三話 【 理由 ① 】
人類と魔族が争いを始めた時期は、今では誰も分からない。
いつ、何処で、誰が、何故、争い殺し合い奪い合いを始めたのか分からない。
ただ分かる事は、御伽噺として語り継がれている大昔の神話時代。
人類と魔族は元々共存していた。
しかし、神からのお告げにより魔族は人類を滅ぼす悪しき存在だと天命を受けた。
それからすぐに魔族は突然として人間を襲い始めたという。
それが人類と魔族の争いの始まり。
つまり、結局は何が原因なのかは実際に分かっていない。
「確かに、なんで争い始めたんだろうな。 これと」
勇者が旅に出て最初に訪れる小さな村は、王都から近いという理由もあって多くの宿屋が経営されている。
本来、今までの勇者はこの村で最初に訪れた際は王都から支給された財産で村の一番高い宿屋に止まっていたらしいが、魔王と名乗る謎の女性のせいで勇者の財産はギリギリの状態である。
その為、今はこの村で一番安い部屋を一部屋借りているのだが、唯一ある部屋のベッドは魔王によって占領されていた。
「あれから酒を飲みまくり、挙句の果てには酔いつぶれてベッドを占領されるとは、流石は魔王」
かなり飲んではいたようだが、ベッドに寝かすと凄く綺麗な寝姿で気品のあるお嬢様だと思わせる雰囲気がある。
「これが、この人が魔王・・ねぇ」
どこからどう見ても 人間 だ。
少し違いがあるとすれば瞳の色が紅いという事だけで、他の特徴は美人であるという事くらい。
そんな彼女が魔族?
どう考えても王都にいた頃に戦った魔族とあまりにもかけ離れ過ぎている。
「・・・・ふむ」
とりあえず、彼女が本当に魔王であるか確かめなければならない。
上着の一番上のボタンが外れ、微かに見える豊満な谷間へと手を伸ばす。
(これは確認、これは確認、あくまで確認。 決して・・決してやましい気など・・・)
そして、勇者の手が魔王の上着に触れた時だった。
「何してんの?」
「・・・・」
真っ赤な瞳をした魔王と目があった。
「え~・・と、これは~・・」
「これは?」
「・・・なんだろう?」
「・・・・」
魔王のビンタが痛い事を僕はこの日、知る事になった。