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不協和音

ダンスレッスン日、穂香はタオルで汗を拭いながらスポーツドリンクを流し込む。


「谷口」


呼び掛けられ、スポーツドリンクのキャップを閉めて鞄に仕舞ってから振り返る。


「…はい、何でしょう宮司先生?」


ダンスインストラクターの宮司真奈に呼び掛けられ、穂香は立ち上がる。


「ここ最近調子良いわね。動きのキレは前から良いし、上手かったけど表現力がイマイチ足りなかった。でも、最近は表現力も付いてきてる。もう少し自分を表現出来ればプロとしてやっていけるわ。このまま精進なさい」

「…ありがとう……ございます」


宮司は穂香にそう言うと他の候補生の子達へとアドバイスを告げていき、今日この日明確に褒めたのは穂香がだけだった。


「それでは失礼します」


穂香はレッスン服の上にジャンパーを羽織り、レッスン室を出る。穂香はジャンパーのポケットに手を突っ込んでポケットの中にあるスマホを手で遊ばせ、鼻歌を奏でながら階段へと向かい歩いていると階段脇に同じアイドル候補生の黒髪ツインテールの女の子が壁に背を預けており、穂香に気付くと彼女の前に立ち塞がる。


「なんか用?紗倉さん」

「これな~~んだ?」


そう言って彼女が見せたのは穂香と涼真が仲睦まじい様子が写ったスマホだった。


「…隠し撮りなんて趣味が悪い」

「そんな事を言って良いのかな~?こればら撒かれたくないよね~~?彼氏とのしゃ・し・ん♪」

「別に彼氏じゃない。只の友達」

「そうなんだ~。でも、これを見た人はどう思うかな~~?美波、谷口さんのこんな笑顔、初めて見たなぁ~~♪」

「別に彼氏じゃなくても笑い掛けるでしょ。笑い掛けて彼氏なら、握手会に参加するファンの方は紗倉さんの彼氏になるけど?」

「はっ…?」


猫撫で声の可愛らしい声を発する喉からドスの利いた低い声が出る。


「あん…なっ…キモヲタが、美波の彼氏なんて有り得ないし…!美波の彼氏に相応しいのはレン君だけだから!!」


本気でキレている形相で穂香は睨まれるがどこ吹く風とばかりの表情でポケットからスマホを取り出す。


「ふ~ん。あの男性アイドルの……好きなんだ。ファンが聞いたらどう思う?」


ピコンッとスマホから鳴ると先程の会話が再生される。


「なっ!こ、これ…っ!いつの間に!」

「もし誰かに写真見せたら、この音声流すから。それじゃあ」


穂香は美波の隣を抜け、階段へと足を踏み入れる。


「ちょっと待って消してよ!」


美波は穂香の肩を掴んで止めるが穂香は彼女を撥ね除ける。


「嫌…」


穂香はそう言って階段を下りて行った。建物から外を出て夜空を見上げる。


(あの子が脅迫するようバカだったから助かったけど、このまま彼と会い続ければまた同じような……いや、勝手に写真をばら撒かれる可能性もある。……もう、この関係は続けられない。彼との関係はもう………ーー

「終わりにしよう」


穂香はそう涼真へ告げた。涼真は暫く黙り、悲しげに笑った。


「そういう事なら仕方ないですね。じゃあ、俺達の関係は今日で終わりですね」


涼真は悲しさを誤魔化す為に立ち上がり背筋を伸ばす。


「そう…ね…」


穂香は声を震わせながら頷いて、ベンチに置いた鞄を持つ。


「それじゃあ。私はもう行く。…元気で」

「谷口さんも…お元気で」


そうして、穂香は涼真に別れを告げ、二人の毎週話し合う関係は唐突に終わりを迎えた。穂香は空を仰ぎながら鼻歌を奏でる。


「…あれ…この曲って……こんな音だったけ…?」


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