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要らないものと必要なもの

プロデューサーからの言葉に穂香はショックを受け、彼女の顔から色を失う。


「無茶して身体を壊すのなら貴方はアイドルに向いてない。……入院中に考えて。貴方に取って要らないものと必要なものを。貴方が無茶せずに貴方が幸せになる方法を…」


プロデューサーは椅子の下に置いてある鞄を持ち、立ち上がる。


「直ぐに退院するでしょうけど。その短い時間、自分の為に使いなさい。それではね」


プロデューサーが病室から出て行くとすれ違いで穂香の両親が彼女の元へと足早に駆け寄った。


両親が帰宅し、穂香は枕に頭を沈めて窓から夜空を見上げる。


「必要なもの…か…」


目を瞑ると色んなものが頭の中で思い浮かぶ。好きな曲、憧れているアイドル、ダンスに歌、母親と父親、同じアイドル候補生の子達、学校、クラスメイト、そして…涼真。


「…離れない、頭から。涼真の事が……如何しても…。でも……アイドルであろうとする限り…一緒には、居られない…」


と、穂香は考えの途中で眠ってしまった。


世界は日焼けした写真みたく色が惚けていて、目の前のテレビの中は昭和の音楽番組の映像が流れており、一人のアイドルに目を留める。


歌も雰囲気も格好良く、私は初めて見惚れるという感覚を覚えた好きとは違う感覚。初恋の男の子や、服とかメイク、綺麗な景色、美味しい料理、どれもが色褪せて感じる程にアイドルというものに焦がれた。


「涼真の事は…」


好き…という気持ちは湧かない。見惚れたなんて思いもしない。けど………話すのは楽しかった。癒された。気兼ねなく笑えた。こんな時間がずっと続けば良いな……続くんだろうなと何となく思っていた。


「ああ…そうか…」


失ってようやく気付いた。私はあの時間が大切で宝物であったと。涼真とずっと一緒に話していたかったのだと分かった。


穂香はハッと目を覚ます。天井は見慣れた天井、周囲を見渡せば自分の部屋だった。


「…ああ、そういえば昨日退院したんだった…」


穂香はパンッと両頬を叩き、靄が掛かっていた頭が晴れる。


「よし…!」


穂香は立ち上がると動きやすい服へと着替え、スマホを持って部屋から勢いよく飛び出して玄関へと向かい、急いで靴を履いた。


「ちょっと穂香!貴方何所行くの!!?退院したばっかりなのよ!!!」

「ごめんお母さん!!説教は後で聞く!!」


そうして穂香は公園へと向かい、いつも二人で話していたベンチへと辿り着き、穂香はベンチの隙間部分にインカメラで録画状態にしたスマホを差し込み、金属の骨組み部分へと置く。


「よし、やろう」


穂香は一人の男子に自分の気持ちを伝える為、踊って歌った。その姿は正に最高のアイドルだった。


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