完治まで時間がかかろうが、『本来の治癒力』を活発化させるだけに留めておく。歪めてしまったのは俺のせい。痛みを忘れ、戦いへと足を向けるように仕向けてしまった。それなのに、それを、正すために更に千歳に痛みを負わせる。


「惚れた女に何を、やってるんだろうな。俺は。」


責任が取れるなら、ずっと寝ている千歳の傍で見守り続ける。

だが、俺も今夜は寝ないとまだ疲労がとれない。世界を渡るだけでも、負荷が強すぎるのに、そのまま治癒、大技、防御。様々な『術』使いすぎた。


……俺達はお互いを労る事が出来るのに、何故自分自身は労れないんだろう。な、千歳?


もう一度、千歳に口付けて、予め構築しておいた防御の『術』を『刻む』。

これで朝まで眠りが続けば良いが。千歳の生気が弱り過ぎている。今夜は熱が上がるかもしれない。

穏やかに眠っている千歳の傍に居たいが、一度食堂に顔を出すことにする。


「おやすみ、千歳。」


そっと、頬をなでてから部屋をでる。念のために、ドアにも『術』を刻む。


……こんなんだから、『過保護な保護者』扱いされんのかな?


溜め息を吐きながら、食堂まで降りると全員が集まって談笑している。


「兄上、チセ殿は如何で御座るか?」


最初にラムゼイが俺に声を掛けた。


「良くはねえ。今夜辺り熱が上がるかもな。」

「まあ、『こっちの世界』来てから毎日連戦だったからな。」

「やだ、そんなに?」

「ああ、初日は森でデカい鳥みたいのと。二日目は翼竜みたいのと。三日目は昼にサイに殺されかけて、夜には変な男に氷付けにされて、更に腹を氷の槍で貫通。普通に考えたら絶対安静だろ。」


おい、知らないのが混じってんぞ。


ギロリとサイを見れば顔が真っ青になっている。

ラムゼイが慌ててガイの頭をどつく。もう遅いわっ!


「サイ。」

「っ!!はい!」


ビクビクしながら俺を見ている。

「千歳にお前の面倒を見てやれと言われた。」

「チイに?」

「ああ、だが俺の魔力は半減している。その上で戦う力を失った千歳を護らなきゃならない。限界だ。これ以上、俺は背負えない。」

「……はい。」

「だから、学びたきゃ勝手に付いてこい。片手間でよけりゃ、な。」

「はい!」

「ただし、自分の力で自分の身を護る事を最優先しろ。他の奴等は余力があれば手を貸してやれ。」

「わかりました。」


サイの目の中の仄暗い色が、少し薄れる。だが、こいつは一番危うい。どうなるか、だな。


「悪いが、今日は俺は休ませてもらう。」

「……兄上、少し力を使い過ぎでは御座らんか?」

「そう思うなら、修練を重ねろ。お前が強くなれば、俺は楽できるんだからな。」

「承知。今夜は拙者が寝ずの番をするで御座る。兄上はゆるりと休まれい。」

「じゃあ、俺も、」

「ダメだ。ガイ、お前も重症だったんだ。お前も休養が必要だ。食って、寝ろ。あと一発殴らせろ。」

「最後のはなんで!」

「受け入れるで御座るよ。」

「まあ、あんたが悪いわね。」

「お茶をぶっかけたんならしょうがないだろ。」


そう言う事。しかもおんぶ……!


「チセ、助けて……」


まあ、殴るのは後にして、


「サイ、お前も寝ずの番をしろ。夜の間にラムゼイから魔力のコントロールを教われ。」

「はい!師匠!」

「拙者、コントロールは苦手で御座るのだが…」

「だから、お前も復習になんだろ。頑張れよ。」


じゃあ、寝るかと、腰を上げると、アリアがこっちを睨んでいる。


「あんた、まさかチトセと寝る気じゃないでしょうね。」

「あ?熱が上がったら俺が処置するんだから当たり前だろ。」

「ふざけんな。私が看病するから、あんたはガイと寝なさい。」

「てめえに指図される謂れはねえな。」

「黙れ。女同士が同室なのは当たり前でしょ。あんた、チトセに男として見て欲しいなら、まずあんたがチトセを女性扱いしなさいよ。」


どういう意味だ?


「あんたがしてるのは『家族扱い』。だからチトセが混乱してるのよ。同室で寝るのはチトセの準備が出来てから。」

「俺もアリアに一票。」

「拙者も。」

「……。」


クソッ!そのまま寝とけば良かった。


「チトセの容態が変わったらちゃんと起こしてあげるから。」

「………………頼んだ。」


面白くないが、仕方ない。俺も休まないとこの先何があるか分からないから不安が残る。

大人しく寝るとするか。

千歳の部屋の前を通った時に『術』を変容させて、アリアも部屋に入れる様にする。男は俺以外はダメだが。


ガイはまだ、食堂に残ってるからさっさとベットに入る。軽く『術』をかけてからゆっくりと、目を閉じる。


なあ、千歳。早く俺を受け入れる準備、整えてくれよ。こっちは我慢し過ぎて限界だわ。

本当はこんな団体行動なんかしないで、お前だけ拐って、どこかに行ってしまいたいのに……。


思ったよりも早く、眠りは訪れた。





――――――……‥





誤字脱字があれば、こっそりご指摘お願いします!

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