表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

如月ゆすら様に感謝します!

この秀逸なイラストは、あの如月ゆすら様のお手製ですー!

さくら嬉しくて踊りました。

何たって兄さんが麗しいんです。しかも限定一名にだけ見せる優しい眼差しなんですよ、皆様!

これでご飯いただけますな。

うまうまと、堪能し稚拙な文を付けてみるも・・・アルバム設定の方が良かったかな・・・とか。思っている次第・・・。

     挿絵(By みてみん)


 青銀の髪、青銀の瞳。冴え冴えとした美貌の魔王のピアスは翠。

 金の髪、翠の瞳。柔らかな印象の少女を飾るリボンは誰かさん指定の青銀、ドレスもそれを模したもの。


 ・・・誰かさんの無言の独占欲を感じさせるそれを前に、魔軍幹部は沈黙した。


 何か言ったら粛正される。死にたくないし、野暮な事は言いたくない。


 それに、上目や横目で垣間見る少女はいつも、麗しい。

 その装いが誰の思惑で、誰の意向か、なんかは関係ないのだ。

 少女が麗しく微笑んでくれるなら! ついでに微笑みながらお茶を差し出してくれるなら!

 魔王閣下の無言の威圧感も、アマレッティ様の有閑ぶりも、リアナージャ様の下僕ごっこも。

 乗り越えて見せる! 乗り越えられるとも!

 魔軍幹部の意気も上る。当然だ。


 (((((ああ、嬢様、今日も可憐だ・・・)))))


 魔王幹部の頭上に出現したお花畑・・・。余人には見えないその花は魔軍幹部の頭で咲いて揺れている。

 魔界は今日も(ある意味)平和だった。


 *****


 重厚な本を開くと、妹の翠が好奇心を受けて煌いた。

 最近、エイミールは御伽噺に興味があって、人界の本を読んでみたいと言っていた。

 一もにもなく頷いたアルファーレンが取り寄せたそれは、如何せん、少女の手には大きかった。

 そこで、アルファーレンが読んで聞かせてやろうとしたのだが・・・。


 白雪姫。

 眠りの森の美女。

 人魚姫。

 親指姫・・・。


 しかしだ。


 アルファーレンは眉を寄せた。


 なんだ、これは。少女に読んで良いものなのか、どうなのか。


 だいたい。


 継母に殺されかけた娘の話。しかも王子は死体フェチ・・・エミーは実の母に殺されかけた事がある・・・却下。

 悪い魔女に魔法をかけられて、眠りにつく?しかも百年だと?・・・却下。

 海の藻屑?・・・話にならん。

 ねずみのお嫁さん・・・? 異種族姦か。子供の御伽噺とは思えんな。却下。


 「にいさま、にいさま、どんなお話ですか?面白そう?」


 興味深々で覗き込んでくる妹には優しい笑顔を向けて、アルファーレンは考えた。


 物語に興味を持つのは良いことだ。情操教育にもなる。

 だがしかし。

 これはダメだろう。大体これが子供に読ませる本なのか?

 人界とは恐ろしいところだな。

 ・・・などと考えちゃったアルファーレン閣下。

 ぱらぱらと本を流し読み。


 ・・・うむ、まあ・・・この「おだんごぱん」ならばいいか? 動物との会話は面白かろう。


 「・・・お団子パンは飛び出して、坂を転がっていくと・・・」

 アルファーレンは、静かに読み聞かせる。

 真面目な顔で淡々と読み上げる御伽噺。その膝元で稀有な翠がきらきらと、彼を見上げている。

 時折交わす目線に微笑みあい、先を促す少女の瞳がかわいらしい。

 アルファーレンは常になく静謐な顔に優しげな笑みを浮かべた。


 ・・・。

 魔王閣下が御伽噺を読み上げている横では。

 そのあまりの似合わなさに、魔軍幹部が笑いをこらえて悶絶していた。

 冷徹冷酷と言われた孤高の魔王閣下が御伽噺・・・!!! あ、いかん! 笑うな、俺! 肩を揺らしても不味いぞ、俺! 

 笑ったら死ぬ! 凍って死ぬか、燃えて消えるか、明日はどっちだ?

 でもこれだけは言える! 笑ったが最後、瞬殺間違いなし! 


 (((((これはいったい何の拷問ですか?)))))


 ・・・熊にあって舌先三寸逃げ出して、うさぎにあってまた逃げて、最後に利口なきつねに出会い、まんまと食べられてしまった「おだんごぱん」・・・ふん。詰めが甘いのだ、等と考えていたが、表には出さずにエイミールを見た。


 ・・・ふかふかの、ほかほかの柔らかいからだ。それは食べたいだろう。空腹ならば尚の事。


 食べ頃まで待てるはずなどないのだから! しかも逃がしてしまうなどありえんな!


 「あにうえー。眼がちょっとコワイヨー」

 と、アマレッティの突込みが入るも無視。


 食べ頃、齧れば甘いか、それとも蕩けるか。

 ・・・口にしたい。

 流し見るは愛しい妹。百戦錬磨の彼が流し見れば、どんな高嶺の花ですら、恥じらい落ちると言わしめたその流し目にも、妹は動じる事はない。

 切ない色気を伴なった、誘いも露な眼差しなのに、頬すら染める気配もない。

 ・・・ああ、口づけたい。

 口づけて、堪能し雫を啜り上げて飲み干して。その唇は甘いのか?

 紅いそれはベリーの様か、それとも堅い果実のようなのか。

 喉元はどうだ。

 柔らかな心臓のその音は? 早鐘打つか、混乱するか?

 翠に見入って放さない青銀の眼差し。

 

 齧りついて嘗め回し、呼吸を奪い、目線を奪い、心を縛り、身体も思考もすべて私の物に。


 「・・・貴様、欲望が見えておるぞ・・・」

 呆れた顔でリアナージャが戒めるが、それにも沈黙で答えるアルファーレン。


 むう。余程煮詰まっておるようじゃあ。とはリアナージャの弁。


 わあ、狼もかくやな眼差しだねぇ。とはアマレッティ。


 甘い果実はまだ青い。急ぎすぎるなと留め置いて。

 リアナージャが少女に向けて言葉をかけた。

 「エミー。お茶を入れてくれんかのぅ。冷たく冷やしたアイスティーが良い」

 「あ、俺もー。爽やかなのがいいな」

 「はい! にいさま、お話面白かったです。ありがとうございます!」

 そう言って、エイミールは駆けていった。

 どうやら大変気に入ったらしい。

 かすかに聞こえる歌は、「粉箱ごしごしかいて、集めて取って」だ。

 「そのうちパンを焼くとでも言いそうだなあ・・・」

 その様子を思い浮かべたのか嬉しそうにアマレッティ。

 「ふふ。カワユイのぅ。おだんごパンか。じゃが、その前にアルファーレンに食べられてしまいそうじゃあ・・・のぅ、あまり無体はするでないぞ」

 欲望のままにエミーを引き裂いたら、如何なわらわとて許さんぞ。

 リアナージャの恫喝にも、アルファーレンは顔色一つ変えずに言った。

 それは、宣言であり、決定事項の・・・。

 「・・・あれは私のものだ」

 吐息も呼吸も微笑みも涙も命もすべて。エイミールを形どる物は一片残らず私のものだ。

 ほかの男になどやらない。

 成人するまで私以外の男に目を奪わせないように、この私が心配こころくばるのだからな。

 ほかの男に目移りなどさせるものか。

 

 「やれやれ、エミーも厄介な男に惚れられたものよのぅ・・・」

 「ぐあああ、でたよ。兄上の独占欲ー。エミーが聞いたら引くぜ、絶対!」

 「・・・心配無用」

 厄介だなどと心に浮かぶ事もないほどに、愛してみせる。

 絡め取った獲物は離さない。

 罠だなんて思わせないほどに愛してみせる。

 あの翠に映る男は、過去も未来も現在も、ただひとりで良いのだから。

 

 からからとワゴンの音が聞こえてきた。

 エイミールの入室を知らせるノックが響く。

 アルファーレンは青銀の眼差しをドアへ向けた。

 ・・・扉が開かれ、金の髪が揺れて煌く。

 愛しい翠が優しく微笑んだ。


 「にいさま、お茶が入りました!」

最後に、如月様、美麗なイラストをありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ