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1 除名

お久しぶりです。

美味しいご飯を食べ歩かないTSヒーローものを書きたくなり、少しずつ書き溜めました。

 蛍の光は熱くない。

 身を焦がすわけではないが、見ている私たちはほんのりとした暖かさと、不思議と幻想的な美しさや明かりのある安心感が私たちの胸を打つ。

 でも、発光させられる成虫の蛍は口が退化し、夜露くらいしか飲めず、二週間しか生きられない。

 そんな蛍の一生みたいなヒーローの生活をして頑張っていたら、ヒーロー協会のヒーロー名簿除名通知が届いた。

 封筒にたった一枚の安っぽいA4三つ折りの紙に数行、理由が書かれていた。

 端的に言えば、ヒーローとして相応しくない、という内容だ。

 もう6年近く、人を守るために戦い、何度も命を賭けた。誰かの家が壊されぬように、誰かの笑顔が曇らぬように、ただそれだけのために。

 でも、ただ一度の問題行動で、それはなかったことにされるのだという。

 変身の力を失ったわけではない。いつも通り変身は出来る。しかし、ヒーロー協会からのヒーローとしての報酬や待遇などは得られなくなる。そういうのを求めない一部の野良のヒーローもいるが、私はヒーローとしての活動に意味を見出せなくなった。

 自分の選んだ道をただ否定された、それが私自身が驚くほど不愉快だった。


 馬鹿くさい。


 私は声にならない声を呟き、安っぽいA4の紙をくしゃりと丸めてゴミ箱に投げた。


ーーー


 ヒーロー協会から当てがわれていた借家から引っ越した。親身になってくれていた馴染みの協会職員の方何人かが引っ越しの手伝いに来てくれたが、あまりの荷物のなさに言葉を失っていた。思っていた以上に楽すぎたんだろう。

 実は引っ越しはいつも考えていた。雪かきが面倒で雪のない田舎、郊外に住みたいと日頃から思っていたのだ。だから、ちょうど良かった。

 引っ越し先について煩雑な事務手続きがようやく終わり、気晴らしに町を散策してみた。

 都会のように数えきれない階層のビルが樹木のように生えているような街並みはなく、高くても3階建ての役場や学校、マンションやアパートは少なく、一軒家の多い住宅地に、大きいスーパーや家電屋さんがある、田舎の中でも人口がやや多い街並みだ。

 気晴らしのつもりで出た散策だったが、歩き回るとすぐ疲れてしまった。ヒーローの変身時の体力が標準だと思っていると解除した後にこんな風に疲労困憊で酷い目に遭いやすくなる。私はすぐ目の前にあった公園のベンチに座った。

 田舎は怪人の発生が少ないので、公園で遊ぶ子供の姿が目に映る。

 子供の遊ぶ姿を見ると、その子供の姿が少しずつ上書きされてやがて自分自身の小さい頃の姿となり、自分自身の子供時代を思い起こされる。

 私は2回の子供時代を経験した。

 そう、私は転生したのだ。

 1度目はヒーローのいない世界、怪人の現れない世界でよくいるサラリーマンの男性として生き、不摂生がたたって早死にした。

 2度目は、この世界に生まれ、人々のために戦うヒーローに憧れて、悔いのない人生を歩みたいと思い、ヒーローとして活躍したものの、ヒーローをクビになり残りの余生を生きる穀潰しが私だ。

 まあ、たいしてヒーローとしての才能があった訳ではない。

 ベンチに座っていると、転がってきたボールが足元で止まった。

 それを拾い上げたところで、駆け寄ってきた子どもたちが口にした言葉が、胸にちくりと刺さる。


「おばあちゃん、ボールこっちに投げて……おばあちゃんじゃない? おねーさん?」


「どっちでもいいよ、はい」


 私はボールを山なりに投げて渡した。

 私の艶のない真っ白な体毛は老人そのものにしか見えないし、疲れ切った顔は老けて見えたのだろう。それに前世の分の精神年齢もあるのだろう。

 まあ、真っ白な長髪の女性なんて、おばあちゃんだと思うだろう。

 まだこの肉体は20歳にもなっていないのに。

 家に帰ろうとし、ベンチから腰を上げるために杖に力を入れて立ち上がる。

 ずるりと手が滑り、前につんのめる。

 やばい、と思い受け身を取ろうと両手を地面に向けた時、傾いた体が止まり、他人の体温を感じた。


「おばあちゃん、大丈夫ですか?」


 ふわりと漂う優しい匂いが、淡い春の訪れを感じさせるようなものだった。

 声の主の方へ視線を向けると、高校生、いや中学生くらいの女の子だ。成長途中の細身の体に、悪いことなんて考えたことがなさそうな大きい二重瞼のタレ目の人の良さそうな顔、さらりと揺れる黒色のショートボブ。どこかの学校の制服、紺色のセーラー服を着ていた。

 こうやってこんな子に助けてもらったら、私が前世の時の頃なら勘違いして簡単に恋に落ちるね、絶対。


 私は感謝の言葉を告げる。その少女は、私の若々しいソプラノボイスを聴き、私の顔を覗き込み、慌てて頭を下げてきた。


「え? あの、ごめんなさい」


「大丈夫。さっきもそこで遊んでいる子供におばあちゃんと言われたところだし、本当に結構間違われるんだ」


 今度は滑らないように杖を握り込み、体を支えて帰路に向かおうとすると、


「何かお手伝いしましょうか?」


とその子は言ってきた。見ず知らずの人に優しい若い子もいるもんだ。


「いや、もう大丈夫だよ。その制服可愛いね。最近引っ越してきたから、どの制服がどの学校のかわからなくてね」


「この制服は豊川中学校の制服ですよ。私も赤いスカーフが可愛くて好きなんです」


「豊川中って……ああ、町立の」


「そうです。町立のです」


「何年生?」


「え?」


 少女は一瞬、不安そうな顔になる。それはそうだろう、自分の通っている学校と学年と聞かれたら、なんだこいつ? キモくね?、と思うだろう。前世のオッサン姿なら不審者通報待ったなしだ。

 それでも少女は一瞬だけ戸惑ったような顔を見せたけれど、それでもきちんと答えてくれた。


「……3年生です」


「それなら、私に敬語使う必要ないよ。タメだから」


「え? じゃあ同じ中学校に通っているの?」


 少女の大きな目がさらに大きく見開いた。


「引っ越しできたばかりだから、手続きが終わったら、ね。へぇー、そんな制服なんだ。まあ、でも、ほとんど保健室登校になるよ」


「保健室登校? どうして……あっ」


「普通の授業には体がついて行けそうにないからね」


「事故? もしかして怪人?」


「うん、怪人だよ。私、ヒーローやっていたんだけど、ヘマしてね」


 言ってしまった後に、言わなきゃ良かった、と思うことがよくある。今回もそうだ。話し始めると自己開示しすぎる癖、なんとかしなきゃなあ。


「ヒーローだったんですか!? ヒーローネームは?」


 少女がぱっと身を乗り出してきた。

 近くで見ると、透明感のある肌に、さらりとした髪。きっと素直でいい子なんだろう。


「名前は……ぶっちゃけ、無いというか……ごめん、あんまり強くないし恥ずかしいから名乗りたくない……」


 騒がれている私の呼び名を名乗ったら、今、悪評名高いで超有名なヒーローってバレて保健室登校どころか各方面から保健室襲撃されかねない。


「あっ……そうなんだ。実は、私、ヒーロー試験に合格して、研修が昨日終わって、明日からこの町でヒーローとして活動することになるんです」


 へぇー、この子がかぁー。どんなスタイルのヒーローかわからないけれど、いずれにしても、


「無理はしないでね」


 私は視線を杖に向けると、少女は、あっ、と声を漏らし、少しだけ間を置いて


「はい、頑張ります」


と力強く答えた。そして、少しためらって続けて声を出した。


「差し出がましいんですけど、ヒーローで強くなるためにしたことはなんですか?」


 それ、ヘマして杖つくような体になったポンコツヒーローだと説明した人に聞く?、と思ったが、ヒーローになりたての頃は、全てが不安だったし、先輩たちからあれこれ質問ばかりして指導をもらっていたよな。

 

「本当に参考までだけど、私は最後まで戦える力の温存、つまり持久力というかコスパかな、と思う。少し前と違って、応援要請をすれば、時間はかかるけど他のヒーローが来てくれるからね」


「どんな訓練をしていたんですか?」


 そうだなあ、と呟きながら、記憶の奥にある、先輩たちの半ば拷問めいた指導の日々を思い返す。思えば、あの訓練こそが土台になっていたのかもしれない。

 私は杖で地面に円を描いた。直径にして1メートルくらい。


「こんな訓練かな。あなた側のルールはサークル外の人が有効な一撃をサークルの中にいる人に入れること」


「へぇー、そんな訓練ですか?」


「試しにやってみる?」


「私がサークルの中ですか?」


「いや、私がサークルの中」


「え、だってその体じゃあ……」


「意外と難しいんだよ。まずは試してみて」


「本当に知りませんよ」


 少女は足元に転がっていた石を手に取りゆっくりと投げた。私はそれを杖のついていない手で払う。


「そんなんじゃ訓練にならない。もっと速く投げて」


「もう、本当に知らないんだから」


 同様の石を、振りかぶって投げた。速度はさっきの速さの5倍くらいの速さだ。それを私は手で弾く。弾かれた石が地面に叩きつけられ、パチンと音を立てて砂煙を舞わせた。うそ、と呟く声が弱々しく聞こえる。


「こんなんじゃあ、訓練どころか体験にもならないでしょ。変身して直接殴ってきて」


 少女は私の体を気遣ってか、変身せずしばらく近接の格闘攻撃を恐る恐る繰り返すが、それを全て私は片腕で弾いた。

 私が、生身でこの程度なら……ねぇ?、と煽ると、少女はとうとうヒーロー変身した。彼女は変身すると、情熱的な赤を基調としたバトルスーツを身に付けていた。前世の世界の戦隊モノの特撮みたいにゴテゴテしているのに、動きやすそうだ。

 頭にはヘルメットみたいな仮面ではなく、サークレットが付いていた。

 黒色の髪は赤いメッシュが入っていた。赤色のヒーローとか、リーダーポジション、主人公みたいでいいなあ。

 変身した彼女の攻撃を私は変身せずとも使える技を使い、いなし続けた。

 時間にして、たった数分間だった。

 彼女は息を切らせて地面に這いつくばい、肩を上下させて息をしていた。

 そういうのを見て喜ぶ性癖の方にはたまらないシュチュエーションなんだろうけど、私はそういう趣向はない。

 けれど、頑張る人間の姿は、例え、泥だらけで格好悪い姿でも、胸を打つものがある。


「ハァハァ……うそでしょ……なんで変身したヒーローの攻撃を受けても大丈夫なの……」


「受け流してるだけ。それに、変身してなくても、ちょっとだけならヒーローの力を使えるから。それで身体を守ってる」


「ちょっとって……限界あるでしょ……?」


「私なんてまだ序の口。先輩方はもっと凄いし、現役のベテランのヒーローだって出来るよ。一撃必殺の技も大切だけど、時間を稼いだり、相手を疲れさせたり、連戦に耐えれるようになるのも大切。進んで使い捨てのヒーローになっちゃあいけない」


 使い捨てのヒーローか……本当に正義感が強いヒーローほど、そうなるんだよな。

 私の視界の奥に、懐かしいバトルスーツの少年、少女たちの後ろ姿が浮かんだ。かつての一緒に戦った仲間たちの……。


「今度はあなたがサークルの中に入って」


「えっ、今のを私がやるんですか?」


「最初だからもっと大きいスペースにするし、痛い攻撃はしないよ」


 私は体の内からエネルギーを集めて色のついた小さな玉を作り、少女に向かって飛ばし続けた。

 少女は、びりびりする!、痛くしないって言ったじゃないですか!、と嘆きながら玉を避けたり当たったりを繰り返した。


 息悶え悶えの倒れ込んだ少女に、自販機で買ったスポーツドリンクを渡すと、もらえないよ、と頭を横に振ったので、じゃあ今度ジュース奢ってと言って蓋を開けて渡した。少女は体を起こして、ゴクゴクと喉を鳴らして飲み干した。


「すごい……です……。私、ヒーローを舐めてました。ヒーローに認定されたらそれだけでも強いんだって……。変身すればなんだって出来るんだって。ここは……ゴールじゃなくてスタート地点なんですね」


「そうだね。日々の訓練が大事だね」


「この訓練ってどんな効果があるんですか?」


「怪人を一撃だけで倒せるならそれでもいいんだけれど、相手が強くてチームで戦わないといけない時とか、自分と同じくらいの力で戦闘中の駆け引きが必要とか、相手が自分より強くて時間稼ぎして仲間を待たないと行けない時とか、そんな時に的確に相手の攻撃を避けたり、ガードにエネルギーを使い果たさないようにより精密に、より効率的に受け流すことが重要なの。それが出来れば、その力の使い方が攻撃でも活かせる。まあ、先輩達の受け売りかな」


「へぇー。私はとにかく全力で街の人を守って、怪人を倒せ、みたいなことを研修で勉強しました」


「まあ、それは間違いではないけど……明日もくる?」


「はい?」


「明日も訓練するんでしょう? この田舎なら指導してくれるベテランも居ないんでしょう?」


「は、はい。でも、いいんですか?」


「やることがなくて暇だからね」


「じゃあ、師匠と呼ばせてください!」


 彼女は、疲れがにじむ身体とは裏腹に、屈託のない笑顔を向けてきた。若いって、すごいな。素直にそう思った。


「師匠か……。まあいいや、そういえば、君の名前は?」


「佐藤桜です。ヒーローネームは……クリムゾンチェリーです」


 少女は名前を名乗った後、若干恥ずかしそうにヒーローネームを名乗った。ヒーローネームって中二病感漂うから名乗る時、恥ずかしいよね。

 本当に誰が考えてんだろう。

 私用のあまりにもセンスのないヒーローネームを伝えられた時は断り続けた。そのうち、本当に私のヒーローネーム自体なしになった。いや、そういうんじゃなくてさ、なんか扱い酷いなあと思った。そのうち、職員さんや先輩方は私を、ななしちゃん、だなんて笑って名前を呼んできたなあー。


 佐藤桜とここで放課後に会う約束をして、別れた。


ーーー


佐藤桜


 新学期の朝、通い慣れた通学路の街路樹が、ほんの五分ほど桜の花を咲かせていた。

 まだ風は冷たさを残していたけれど、春が確かに来たのだと、そっと背中を押されるような気持ちになる。

 小学校時代からの友達が変わらず同じクラスにいて、いつも通りの新学期を迎えた。ずいぶん前に何人かは居なくなってしまっているけど。

 先生も、教室の空気も、何もかもが『いつも通り』だった。

 だけど、私はもう『いつも通り』のままじゃいられない。

 春休みの間にヒーローとしての研修を終えて、今月から正式に、怪人駆除の任務に就くことになったのだから。


 数ヶ月前にクラスメイトの坂本真一君も同じくヒーローに任命されて、地元では田舎にヒーローが2人も配置されたと話題になっている。

 元々、こんな田舎にヒーローが配属されること自体が珍しかったから、どうして二人も?、と地元の人たちのちょっとした話題になっていた。

 でも、私自身は、誰かの関心を集めたくてヒーローになったわけじゃない。

 ただ、ほんの少しでも、誰かを守れる力を持てたならと思っていただけ。

 ……けれど、私の心の奥底には、淡い桃色の桜が咲く春には似つかない、澱のような感情があった。


 三年前、怪人によって両親を亡くしたあの日。あの時、ヒーローの到着は遅すぎた。

 ヒーローに掴み掛かり、泣き叫び、姉に引き剥がされるまで、力を緩めなかった。

 どうしてもっと早く来られなかったのか。子どもだった私には、それがずっと、ずっと割り切れない疑問だった。後に知った。ヒーローの数が足りず、広いエリアを一人でカバーしていたからだと。

 でも、知識と納得は別物で、心が許すにはまだまだ時間がかかっていた。


 ヒーローの短期研修所では、私は劣等生だった。理論も実技も、何もかもが周囲より劣っていた。強い同期の背中を見て、できない自分を恥じて、訓練の最中に仮想怪人の一体も倒せず、悔しさでトイレの個室に閉じこもって泣いたこともある。


 それでも、ここまで来た。ヒーローになると決めたから。両親のような犠牲を繰り返さないと誓って……。




 放課後、私は学校から帰っていると、家の近くの公園で、白髪のお婆ちゃんを見つけた。その姿は、少し不気味で、ベンチに座った白髪の生えた骸骨のように見えて、他の風景からぽつりと浮かび上がって見えた。

 その違和感のせいだろうか。

 私はつい、彼女から目を離さずにいた。そのせいで、その老婆が杖から手が滑り、前のめりに倒れようとしていたことに気が付いた。

 私は考えるよりも体が先に動いていた。

 その老婆の身体を支えると、


「あ、ごめんなさい。ありがとう」


と同年代くらいの女の子の声が老婆の口から発せられたように感じた。

 驚いて、私は老婆の顔を見つめると、老婆ではなく、私と同じ中学生くらいの女の子で、儚い雪のような真っ白の髪やまつ毛をしていた。顔立ちは日本人だろうけれど、特殊な髪の毛の色が妙に似合っていて、ハーフなのかクオーターなのか、ただただ不思議で綺麗な少女だった。


 一瞬、もしかしたら怪人かも、と思ったけれど、怪人には特殊なオーラみたいなものが出ていて、ヒーローならばすぐに気がつくらしい。

 全然そんな違和感もない。本当に不思議な子だ。


 その子は元ヒーローだった。

 雑魚ヒーローだったから、とヒーローネームは教えてくれなかった。

 私にはとてもそうは思えなかった。

 だって、彼女の動きはあまりにも鮮やかだった。


 昔にしていたという訓練を試させてもらったら、本当に手も足も出なかった。

 その子は左腕一本でほとんどの私の動きを封殺してしまうのだ。しかも、右足は不自由だし、右手には杖をついていて……。その上、ヒーローに変身した私をヒーローに変身せずに、それはもう小さい子供を相手にするように完封されたのだ。

 あれはもう、本当に、遊ばれているような感覚だった。

 悔しかったけれど、不思議と嫌な感じはしなかった。


 田舎のヒーローには指南役のヒーローがほとんどいない。

 だから、研修に行ったり、動画を見て勉強したり、坂本君となんとなくの訓練するしか方法はなかった。劣等生の私はとても歯痒い気持ちと、ひどく焦る気持ちがあった。

 だけど、この子なら、この子に教わることができたら、私は強くなれる。今よりも、ずっと。そして、誰一人被害を出させず、本当の意味でのヒーローになれる。


 そう思った私は、彼女のことを『師匠』と呼ぶようになった。

 それが照れくさかったのか、彼女はほほを掻いていた。


 春の風が、彼女の白い髪をふわりと揺らした。まるで、淡雪のようにすぐにでも消えてしまいそうだった。

 それが、『師匠』との出会いだった。

読んでいただきありがとうございます。

感想等あれば聞かせていただけると助かります。

誤字脱字もあれば教えてくださると助かります。


1話の後半の佐藤桜の回想などを書き直しました。

矛盾はしないのですが、5話以降でより話がスムーズに頭入るように、内容を書き足してます。

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