如月ゆすら様に感謝します!
この秀逸なイラストは、あの如月ゆすら様のお手製ですー!
さくら嬉しくて踊りました。
何たって兄さんが麗しいんです。しかも限定一名にだけ見せる優しい眼差しなんですよ、皆様!
これでご飯いただけますな。
うまうまと、堪能し稚拙な文を付けてみるも・・・アルバム設定の方が良かったかな・・・とか。思っている次第・・・。
青銀の髪、青銀の瞳。冴え冴えとした美貌の魔王のピアスは翠。
金の髪、翠の瞳。柔らかな印象の少女を飾るリボンは誰かさん指定の青銀、ドレスもそれを模したもの。
・・・誰かさんの無言の独占欲を感じさせるそれを前に、魔軍幹部は沈黙した。
何か言ったら粛正される。死にたくないし、野暮な事は言いたくない。
それに、上目や横目で垣間見る少女はいつも、麗しい。
その装いが誰の思惑で、誰の意向か、なんかは関係ないのだ。
少女が麗しく微笑んでくれるなら! ついでに微笑みながらお茶を差し出してくれるなら!
魔王閣下の無言の威圧感も、アマレッティ様の有閑ぶりも、リアナージャ様の下僕ごっこも。
乗り越えて見せる! 乗り越えられるとも!
魔軍幹部の意気も上る。当然だ。
(((((ああ、嬢様、今日も可憐だ・・・)))))
魔王幹部の頭上に出現したお花畑・・・。余人には見えないその花は魔軍幹部の頭で咲いて揺れている。
魔界は今日も(ある意味)平和だった。
*****
重厚な本を開くと、妹の翠が好奇心を受けて煌いた。
最近、エイミールは御伽噺に興味があって、人界の本を読んでみたいと言っていた。
一もにもなく頷いたアルファーレンが取り寄せたそれは、如何せん、少女の手には大きかった。
そこで、アルファーレンが読んで聞かせてやろうとしたのだが・・・。
白雪姫。
眠りの森の美女。
人魚姫。
親指姫・・・。
しかしだ。
アルファーレンは眉を寄せた。
なんだ、これは。少女に読んで良いものなのか、どうなのか。
だいたい。
継母に殺されかけた娘の話。しかも王子は死体フェチ・・・エミーは実の母に殺されかけた事がある・・・却下。
悪い魔女に魔法をかけられて、眠りにつく?しかも百年だと?・・・却下。
海の藻屑?・・・話にならん。
ねずみのお嫁さん・・・? 異種族姦か。子供の御伽噺とは思えんな。却下。
「にいさま、にいさま、どんなお話ですか?面白そう?」
興味深々で覗き込んでくる妹には優しい笑顔を向けて、アルファーレンは考えた。
物語に興味を持つのは良いことだ。情操教育にもなる。
だがしかし。
これはダメだろう。大体これが子供に読ませる本なのか?
人界とは恐ろしいところだな。
・・・などと考えちゃったアルファーレン閣下。
ぱらぱらと本を流し読み。
・・・うむ、まあ・・・この「おだんごぱん」ならばいいか? 動物との会話は面白かろう。
「・・・お団子パンは飛び出して、坂を転がっていくと・・・」
アルファーレンは、静かに読み聞かせる。
真面目な顔で淡々と読み上げる御伽噺。その膝元で稀有な翠がきらきらと、彼を見上げている。
時折交わす目線に微笑みあい、先を促す少女の瞳がかわいらしい。
アルファーレンは常になく静謐な顔に優しげな笑みを浮かべた。
・・・。
魔王閣下が御伽噺を読み上げている横では。
そのあまりの似合わなさに、魔軍幹部が笑いをこらえて悶絶していた。
冷徹冷酷と言われた孤高の魔王閣下が御伽噺・・・!!! あ、いかん! 笑うな、俺! 肩を揺らしても不味いぞ、俺!
笑ったら死ぬ! 凍って死ぬか、燃えて消えるか、明日はどっちだ?
でもこれだけは言える! 笑ったが最後、瞬殺間違いなし!
(((((これはいったい何の拷問ですか?)))))
・・・熊にあって舌先三寸逃げ出して、うさぎにあってまた逃げて、最後に利口なきつねに出会い、まんまと食べられてしまった「おだんごぱん」・・・ふん。詰めが甘いのだ、等と考えていたが、表には出さずにエイミールを見た。
・・・ふかふかの、ほかほかの柔らかいからだ。それは食べたいだろう。空腹ならば尚の事。
食べ頃まで待てるはずなどないのだから! しかも逃がしてしまうなどありえんな!
「あにうえー。眼がちょっとコワイヨー」
と、アマレッティの突込みが入るも無視。
食べ頃、齧れば甘いか、それとも蕩けるか。
・・・口にしたい。
流し見るは愛しい妹。百戦錬磨の彼が流し見れば、どんな高嶺の花ですら、恥じらい落ちると言わしめたその流し目にも、妹は動じる事はない。
切ない色気を伴なった、誘いも露な眼差しなのに、頬すら染める気配もない。
・・・ああ、口づけたい。
口づけて、堪能し雫を啜り上げて飲み干して。その唇は甘いのか?
紅いそれはベリーの様か、それとも堅い果実のようなのか。
喉元はどうだ。
柔らかな心臓のその音は? 早鐘打つか、混乱するか?
翠に見入って放さない青銀の眼差し。
齧りついて嘗め回し、呼吸を奪い、目線を奪い、心を縛り、身体も思考もすべて私の物に。
「・・・貴様、欲望が見えておるぞ・・・」
呆れた顔でリアナージャが戒めるが、それにも沈黙で答えるアルファーレン。
むう。余程煮詰まっておるようじゃあ。とはリアナージャの弁。
わあ、狼もかくやな眼差しだねぇ。とはアマレッティ。
甘い果実はまだ青い。急ぎすぎるなと留め置いて。
リアナージャが少女に向けて言葉をかけた。
「エミー。お茶を入れてくれんかのぅ。冷たく冷やしたアイスティーが良い」
「あ、俺もー。爽やかなのがいいな」
「はい! にいさま、お話面白かったです。ありがとうございます!」
そう言って、エイミールは駆けていった。
どうやら大変気に入ったらしい。
かすかに聞こえる歌は、「粉箱ごしごしかいて、集めて取って」だ。
「そのうちパンを焼くとでも言いそうだなあ・・・」
その様子を思い浮かべたのか嬉しそうにアマレッティ。
「ふふ。カワユイのぅ。おだんごパンか。じゃが、その前にアルファーレンに食べられてしまいそうじゃあ・・・のぅ、あまり無体はするでないぞ」
欲望のままにエミーを引き裂いたら、如何なわらわとて許さんぞ。
リアナージャの恫喝にも、アルファーレンは顔色一つ変えずに言った。
それは、宣言であり、決定事項の・・・。
「・・・あれは私のものだ」
吐息も呼吸も微笑みも涙も命もすべて。エイミールを形どる物は一片残らず私のものだ。
ほかの男になどやらない。
成人するまで私以外の男に目を奪わせないように、この私が心配るのだからな。
ほかの男に目移りなどさせるものか。
「やれやれ、エミーも厄介な男に惚れられたものよのぅ・・・」
「ぐあああ、でたよ。兄上の独占欲ー。エミーが聞いたら引くぜ、絶対!」
「・・・心配無用」
厄介だなどと心に浮かぶ事もないほどに、愛してみせる。
絡め取った獲物は離さない。
罠だなんて思わせないほどに愛してみせる。
あの翠に映る男は、過去も未来も現在も、ただひとりで良いのだから。
からからとワゴンの音が聞こえてきた。
エイミールの入室を知らせるノックが響く。
アルファーレンは青銀の眼差しをドアへ向けた。
・・・扉が開かれ、金の髪が揺れて煌く。
愛しい翠が優しく微笑んだ。
「にいさま、お茶が入りました!」
最後に、如月様、美麗なイラストをありがとうございました。






