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大事なもの

「…編集完了、これで……投稿」


穂香は一息吐くとベンチに背を預ける。


「これで……届けば良いな」


そうして穂香は一度目を瞑り、母親に怒られる覚悟を決めてからベンチから立ち上がった。


「あ、穂香ちゃんSNS投稿してる!良かったぁ~……無事だったんだ~」


女性が通知から穂香のアカウントへと飛び、投稿内容を見る。


「…動画?それにタイトル…『同じ場所、同じ時間で待ってる』?どういう事?」


女性はポチッと押して動画を再生した。


穂香は次の日に風邪を引いた。母親から怒られたが、弱り目だったからかあまり厳しくは怒られなかった。けれど、穂香の体調不良は涼真に動画が届くか、願いが叶うかという不安からだった。体調不良は二日で治ったが学校へ行く気にはなれず、その週は学校を休んだ。


そして…土曜日、穂香は劇場へと向かいプロデューサーの元へと近付いた。


「ああ、谷口さん貴方…」


穂香はプロデューサーが何かを言う前に封筒を押し付ける。


「私、辞めます。御世話になりました」

「えっ?」

「それでは私はこれから用事があるので」

「ちょっ…ちょっと!!谷口穂香さん!!待ちなさ…」


プロデューサーが呼び止める前に穂香はエレベーターへと乗って、既に一階へと下りていた。


穂香は用事を済ますと何時もの公園へと向かっていたのだが……何故か人が沢山居てゆっくり出来ないと近くのお食事処へと避難した。


「一人です。席は何所でも」

「はい。此方のカウンター席へどうぞ」


穂香はカウンター席へと案内され、座るとメニュー表を手に取り、日替わり定食が目に入った。


「すいません。注文お願いします」


そう言って視線を上げると目が合った、涼真と。


「「え…」」


まるで時間が止まったように見詰め合っていると、涼真は背中が叩かれる。


「涼真!注文を聞きなさい!」

「あ……!は、はい!すいません!ご注文をどうぞ!」

「…日替わり定食、お願いします」


日替わり定食を食べ終わると、穂香はチラッと涼真を見る。


「…勝手なのは分かってる。でも…来て欲しい。待ってるから」


穂香はそう言って席を立ち、会計をして去って行った。


穂香が公園へと戻ると昼時だからか人は居なくなっていた。ベンチへと座って時間を確認する。時刻は十二時半。暇だなと思いながらスマホを操作し、音楽を流す。長い時間が経ったなとスマホで時間を見るとまだ十分しか経っていなかった。それを十分毎に何度も繰り返し、やっと一時間経つ。


「十分ってこんな長かったんだ…」


早く会いたい。早く会って話したい。十分だけじゃなくて沢山…沢山の時間を掛けて、週一じゃなくていっぱい話したい。早く……。


「早く、会いたい」


そう呟くと目の前の階段から荒い息を吐き、汗を額から流した涼真が現れた。


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