これ、何の話?
饅頭を食べようかと思った。
思っただけで、身体は動かなかった。
行為には常に理由が要る。
饅頭を食べる理由は見つからなかった。
むしろ、食べない理由のほうがいくつも浮かんだ。
のどに詰まるかもしれない。
詰まった場合、人は死ぬ。
死ぬ必要は、今日にはない。
そうして、何もしないまま一日が終わった。
退屈は静かに過ぎ、私はそれを見送った。
また明日が来るだろう。
明日になった。
もっとも、明日とは常に今日の別名である。
今日が来るたびに、私はそれを明日と呼んでいるだけだ。
饅頭のことを思い出す。
中身は何だろう。
粒あんか、こしあんか。
粒あんなら食べない。
私は昔から、こしあんを選ぶ人間だった。
理由はない。選んできただけだ。
それなら、この饅頭も食べない。
決断は、しないというかたちで下された。
明後日になった。
饅頭の賞味期限は今日までだった。
食べるべきだろうか、と考えたが、
「べき」という言葉は私を動かさない。
迷っているあいだは、散歩に限る。
そう決めたのも、いつだったか思い出せない。
夕方四時の公園。
子供たちの声がある。
世界は彼らのもので、私はただ通り過ぎる。
空はオレンジ色に傾き、
光は理由もなく美しい。
風が吹き、私はそれを受け取った。
家に帰った。
饅頭を食べた。




