魔王の先にあるもの
ディーテの業務室は騒然としていた。
それこそ異常事態と呼ぶに相応しい状況となっている。
「ディーテ様、警戒レベルが下がりましたよ!? 何が起きるというのですか!?」
シルアンナは動揺している。それもそのはず、終末警報であったはずが、どうしてか災禍警報に格下げされていたからだ。現状は邪神タイラーによって滅亡となる未来しかなかったというのに。
「恐らくウンディー・ネネの行動が鍵でしょうね。世界が生み出したる大精霊には何かしら分かることがあるのでしょう。クリエス君に水属性を与え、大精霊の加護を与えるつもりかもしれません。彼女の行動により、戦況が好転していると考えるべきでしょうね」
「いやでも、大精霊の加護は神格と違うはずですけれど?」
シルアンナも大精霊の加護について知っている。属性とは大精霊に認められたことを意味し、四属性全てを手に入れると大精霊たちから加護が与えられるのだという。
「まあその通りなのですが、クリエス君は特殊エレメントである雷と氷、加えて女神の力である光属性だけでなく、世界がバランスを保つために生み出した闇属性をも所有しているのです。大精霊の加護以上のことが起きるのかもしれません」
ディーテは考えられる結末を口にする。ウンディー・ネネの思惑とやらについて。
基礎四属性のコンプリートは割とある事象であったものの、全ての属性を揃えた場合にどうなるのかディーテにも分からない。
「ワタシたちも動いていきましょうか……」
シルアンナにはまるで理解できない。大精霊の加護をクリエスが得たとして、その先に何があるのか。現状では大した力を得られるようには思えない。
「私たちにできることがあるのでしょうか?」
「もちろんです。ウンディー・ネネはワタシたちと異なる未来を見ています。今は彼女への助力をすべきです。ワタシたちが諦めていた事象。ウンディー・ネネが信じる魔王というジョブの先へと向かえるように……」
「魔王というジョブの先……?」
正直に聞いたことがない。魔王のジョブツリーは魔王で完結しているのだ。だからこそ、シルアンナは困惑していた。
「シル、急ぎましょう。再び全世界に神託を与えるわよ? クリエス君に祈りを。世界を動かすのは常に想いの強さなの。本人だけじゃなく、誰しもが同じ願いを抱いたのなら、きっと世界は動く。強い願いを放置することはない。世界は必ずや最善の方法によって応えるはず。どのような動きを見せるのかは分からないけれど、もしも邪神が討伐される可能性が僅かにでもあるのなら、世界はそれを選択するでしょう。ワタシたち女神は信徒たちに願うよう促すのです」
言われてシルアンナも理解した。前例の有無ではないのだと。
今は願うだけだ。クリエスと世界の未来を。
僅かな望みを胸に抱き、シルアンナは信徒たちに神託を与えている。
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