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4話 【 理由 ② 】


 その日、勇者は困惑していた。

 魔王と名乗る女性が、三歩下がった後ろからずっとついてくる。

 いや、正確には勇者の横にいる事を警戒して後ろにいる。


 「ねぇ、スケベ君」


 更には今朝起きてからずっと勇者の事をスケベと呼ぶ。

 これに関しては昨夜の行いもあってぐうの音もでない。


 「お~い。 聞こえてないのかナ~。 寝込みを襲うとしたスケベく~ん」

 「いやいやいやいやッ! あれは襲うとしたわけじゃないからね?!」

 「じゃあ何?」

 「それは~その~・・・」


 正直に魔王である事を調べようとしましたと言えばどうなるか分からない。

 実際に彼女が魔王であれば、自分が魔王である事を調べようとした人間を殺す可能性だってある。

 その為には、調べようとした事も、()()()()()()()()()()隠さなければならない。

 結果、勇者は魔王から離れる事にした。

 魔王は勇者が王都にいると思っている。

 さらには魔王は何故か人間を殺そうとも殺してもいない。

 ここで敢えて魔王を見逃しても問題はないと判断した。

 だから宿を出てから勇者は旅を続ける事にした。

 そこで魔王とは分かれるはずだったのだが・・・


 「あ~やだやだ。 これだから男って生き物は。 少し油断した態度を見せると本性を現すんだから」

 「だからあれは別にそういうのじゃ」

 「じゃあやましい気持ちが何一つないと言い切れるの?」

 「・・・・」

 「無言は肯定しているのと一緒よスケベくん」


 どうしよう。

 何も言えないし言い返せない。

 

 「そ、それよりも君こそなんでさっきからついてくるわけ? 王都にいる勇者に用事があるんだろ?」

 「えぇ、だからついてきてるのよ」

 「・・・ン?」


 ()()()()()()()()()

 

 「あれ? え? な。なななな何を言って・・・?」

 「? え? ホントに気づいてなかったの?」

 「・・何がでしょう?」

 「最初っから気付いてたわよ。 君が勇者だって事は」

 「なにゆえッ?!」

 「なにゆえって、そりゃ魔王ですから」

 (魔王すげぇぇええええッ!!)


 まさか最初っからバレていたとは思ってもおらず勇者は唖然として固まってしまう。

 

 「それで? 勇者である君はこれから何処に行くのかな?」

 「えぇ、と・・ここ」


 勇者は真っ白な紙を取り出して指をさす。

 すると真っ白な紙はみるみると絵が広がっていき、地図を(えが)く。


 「おォ~。 便利な魔法アイテムね」

 「数少ない王都からの支給品の一つですから」

 「それで、この指をさしてる所は?」

 「3代前の勇者が築き繁栄させたと言われている国。 ユグドラシル」

 「あぁ、あの妙な結界が張ってある所か」


 魔王は思い出したような表情を浮かべると歩き出す。


 「それじゃあ行こう~。 私あんまり野宿とか好きじゃないのよね~」

 「それより待った」


 しかし、勇者は魔王を止めた。


 「なに?」

 「勇者とバレてるならもう直球で聞くけど、なんで魔王である君が勇者の旅に同行するんだ?」


 本来、魔王は勇者の宿敵。

 人類と魔族の争いが始まって以来、魔王と呼ばれる存在は名前だけで実在してある証拠が今までなかった。

 しかし、今目の前に魔王を名乗る女が目の前にいる。

 それならば魔王が勇者の旅に同行する理由が分からない。


 「君が勇者であるボクと旅に出る理由は、一体何なんだ?」

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