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魔王の果て  作者: ゆうた
第一章 私が魔王になった理由
1/1

序章 生誕

初投稿です。

誤字・脱字あったら指摘していただけると助かります。

どんな内容でも感想いただけると嬉しいです。

直接的な残酷な描写を含みますので苦手な方はご遠慮下さい。


第一章 私が魔王になった理由


人族として余りに異質。

それが彼等の生誕時の状況であろう。

それは彼等が『運命の仔』であるといった理由ではなく、またその力を指すものではない。

いや、彼等が『運命の仔』でなければその生涯をそこで終えていて、結果は違っていたのだから、一概に

それが理由でないとはいえないが。


だが、どちらにせよ異質であることに異論は無い筈だ。

何故なら世界に生を受けたその瞬間、与えられたのは両親の愛情ではなく、母親の包丁の一振りであったのだから。


◇◆◇◆◇◆◇


彼等の生まれた家は、賢帝国ルヴィスに属する国境沿いの街であった。

父親は兵士を生業に、母親は家で家庭を守る。

父親の稼ぎは、贅沢はできぬが、たとえ子供を産んでも家族を養っていける収入があったし、

何より彼等の両親は互いを愛し合っていた。

ただ異常だったのは両親の愛情の表現方法であった。

父親は度を越える嫉妬心をもっており、母親が買物の折、荷物を受け取るときに男性店員の手に触れたという理由で、

母を罵倒し、数時間手を洗わせ、数日間それを続けさせ、数ヶ月間出歩くことを禁じた。

その行為を愛情だと思い、不満に思うことなく受容する母親もまた異常であったといえる。

傍から見れば歪な夫婦生活だが、両親は互いに幸せを感じる日々であった。

子宝に恵まれないこと以外は。


或る日、戦争が起こり父親は徴兵され出兵することになる。

結果はルヴィス国の勝利であったが、この戦争が両親を壊すきっかけになった。


ルヴィス国の国境沿いにあった彼等の両親の街は敵国の蹂躙にあい、母親は強姦され子を宿し、

父親は片足を失って帰国する。

父親は誇りをもっていた兵士としての仕事を続けることができなくなり、悲嘆していたが、

母親の妊娠を聞き、待望の子が生まれることが生きる糧となった。


母親は強姦という筆舌に尽くし難い苦い経験を遂に父親に打ち明けることはできなかった。

それは嫉妬心の強い父親に告白すると捨てられるという思いからである。

そして妊娠したことに対しては

(苦い経験をした私達に対する神様からの贈り物よ。幾度も愛し合ったあの人との子に違いない)

と十余年の夫婦生活で子を宿すことの無かったという事実から目を背け妄信した。

そんな彼女の思いは、実は半分は当たっていた。

『神様からの贈り物』という半分は。


神が母親を選んだ訳でもなく、無論強姦した兵士を選んだ訳でもなく、全くの偶然、奇跡の確率で当たったのだ。『運命の仔』の母親に。

不運なことはそれが愛する父親との子ではない命だということ。


◇◆◇◆◇◆◇


「オギャー、オギャー」

母親の壊れた瞬間である。

父親は新しく始めた軍の事務の仕事の最中の出来事だった。

父親の子だと妄信していた母親だったが、一抹の不安があったのだろう。

産気づいても父親に知らせることは無く、医者も呼ばず、独りで産もうとしていたのだ。


(黒髪!!!

私も彼も金髪、いくら親類を辿っても・・・

この色は?

何故?

じゃあこの色は?

あいつ・・・

あいつの色・・・

私を蹂躙した憎いあいつの髪の色!

何故?

あんなに愛してくれたのに

どうして彼の子じゃないの!?

不味い!

彼の子じゃないと気付かれる!

どうなる?

捨てられるの?

駄目!そんなの駄目

彼がいないと生きていけない!

どうする?

どうする?

どうする!?

・・・大丈夫!

まだ大丈夫!

この子達を始末すれば分からない。

それで元通り。

それで次は彼の子を産めばいいの。

それだけのこと)


母親はお産で弱った体を奮い立たせ、台所から包丁を持ち出すとそのまま勢いよく、

生まれたばかりの双子に向かって腕を振り下ろした。

いや、下ろそうとした。

確かに血飛沫があがっている。

しかしその血は包丁を振り下ろした母親のものだった。


奇妙な動きだった。

真下に下ろした筈の包丁が、急に角度を変え母親の方に向かったのだ。


「キャッ、キャッ」

今にも絶命しそうな母親の下で、双子の片割れは笑っていた。


◇◆◇◆◇◆◇


父親は帰宅すると、言葉を失った。

そこには愛する妻の死体。

そして全身に血を浴びた二人の赤子。

その事態をどう理解したかは分からないが、父親もまた母親無しでは生きれなかったのだろう。

徐に壁に掛かった兵士時代に使っていた剣を手に取り、そのまま自分の喉に突き刺した。


父親が死んでいくその傍らで、双子の片割れは涙を流していた。



これが『運命の仔』である彼等が、生誕した日の出来事である。

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