#5
送信者「小雪」 件名「遊喜さんらしさ」
「お久しぶりです。お返事遅れて申し訳ありません。
たとえメディアに影響されたとしても、
それを“良い”と感じた遊喜さんの感性はあなただけのものではないでしょうか?
そういう目に見えない、自覚しない選択の積み重ねが、
今のあなたを形作っているんだと思います。
なんて偉そうに言ってる私が一番自分らしさが見えてないのですけど……。
その分、普段からそういった事をぼんやり考えているので、なんとなくですけど、
理屈は解ってるんでしょうね。あなたの優しさがあなたらしさだと思います。
遊喜さんから見て、私はどんな人ですか?」
生きていくことは選択していくこと、って誰かが言ってた。壮大なリアルアドベンチャーゲーム。こっちを選択すれば、どこかで誰かのステータスが上がり、誰かのステータスが下がる。場合によっては誰かが生き残り、誰かが死んでいく。食べ残し大国日本が小麦を高値で買い占め、どこかの国が買えずに餓死者を出すことになる。つまりは僕が今日パンを食べるか米を食べるかの選択が、周り廻って誰かを救い、誰かを貶める。僕には何かの死の上に立ってまで生き続ける価値がはたしてあるんだろうか?
送信者「遊喜」 件名「小雪さんらしさ」
「お久しぶり、と言うにはまだあまり時間が経っていない気がしますけど……。
とりあえずお久しぶりです。
僕らしさは、結局僕自身で見つけない限り、
誰かに言われても納得できないんだろうと思います。
それでも、あえてあなたの印象を答えるとすれば……、うーん、
まだまだメールを数通交換しただけでは解りません。
ただなんとなく寂しそうな人だなとは思いましたけど。
最初は悪戯メールかなとか思いました(笑)なにげにインパクトは強いですよね。
あなたは自分が思ってるほど、希薄ではないんだと思いますよ。
少なくとも僕にとっては価値観を揺さぶるほどに……。
そうだ、今度実際に会ってみませんか?
きっとお互いの“らしさ”がもっと解るようになると思います。」
息することすら、この世界に迷惑をかけている。僕はどうして生きているんだろう? 僕の存在を必要としてくれてる物があるんだろうか? 僕に食べられてきた様々な命は僕を許してくれるんだろうか? それでも無様に、生きていたい、と思った。
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