表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
thin  作者: あきら
6/8

#6

 送信者「小雪」 件名「存在を確かめること」


「こんにちわ。最近、メールチェックするのが楽しくなってきました。

 遊喜さんのおかげですね。

 毎日の生活の中で、ちょっとした楽しみがあるのとないのでは全然違いますよね。

 遊喜さんから見て、私ってちょっと変な人という感じなのかしら?

 最初に書いたとおり、私には何もないんです。だから逢うこともできません。

 遊喜さんは実際に逢わないと存在を確かめあうことができないと思いますか?

 私は、こうやってメールを書き、返事をもらう。それだけであなたの存在を感じ取れる。

 そう思ってます。」



 メールに返事が来る。それはつまり相手が存在するからである……。はたして本当にそうだろうか? 小雪さんという存在は、この世界のどこかに本当に存在してるのだろうか? 思えば「小雪」という名前も僕が考えたものだ。彼女……いや、性別すら本当は解らない。……その彼女が普段なにをしているかも知らない。もしかすると誰かのいたづらかもしれない。どこかのページの企画かもしれない。今の技術では疑問もあるが、人工知能かもしれない。逢うことでこれらの疑問は簡単に払拭できる。でも逢うことはできないと言う。相手の存在を信じること。人と人のコミュニケーションにおいて第一歩でつまづいた気がする。



 送信者「遊喜」 件名「Re:存在を確かめること」


「こんばんわ。逢えないと言うことでとても残念に思っています。

 確かにメールだけの仲で突然逢ってくれというのは、迷惑でしたね。

 ただ、あなたがどんな人か、それを確かめたかったのです。

 最近僕は自分自身についてよく考えるようになりました。あなたのおかげです。

 考えても考えても、答えのでない問題に、もしかしてあなたに逢えば、

 違った解法が見えるかもと……。

 あなたは存在しているのですか? 僕は存在してますか?」



 逢いたい、返事が待ち遠しい、自分を知って欲しい、相手を知りたい。これってなんか恋愛感情みたい。でもそんなんじゃない。もっと根本的な、群を成す生き物の本能というか、とにかく誰でもいい、誰かと分かり合いたい。他人との比較ではなく、他人との交流から自分ってものが見えてくるんじゃないか? ワラをもつかむ気持ちでそう思った。


                                   lead to #7


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ