アイドル候補生は支えて欲しい
思わぬ登場に穂香は言葉が出なくなり、何を言えば良いか困っていると涼真は穂香の隣に座る。
「叔父さんが……いや、店長が……ピーク、過ぎたから……行って来いって言って……それで…今…来た」
「……そう」
涼真は息を整える為に黙り、穂香も言いたい事があるのに言葉は息になり、音が鳴らない。音にしてしまえば今のこの時間が終わってしまう気がして言う勇気が中々出ず、気まずい空気が流れる。穂香はチラッと涼真の顔を見ると涼真も穂香を見ており目が合い、びっくりして顔を咄嗟に逸らす。けど、このまま何もしないのは自分が望む結果は得られない。穂香は言葉が出ないのならと涼真の手の甲の上に手を載せる。勢いで手を載せたけど、拒否されたらどうしようと心臓がドキドキと脈が早打つ。
「私、アイドル…辞めた」
「…そう、なんだ」
「アイドルは……私には必要なかった。アイドルじゃなくても……アイドルのように成れるから。アイドルになる必要はないって……本当に必要なものに気付いたから…辞めた」
「………」
「私、涼真が必要……。だから…私の事、支えて欲しい。一緒に……居てくれる?」
穂香は涼真に聞く。不安で泣きそうになる。今までにないくらい緊張して辛い。早く返事が欲しくて強く彼の手を握る。だが、その手は振り払われる。
(ああ…駄目か。それはそうだ。私が勝手に切って捨てたんだ。今更よりを戻したいなんて虫が良い…)
そう思って立ち上がろうとすると涼真は穂香の手を恋人繋ぎで繋ぎ直す。
「俺も一緒に居たい。もっと話したい。もっと同じ時間を過ごしたい。だから……宜しく御願いします」
「…ええ。喜んで」
二人は笑い合い、肩をくっ付けて並んで座る。
「あ、そう言えば……私の動画、見てくれた?」
「…見たよ。だから、会いに行こうとは思ってた。でも、まさか会う前に会えるなんて思わなかったけど…」
「…そっか…。良かった…届いて」
「うん…まぁ…届くよ。バズってたから」
「そう。バズって………ん?バズって?バズってるの、あの動画…?」
「知らなかったの?」
涼真か自身のスマホで動画の良いね数とリツイート数を見せと、穂香は大きく目を見開いて驚いた。
「はっ…?良いね数…十万?リツイート数が四万?しかもフォロワーが百倍に増えて三十万超えてる…」
「それに場所の考察もされてたから、その盛り上がりもあって余計ね」
「だからあんな人が居たんだ……」
「そう。だから、暫くここは二人でゆっくり話す事は出来なくなる。それで…提案なんだけど……。これからは互いの家で話さない。手始めにウチ、来て欲しい」
「…分かった。良いよ。貴方となら……きっと何所でも楽しいから」
二人は肩を寄せ合い歩く姿は背中からでも楽しそうなのが容易に見て取れ、長い道でも笑い合って共に歩いて行った。芸能界という果ての無い旅も、人生という旅路も二人一緒に、何所までも…。
~fin~




