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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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昇華

 天界ではシルアンナの業務室にディーテが来ていた。急激なヒナの成長によって状況がまるで変わっていたからだ。


「ディーテ様、ヒナは凄いですね! まさかドラゴンゾンビをソロ討伐だなんて。あれって長く懸念事項の一つであったのですよね?」


 ディーテの報告にシルアンナは驚いている。クリエスの手を借りるしかなかった彼女が成長したなんてと。


「やはりヒナは世界に愛されているのでしょう。あの局面でスキルが昇格するなんて、他には考えられません」


 ディーテとしては正直にもう駄目だと考えていた。あの窮地を生き残ったヒナには世界の加護があるとしか思えない。最後まで諦めなかった勇敢なヒナへの褒美ではないかと。


「それでシル、クリエス君と連絡を付けて欲しいの」

「え? それは構いませんけど、どうしてでしょうか?」


 シルアンナの加護が寵愛に昇格したことを知るディーテは、どうやらクリエスに用事があったらしい。


「セイクリッドフレアであれば、アンデッドにかなりの効果が見込めます。だからミア・グランティスのアンデッドを倒せないかと思ってね」


「ああ、なるほど! ヒナが自力で制約を達成できるかもしれませんね!」


 ポンと手を叩くシルアンナ。クリエスは今、彼女と合流できる状況ではない。ならばヒナが戦える範囲で強くなれば良いのではないかと。


 早速と寵愛を使って、シルアンナはクリエスを呼び出す。思念通話であるけれど、双方共が姿を確認できるのだ。


『シル、なんだよ? 俺は急いで……ってディーテ様!?』


「クリエス君、ごめんね。ワタシからお願いがあるのよ」

『何でも仰ってください! 何でもします!』


 敬礼するクリエスにシルアンナは呆れたような視線を向けている。自分とディーテに対する態度が違いすぎるのではないかと。


「それじゃあ、ミア・グランティスのアンデッドがどこにいるか知ってる? 割と強めの方がいいのだけど……」


『ああ、ヒュドラゾンビなら南大陸の西南にある島だと言ってました。ただその島は完全に毒素で覆われているらしいです。確か五体いるんじゃないかと』


 言われて気付いたのか、ディーテはああっと声を上げる。


「サナタリア島にいたのね。どうりで騒ぎが起きないわけだわ。ミア・グランティスが消息不明になったとき、災害以上の問題になるんじゃないかと考えていたのよ」


 とりあえず情報は聞き出せた。ならば、いち早くヒナに伝えるべきだろう。

 笑みを浮かべたディーテが部屋を後にしようかというとき、どうしてか警報音が業務室に鳴り響いていた。


「何!? 何事なの!?」


 慌ててモニターを見る二人。現状で残す懸念は邪神のみ。既にアストラル世界は魔王候補も邪竜も発生したあとなのだ。


 遂に邪神注意報が発令されたのかと思いきや、それは新たな警報の急な発令だった。


【邪神竜警報】92%(災禍級)


 新しい警報は何と災禍レベルであるらしい。


 邪神竜という聞き慣れない警報。突然の発令だというのに、どうしてか確定事項であるようだ。90%を超えると、もう近未来に起きる事象としか思えない。


「ディーテ様!?」

「これは大変なことになったわね……」


 取り乱すシルアンナとは異なり、なぜかディーテは落ち着いていた。どうやら彼女には思い当たる節があるようだ。


 溜め息を吐きつつも、ディーテは予想を口にする。


「恐らくは邪竜が神格を持つ――――」


 にわかに信じられない話であった。邪竜ナーガラージは古龍から昇格したばかり。神格を得るには世界に認められるか、若しくは神格者から奪い取るしかなかったというのに。


 居合わせてしまったクリエスは呆然としている。邪竜を倒すと決めたばかり。その脅威が更なる力を得てしまうなんてと。


「どうやって神格を得るのでしょうか?」


 シルアンナが問う。確かに邪神竜なるものが発生するとすれば、その災いはナーガラージに違いない。しかし、彼が神格を得られる手段などないように思う。


「分からないわ。それでクリエス君、これから君は邪竜討伐に行くと聞きました。詳細が分かれば連絡します。結論が出るまで大人しくしておきなさい。急ぐ必要はありませんからね?」


 ディーテはクリエスに釘を刺した。もし仮に神格化が早ければ、どう足掻いても勝ち目はない。現状のクリエスはステータスが八分の一であるし、充分とはいえない準備しかしていないのだから。


『分かりました……』


 素直に聞き入れるクリエス。彼もまた動揺していたのだ。邪竜という響きだけでも強そうだと感じていたのに、それが神格を得てしまうなんてと。


 急な呼び出しはクリエスに不安しか与えていない……。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 南大陸にある北街道。直ぐ南にアル・デス山脈が連なっているため、この街道はプルネアという東端の港町から大陸の西端まで真っ直ぐに伸びるだけだ。更には山脈北側で唯一の交易路でもある。


 邪竜と化した狂竜ナーガラージはクリエスを捜して北街道をひたすら西へと向かっていた。


「むぅ?」


 ナーガラージは一本道である街道の先に威圧感を覚えている。強大な力を得た彼であっても、気になる存在。視界の先に見えるものは、ただの人影であったというのに。


 ナーガラージが垂れ流す魔力に気付かないのか、人影は真っ直ぐにナーガラージへと向かっている。


「おい貴様、人族ではないな?」


 ナーガラージが聞く。見た感じは高貴な人族にしか見えない。しかし、彼は内なる者の存在に気付いていた。


「お前こそ何者? サラに乗っ取られた人族かと考えていたのに……」


 男はそう返す。ナーガラージに臆することなく。


「我はナーガラージ。かつて狂竜と恐れられていた。今は人化しているのだよ。それで貴様はどういう存在なのだ?」


 小首を傾げるナーガラージに男は毅然と答えている。


「僕はシルフ。大精霊さ――――」


 ナーガラージは眉根を寄せる。だが、シルフやサラと聞けば直ぐに察しはついていた。

 またシルフだと語った者はフォントーレス公国の元第一王子。シルフ・イードが身体を乗っ取った王子殿下である。


「そうか貴様は大精霊なんだな? 人族であれば見逃してやったというのに。残念ながら、人外は我の契約外なのだよ!」


 言ってナーガラージは火炎を吐く。人化したままではあったけれど、その威力は竜化時と少しも変わらない。


「ちょっ!?」


 瞬く間に火炎がシルフを襲う。既に元大精霊でしかなく、更には人族の身体を乗っ取っている彼女にとって、その炎は強大すぎた。加えて風の精霊である彼女には、弱点である火属性を防ぐ術などない。


「ぐぁぁあああぁぁっ!!」


 悲痛なシルフの声が轟く。ただ焼かれ続けるだけ。邪竜より吐き出される炎が収まるか、或いは魂の全てが焼き尽くされるまで。


 結局、シルフは二度目に浴びた炎により消失。ナーガラージは元大精霊を殺めてしまう。その結果として強大な魂強度を奪い取っていた。


「他愛もないな? 楽しむ間もなかったわ……」


 高笑いをするナーガラージ。真っ直ぐ伸びる街道の真ん中で豪快に笑っている。


 ふとナーガラージは気付く。街道の脇に建てられた石像に。見たことがあるようで、それは明確に異なる。一目惚れをしたシルアンナ像とは明らかに違う石像であった。


「こ、これは……?」


 愕然としたナーガラージは小さく震えている。かといって、瞳に映る石像から少しですら視線を動かさない。


「何てことだ……。シルアンナこそが全てだと考えていたというのに……」


 街道の脇に建てられていたのはディーテ像である。多くの信者を抱えるディーテ教団は財政的に潤っており、設置された像もかつて降臨したままの精巧な作りであった。特に彼女の象徴である胸の部分は完璧に再現されている。


「この世のものとは思えん……。我はこれを欲している。シルアンナも捨てがたいが、これは死んでも手に入れたいものだ……」


 ナーガラージは唖然と顔を振る。魅惑的な胸を初めて見た彼はもうその一点しか目に入らなかった。


「やはり我は天界へ向かうぞ! 天界にさえ辿り着けば二人共が手に入るのだ! 天使になる必要はない! 我は一刻も早く天へと向かう。女神ディーテと女神シルアンナの両取りを成し遂げるのだっ!」


 邪竜らしい思考により、ナーガラージはシルアンナとの約束を反故にすると決めた。一刻も早く天界へと向かう方法を見つけたのだから。


「我が神になればよい!!」


 刹那にナーガラージの身体が黒い渦に包まれる。それは周囲の魔素を全て凝縮させても足りないほどの強大な魔力を帯びていた。


「うおぉおおおおおぉぉっっ!!」


 邪竜ナーガラージは確信していた。全身から溢れ出る力。感じたことのない底知れぬ魔力。それらが神格を意味していることを。


 不適な笑みを浮かべ、宣言するように言う。ナーガラージは声高に叫ぶのであった。


「我は今より神である!――――」


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