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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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新たな目標

 貴族風の馬車とすれ違って間もなく、俺は港町ダリスへと到着していた。さりとて滞在予定はなく、食料とポーション類の調達くらいである。


「やっと着いたな。この海の向こう側にヒナがいるのか……」


 前世を通して、俺は大陸間にある大海を初めて見る。まだ見ぬ大地を想像しつつ、大海原を眺めていた。


 俺はヒナの近況について聞かされていない。実をいうと、俺たちが再会を果たすかどうかはヒナに一任されていたらしい。


 もしも再会したとして、ヒナは速やかに別れを告げるようにと指示されていたようだ。なぜなら、俺の目的である邪神竜ナーガラージの討伐に彼女は邪魔となってしまうから。同行できない旨の話をするだけと決まっていたと聞いている。


 最終的にヒナが決めたのは落ち合わないこと。彼女は自身の目的を遂げるための行動をし、結果として俺は邪神竜ナーガラージ戦に集中して挑むことが可能となった。


「先に邪神竜だ……」


 喫緊の問題は神格を得たというナーガラージ。女神たちの思惑通り、俺は集中できていた。雑念を封じ込め、使徒としての使命を果たせる状態にある。


 このあと俺たちは購入予定の品物を買い揃え、僅か数時間の滞在でダリスを後にしていく。

 発生した邪神竜は北街道を遥か東に向かった地点。俺は覚悟を決めて進路を東に取っていた。


「なぁ、お前ら邪神竜という魔物に勝てるか?」


 ここで俺はイーサとミアに問いを投げる。全ては彼女たち次第なのだ。魔王候補やネクロマンサーといったハイレアジョブと比べてどうなのかと。


『婿殿がいう邪神竜なんぞ知らんが、問題はないじゃろ?』

「マジで言ってんの? 俺は真剣に聞いているのだけど?」


 軽くいうイーサに俺は眉間にしわを寄せながら言った。本当に問題はないのだろうかと。


『その邪神竜はオスなのじゃろ? なら妾の敵ではない!』

「お前はそのオスに殺されたんだろうが……」


 イーサは当てになりそうにない。彼女は神格がない勇者タイラーに負けたという事実を既に忘れている。


「ミアはどうだ?」


 今度はミアに聞く。世界のバランスを大きく崩した災禍たる彼女はどう考えているのだろうかと。


『会ってみなければ分かりません。とはいえ私は自分自身より強い存在を見たことがありませんし……』


『なんじゃと、この駄肉が! 妾に殺されたじゃろうが!』


『不意打ちは実力通りではないのです! 無き者と正々堂々戦って負ける道理などありません!』


 なぜか言い争いに。かといって俺は二人の余裕を感じていた。


 既に二人とは支配契約を結んでいる。いざというとき、逃げ出すなんて叶わない。だとすれば、彼女たちは脅威に感じていないはず。これから邪神竜と戦うというのに、喧嘩する余裕があるのだから。


「何とか戦えるのかなぁ……」


『神格を持つといっても土着の神で信奉者もいないのでは、特別な脅威を感じませんけれど? 確かに格の違いはありますが、覆せないほどの差はないかと考えますけどね』


 俺が呟くと、ミアが答えてくれる。


 神格の有無は明確な差があったものの、ミアはそれが問題になるとは考えていないようだ。もっとも彼女は神格を持つ者と戦った経験がない。従って鵜呑みにするわけにはならなかった。


『妾は実際に竜神を倒しておる。霊体ならばまだしも、実体さえあれば婿殿でも何とかなるじゃろう。それに妾のジョブは魔王候補であるし、ただのサキュバスであった頃よりも、ずっと強いのじゃからな』


 イーサが付け加える。実体を持つことこそが弱点なのだと。彼女は俺でも戦えると予想していた。


「そういや、お前は竜神を倒したんだったな?」


『その通りじゃ。まあ竜神の奴は攻撃してこんかったし、妾は催婬をかけ続けるだけじゃったがな。とはいえ竜神と比べれば、ポッと出の神など神格が高まっておらん。認知されておらん神などしれておろう』


 竜神の魂強度を取り込み、イーサは魔王候補となった。サキュバス族という特に強くもない種族であったというのに。だからこそ、イーサは強気だ。邪神竜が相手でも戦えると疑っていない。


「神格持ちが相手でも何とかなるのか……」


『妾は必死じゃったからの。竜神は美少年じゃったし、絶対にアヘ顔が見たかったのじゃ!』


 真剣に悩んでいたというのに、唐突なサキュバストーク。どうやら竜神もまた人化できたらしい。かといって、それは完全な脱線話であった。


『妾は死に物狂いで催婬をかけ続けていたのじゃ。したら、突然に催婬が昇格しての。一発でメロメロにしてやったわ!』


 それはイーサが持つ超催淫のことだろう。強者と戦うほどスキルの熟練度が上がりやすいのは俺も分かっている。超と付くそのスキルは明確な違いをもたらせたに違いない。


「なるほどな。スキル次第で何とかなるってか。なら邪神竜にもかけられるか?」


『妾は神格を持っておらんが、同格じゃろうと思うておる。何しろ妾は竜神の魂強度を奪ったのじゃからな』


 イーサたちはやはり脅威に感じていない。それどころか負けるはずがないとさえ考えているようだ。神格をジョブに転換できなかったけれど、イーサは現実に竜神を倒している。よって准神格持ちだと言いたげであった。


「じゃあ、イーサはどうして魔王になれなかった?」


『どうなんじゃろうな。魔王候補になってからは破壊衝動が凄くての。まあそれで割と暴れ回ったんじゃが、ジョブは変わらんかった。大地を割ったりもしたのじゃがな』


 魔王候補になってから、戦闘値が跳ね上がったという。しかしながら、サキュバスであった頃にはなかった感情が湧き立ったとも話す。全てを破壊し尽くしたいと考えてしまったという。


「大地を割るとか迷惑な話じゃねぇかよ……?」


『今はそういった感情を抑え込めておるが、ある程度の破壊をするまで落ち着かんかった。あのまま闇の感情に呑まれておったら、魔王として覚醒したのかもしれん』


 イーサはどうしてか破壊衝動を抑え込めたらしい。彼女は魔王となるべくルートから自ら離れたという。


「どうして魔王化しなかった?」


『妾は世界中の男を虜にしたかったのじゃ! 欲望のままに動いておったら、気にならんようになっただけじゃな。実をいうと、今もそういった破壊衝動は残っていたりする』


 どうやら単に欲望が勝っただけのよう。今もまだイーサは破壊衝動を覚えているらしいが、既に何とも思わなくなったらしい。


「さぞかし千年前のアストラル世界はヤバかったんだろうな。お前たちが暴れ回ったせいで……」


 北大陸には魔王候補がいて、南大陸には狂気のハイエルフ。双方共が壊滅的な状況になっていたのだから、タイラーはある意味において勇者としての仕事を果たしたといえる。


「全部千年前からか……」


 俺は嘆息している。千年前の警報は終息したようで、その実は何一つ解決していない。根本の原因である行方不明になった大精霊たち。世界のバランス崩壊を加速させた狂気のハイエルフや災禍の対象である魔王候補まで。更には勇者タイラーという存在も寿命が尽きたあとでさえ、天へと還っていないのだ。


「今回はちゃんと終わらせないとな……」


 改めて自身の使命に責任を感じる。先延ばしとする解決ではなく、全てを終わらせておかねばならないのだと。


 俺は邪神竜との戦闘前に新たな目標を立てていた……。


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