苦いチョコと甘いカフェオレ
「…さて…何をお話をしようか…」
穂香は何を喋ろうかと悩んで鞄の中からチョコの箱から包装に包まれたチョコを取り出し、包装を箱の中に突っ込み、チョコを口へと運ぶ。
「チョコ、好きなんですね」
「ん~…まぁ…」
穂香は返答にならないあやふやな言葉を吐き、チョコを取り出して、涼真へと渡す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
涼真は包装を剥がしてポケットへと入れてチョコを食べ、ビクッと身体を跳ねさせ目は見開いた。
「不味っ!というか苦い!」
「フッ……!フッ…」
穂香は涼真から顔を背け、笑いを必死に堪えながら肩を震わせる。
「谷口さん…。わざとですね…」
「フフッ…。ごめんなさい。わざと…」
穂香は鞄から黄色の缶のカフェオレを涼真へと差し出す。
「お詫び」
「…どうも、ありがとうございます」
涼真は不満げな顔をしながらも受け取り、蓋を開けてカフェオレを飲み、驚いた。
「いつもよりミルク感が強く感じる…」
「でしょ。カフェオレがより美味しく感じるからこの組み合わせが好き」
穂香も自分のカフェオレを取り出して、チョコを一つ口の中へ放り込んでからカフェオレを口にすると彼女はリラックスした様子で微笑む。
「…実は前に先輩にもこの苦いチョコを渡したな…。その時は意地悪なつもりはなくて、頂戴と言われたから上げたら驚愕されて、それで……いや、これはいいか」
「…?」
「まぁ、そんな時もあったなと思って……悪戯してみた」
「出会って四回目でしますか?悪戯」
涼真は訝しげにジーッと白い目を穂香へと向ける。
「別に誰もかれもしない。あんたが良い人そうだからした。ごめんなさいって言えば許してくれそうだし」
「まぁ…これ位の悪戯じゃあ怒りませんけど…」
「だと思った」
そう言って穂香は悪戯っ子みたくニヒルに涼真へと笑い掛けた。彼女の笑顔は悪女のような蠱惑的で涼真は不意にドキッとする。
「…そ、それにカフェオレも貰いましたし。チャラにしますけど……もう悪戯は勘弁ですよ」
「分かった。なるべくしないようにする」
「それは絶対と約束して下さいよ」
「絶対は約束出来ない…」
「ちょっと…谷口さん!勘弁して下さいよ…!」
「フフッ…。ごめんなさい」
涼真は困った表情で、穂香は楽しげな表情で笑った。それからお気に入りのチョコのスイーツの話をしているとスマホのタイマーが鳴り、今週の雑談タイムは終了した。
「それじゃあ。今週はこれで終わり。じゃあね佐伯」
「ええ。また来週。谷口さん」
二人は階段を共に下りて反対方向へ歩いて別れた。




