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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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答え合わせ

 わたくしはようやく南大陸へと戻っていました。


 徐に大地へと立つ。踏みしめる感覚は九死に一生を得たのだと改めて感じます。サラが犠牲になったものの、何とか生きて戻ってきたのだと。


「お嬢様、天使になったということですけど、見た目は変わりませんね?」


 小舟を収納していると、エルサが聞いた。

 天使に関しては、わたくしもまるで理解しておりません。恐らくディーテ様に教えてもらうしか情報は得られないことでしょう。


「まあそうですね。羽でも生えていたら、それっぽいのですけれど……」


 そういった直後、わたくしの背中が輝き出す。何が何だか分かりませんでしたけれど、どうしてか背中から羽が生えていました。


「お嬢様、それ!?」

「え、ええ……?」


 金色に輝く羽。しかし、触れられはしないようです。確かに羽なのですが、物質として存在している感じはしませんね。


 過度に困惑しましたけれど、羽が生えたとして飾りであれば意味はありません。


「飛べないのでしたら、残念です……」


 そう口にすると、バッサバッサと羽が動き出す。これには戸惑うばかりですが、あれよあれよという間に、わたくしは宙に浮いてしまう。


「うそ!?」

「お嬢様、空を飛べるようになったのですか!?」


 エルサも驚いています。天使という未知なるジョブ。まさか本当に羽が生えて、空を飛ぶなんて予想外すぎます。


「思った通りに飛べるわ! わたくし、天使になったのです!」


 前世で読んだ漫画が彷彿と思い出されていました。堕天した天使様のお話。その天使様は地球を救う使命など持っておりませんでしたが、確かに超常的な力でもって世界に貢献していました。


「エルサ、わたくしは堕天したのよ!」

「いえ、そういうわけでは……」


 ひとしきり飛んだあと、わたくしは地上へと戻る。流石に興奮しました。まさか自由に空を飛べるなんて。転生して良かったと改めて思います。


 羽は自分の意志で出し入れできました。黄金の羽は非常に目立つので、空を飛ぶ以外では収納していた方が賢明かもしれません。


「しかし、輝く羽を見せたとすれば、ドワーフたちはひっくり返って驚くでしょうね?」

「はい。わたくしへの信頼にも繋がるかと思います」


 わたくしたちはまだ宿題を残しています。ドワーフの里で起きたドワゴロウ様の呪い。その後始末があったのです。


「清浄も習得しましたし、準備は万端です。ディーテ様の希望通り、ドワタ様が自白しておればいいのですけれど……」


 清浄による強制解除であれば、ドワタ様が反呪を受けることになる。そうすると彼は罪の意識もないままに、輪廻へと還ることになってしまう。


「難しいでしょうね。自白するのであれば、お嬢様が脅した時点しかないように感じます。お嬢様が聖女だと信じていないのでしょうし、反呪に関しても知識が不足しているかと……」


 十中八九、エルサの想像通りになると、わたくしも考えています。ドワタ様は既に自白する時期を逃しているのです。自分ではないと口にしたあとで、名乗り出られるはずもありません。


 少しばかり憂鬱に感じながらも、わたくしたちはドワーフの里へと戻っていく。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 往復一ヶ月半。わたくしたちはドワーフの里へと戻っていました。

 盛大に迎えられたのはやはり住人たちが不安を覚えていたからでしょう。里の誰かがドワゴロウ様に呪いをかけた事実。次は自分なのではないかと疑心暗鬼に陥っているようです。


「ヒナ様、よくぞお戻りくださいました」


 ドワキチ様が出迎えてくれます。

 既に住民の大半が集まっているようで、あとは場所を変えるだけでしょうか。


「ドワキチ殿、住人をドワゴロウ邸に集めてください。ヒナ様はお忙しいのです。早速と解呪させてもらいます」


 エルサの話にドワキチ様は小さく頷いています。どちらにせよ誰かが死ぬ。ドワゴロウ様が病に伏してから、それは決まっていたことなのかもしれません。


 住民たちがドワゴロウ様のお宅へと集まったあと、わたくしはドワゴロウ様が伏せっている寝室へと来ております。


 とりあえずハイヒールをかけて、ドワゴロウ様の疲労を軽減。一通りの説明をしたあと、清浄にて解呪するという流れでした。


 集まった住人たちの中にはドワタ様とドワコ様の姿も見られます。やはり容疑者となった二人には見届けてもらう必要がありますからね。


 流石にお家には入りきらないため、窓を開けて外からも確認できるように配慮しております。


「皆様、わたくしは実をいうとディーテ様の使いです。他者を呪うという行為は女神様に認められた権利ではありません。禁忌を犯したものがどういった末路を歩むのか、ご覧いただきとうございます」


 そう言ってから、わたくしは羽を出す。黄金に輝く羽を見たのなら、神の遣いとして疑いなどなくなるだろうと。


 刹那にざわめくドワーフ様たち。光輝く羽に神々しさを覚えたのか、祈り出す方までいらっしゃいますね。


「ヒナ……様?」

「ドワキチ様、お気になさらず。わたくしは女神ディーテ様の使徒。これより神の御業の元に解呪を行います」


 羽を出したのは正解でした。誰もがわたくしを敬うような目で見ているのです。これからの話も聞いてもらいやすくなるはずですわ。


「解呪とは呪いを強制的に終わらせることをいいます。ご覧の通りドワゴロウ様には強力な呪いがかけられています。わたくしの清浄で呪いの糸を切断しますと、行き場を失った呪いの力は一度に術者様の方へと跳ね返るのです。これを反呪と申しまして、呪いの力は時間を要することなく術者様を蝕むことでしょう」


 今もまだわたくしは名乗り出てくれることを望んでいる。ドワタ様が自白をし、術式を自ら解除するように期待していました。


「ドワゴロウ様の身体に巻き付いた呪糸。これらは徐々にドワゴロウ様を蝕んでおりました。清浄にて解呪すると、二人を介する呪具へと真っ先に戻っていきます。呪具は反呪さえも増幅し、より強力な呪いとなって術者様へと返っていくのです。反呪を受けた術者様は耐えがたい苦痛の果てに失われることでしょう」


 わたくしの説明にドワーフ様たちは頷いています。これくらい丁寧な説明であれば、彼らにも理解できることでしょう。反呪がいかに恐ろしい力を発揮するのかと。


 しばらく待ってみる。わたくしはドワタ様と視線を合わせるも、彼は俯いたままでした。


「ドワタ様、罪を償うつもりはありませんでしょうか?」


 いきなり名前を口にするわたくしに、ドワキチ様とエルサは驚いています。もっともエルサは犯人の目星を付けておりましたが、もう解呪しかないと考えていたのでしょう。


 流石に顔を上げるドワタ様。しかし、小刻みに顔を振って、


「ワシは悪くねぇ! 一秒でも長くドワゴロウが苦しめばそれでいい!」


 自白のような話を彼は始めていました。

 反呪の話に覚悟を決められたかのようです。わたくしが女神様の使徒であることを認められたのでしょうか。


 騒然とするドワゴロウ様邸。全員が犯人を理解していました。この期に及んでドワゴロウ様の苦痛を望むドワタ様こそが呪いをかけた張本人であると。


「ドワタ様、まだ貴方様には罪を償う機会がございます。ディーテ様もそれをお望みです。どうか呪術を解き、罪を償ってくださいまし」


「知るかよ! 呪具は誰にも分からねぇとこに隠した! 何だかんだ言って解呪できないんだろうがっ!?」


 ドワタ様はどう転んでも、ろくな人生にならないと分かっているみたい。だからこそドワゴロウ様を道連れにすべく強気に答えているのね。


「まあ、確かに前回お邪魔した折りには解呪できませんでした。けれども、今は解呪できますよ? それより、どうしてこのようなことをしたのか話していただけませんか?」


 わたくしが質問を返す。清浄の可否についてはディーテに聞いたままでしょう。しかし、実演するとドワタ様は反呪で失われてしまう。よって呪った理由を先に問い質すしかありません。


「ドワゴロウが親方に指名されたあと、先代に金を渡しているのを見た!」


 ドワタ様の返答にこの場は静まり返っていました。もしも、それが事実であればドワゴロウ様は袖の下を使って、親方に指名されたことになります。


「ドワキチ様、先代様はここにいらっしゃるのでしょうか?」


「いや、先代は代替わりした一年後に亡くなった。良い頃合いに代替わりしたと考えていたのですが……」


 流石にドワキチ様も戸惑っている。双方が友人というドワキチ様は親方に指名されなかったドワタ様の落胆を知っているのです。


「それは困りましたね。ドワゴロウ様に真相を聞こうにも意識がありませんし」

「ワシは悪くねぇ! 金で地位を買ったクソ野郎に罰を与えただけだ!」


 誰も口を開かない。ドワタ様の弁明が事実であるのならば、同意できる話でもあったからでしょう。

 ところが、わたくしは首を振る。この場の悪はドワタ様しかいないのだと。


「ドワタ様、残念ですが解呪いたします。呪具の使用は如何なる理由があろうと御法度。禁忌に指定されております。それに貴方様の行動は八つ当たりでしょう?」


「お前に何が分かるっていうんだ!?」


 わたくしの話にドワタ様はエスカレートしていく。見透かしたように話すわたくしが気に入らなかったのかもしれません。


「分かりますよ? 貴方様はその場面を目撃したあと、必ず先代の親方様に詰め寄ったはず。聞かないはずがありませんわ。呪具を買うよりも前に確認をしたはずです」


 わたくしの話にドワーフ様たちは何度も首を縦に振る。信じやすい人たちなのでしょうかね。

 まあでも、確信がございますの。前回はエルサに探偵役を奪われましたが、今回はわたくしが務めさせていただきます。


「それがどうしたってんだ! 不正をしていたから罰を与えただけだ!」


「いいえ、違います。先代様に詰め寄った貴方様は図星を突かれたのではありませんか? ハッキリと明言されたのではと存じます」


 わたくしは告げていく。全ては推論でしかありませんが、ドワタ様と接して分かったことがある。恐らくは先代の親方も同じ気持ちであったのだろうと。


「貴方様に親方の才覚はないと――――」


 顔を真っ赤にするドワタ様。彼の様子はわたくしの指摘が間違っていないと感じるものでした。


「呪いとは他者を恨むこと。ドワタ様、先代様に呪いをかけなかった理由は何でしょう?」


 わたくしは問う。代替わりしてから、一年と生きていらしたのです。その間に呪いをかける時間はあったはずですわ。


「恐らく貴方様は手渡されたお金の真意を聞いておられるはず。更には親方様の厳しいお言葉に何も言い返せなかったことでしょう。だからこそ……」


 返答しないドワタ様にわたくしは続ける。結果を導くための過程について。


「ドワゴロウ様を妬んだ」


 ドワタ様は何も答えない。淡々と語られることを静かに聞いています。先ほどまで彼は声を荒らげていたというのに。


「いつしか妬みは恨みへと変質し、ドワゴロウ様を呪うことになったのでしょう?」


 こんな今もわたくしは信じています。強制解呪をしなくても、この問題は解決できるはずと。信じる心は結論を急かすのみ。最後の問いかけをわたくしは口にしていました。


「呪術を解除してもらえないでしょうか?」


 最終確認です。わたくしとしては全力を尽くした結果ですの。ここでも拒否するのであれば、もうディーテ様が望んだ結果は迎えようがありませんわ。


 しばしの沈黙。全員がドワタ様に視線を集中させています。

 嘆息するドワタ様の吐息が静寂に包まれた部屋に満ちていました。


「ワシは……」


 小さな声で語られていく。紡がれる悔恨の念はゆっくりと確実にその全てを露わにしています。


「才能がないと言われた。どうしようもなく絶望したんだ……」


 もうドワタ様は諦めています。罪に関することや、この人生でさえも。

 語られるのは真相でしょう。既に彼は全てにおいて観念していたのですから。


「ワシはドワゴロウのような刀を作れなんだ。親方には工房を任せる腕前ではないと言われたんだよ。受け取っていた金は工房の譲渡金らしい。だから、ワシは行き場のない感情を溜め込むことになったんだ。長く燻った思いはドワゴロウを憎む感情となり、行商で人族の街へ行ったときに爆発した。呪具を見つけたんだよ。ワシは次の機会を待ち、生産神ツクリ・マース像を売って金を作ったんだ……」


 期待した裏金ではなかったこと。実力で親方の地位を勝ち取ったドワゴロウ様にドワタ様は妬む心を抱いたといいます。更には人族の街で見かけた呪具に魅せられてしまったみたい。彼らが信仰していた生産神ツクリ・マース像を売り払ってまでお金を工面したようです。


「ドワタ様、正直に話して頂きありがとうございます。ディーテ様は罪を償うのであれば、死を強要しないと仰られておるのです。里が決めた罰を受けていただけますでしょうか?」


 わたくしはディーテ様に聞いたままを伝えていく。ドワタ様の処分は里が決めること。里が下した処分を受け入れてくれるかどうかでした。


「もうワシは終わりだ。極刑でも何でも命じるがいいさ。呪具は家の屋根裏にある。聖女様なら解除できるのだろう?」


 呪具の場所さえ分かれば、問題は解決したも同然です。呪いを生み出す呪具そのものを解呪できたのなら、懸念された反呪は発生しないのですから。


「ドワキチ様、ドワタ様のお家にご案内ください」


 わたくしは解呪へと向かう意向を示す。少しでも早くドワゴロウ様の苦痛を除去してあげようと。


「分かりました。ドワタ様の処分は俺たちに任せてよろしいのですか?」


「構いません。ここは隠れ里でありますし、里の問題にわたくしが口出しするのは好ましくないでしょう。それよりもドワゴロウ様を苦しめる呪いを解いてあげたく存じます」


 言ってわたくしはドワタ様へと視線を送る。流石にもう罪を認めるでしょうと。

 頷くだけのドワタ様。スッと立ち上がり、自宅へと案内するように手の平を動かしている。


 話された通りに、呪具は屋根裏に隠されていました。取り出されたあと、全員の前でわたくしは解呪すべく習得した魔法を唱えている。


「清浄!!」


 淡く柔らかい輝きが呪具へと降り注いでいく。仄かに赤い光を発していた呪具は程なく純白の輝きに呑み込まれ、邪悪な赤い光を失っていった。


「解呪完了です。この呪具は責任を持ちまして、わたくしが預からせていただきます。よろしいですか?」


「もちろんです。ヒナ様でしたら安心できます。このような呪具は二度と持ち込ませないと誓います。行商帰りの者には入念な検査をしてから里へ入れるようにしますので」


 微笑みながら頷く。あとはドワキチ様に任せて大丈夫でしょう。

 全員を見渡しながら、わたくしは礼をする。


「それでは皆様、わたくしたちは旅に戻ります。よく話し合って今後を決めてください。また何かあれば北の街ゼクシルへとお越しくださいませ」


「ゼクシルですか? あそこの治安は酷いので、俺たちはアーレスト王国まで行商に行っているのですが……」


「政権は打破しました。以降の政治はディーテ教団が請け負うことになっておるのです。かの国は発展し、素晴らしい国になることでしょう。是非ともドワーフの皆様とも交流させていただきとう存じます」


 ドワーフ様たちは笑みを浮かべています。思えば彼らが人族を警戒していたのはゼクシルのせいかもしれません。悪党が幅を利かせていた頃ではろくな商談ができなかったはずですからね。


「本当ですか!? それは助かります! ゼクシル付近では行商の荷物を奪われたり、散々な目に遭っていたのです」


「もう二度と、そのようなことは起きないはず。ご安心くださいませ」


 再び礼をして、わたくしは手を挙げる。少しばかりの世直しがここに完結するのだと。

 ところが、不意にわたくしを呼び止める声がしました。


「ま、待ってくだされ……」


 両肩を支えられながら現れたドワーフ様。誰もがその姿に驚いていました。

 何しろ彼はまだ眠り続けているはずだったのです。


「ドワゴロウ様、まだ起きてはなりません!」


 現れたのはドワゴロウ様でありました。わたくしは直ぐさま駆け寄り、ハイヒールを施している。


「いてもたってもいられなかったんだ。助けられた礼をしていない……」


 荒い息を吐きながら、ドワゴロウ様はそんなことを言う。自身が呪われていたことを聞いたのか、彼は礼を言うためだけに現れていました。


「お礼は必要ございません。わたくしはすべきことを成しただけでございます」

「いいや、礼はさせてもらう。俺は誇り高きドワーフ。恩を受けっぱなしにはできない……」


 言ってドワゴロウ様は部下に何やら命じています。今もまだ自分自身の力で歩くこともできないというのに、彼は何をするつもりなのでしょうか。


 困惑するわたくしに、エルサが耳打ちをする。


「お嬢様、ここは素直に感謝を受け取るべきです。殿方のプライドにも色々とございますから、淑女らしく失礼のないように願います」


 なるほど、殿方のプライドですか。確かに固辞し続けるのは相手の矜持に反するかもしれませんね。

 程なくドワゴロウ様の部下が戻ってきて、何やら袋に入った長物を手渡してくれます。


「ヒナ様、これは我が工房に受け継がれている刀。生産神ツクリ・マース様に愛されし、名匠ドワサブロウによる至極の逸品。どうか受け取ってくれ……」


 豪華な絹袋から取り出されたのは工房に伝わる刀であるようです。鞘や柄の作りを見てもただならぬ雰囲気。ドワーフ様が製作する至極の逸品というのだから、相当な業物でしょうね。


「このようなものいただいて構わないのでしょうか?」


「受け取ってくれ。どうせ俺たちは斧やハンマーしか扱えん。この刀も聖女様に使ってもらえるなら本望だろう」


 一つ頷いたわたくしはエルサに諭されたまま受け取っています。完全な後衛職であるわたくしですが、攻撃力のアップは純粋に有り難いと思います。


「いつか相応しい刀士が現れたなら、託そうと考えていたのだ。名匠ドワサブロウの一振りを……」


 エルサも笑みを浮かべています。

 世直しなど時間の無駄だと彼女は考えていた様子ですが、行動の全てが間違っていなかったのだと思い直しているみたいね。


「銘はデカボイーンという――――」

「一歩目から間違っとるわ!!」


 思わず声を荒らげてしまうエルサ。ドワゴロウ様には何の罪もなかったというのに。


「お嬢様、品格というものがございます。このような下劣な銘を持つ刀など……」

「わぁ、軽くて良い感じね?」


 エルサは使用を止めさせようとしますが、わたくしは既に鞘から刀を抜いています。

 薄桃色をした刀身。まるでわたくしの髪の毛を写し込んだかのような色合いです。


「超稀少金属モモイロカネによりその発色になっておる。言い伝えによると先々代ドワサブロウは扱いが難しいモモイロカネを好んで鍛造したらしい。何でも絶対に譲れない信念があったようだ」


 ドワゴロウ様は里に伝わる伝説の刀鍛冶について熱く語っておられます。


「乳頭色はこれしかないと……」

「お嬢様、投げ捨てましょう!!」


 えっと、まあエルサったら。わたくしは割と面白いと思いますけれど。このようなジョークは漫画にも多く登場していましたし。それにわたくしは振った感覚がとても良かったので使用するつもりですの。


「エルサ、殿方のそういった発想を受け止めきれなきゃ駄目よ? 彼氏が欲しいのでしたら、受け入れる寛容さも必要ですわ」


「べべ、別に彼氏とか……。まあ、その銘については口にしないようお願いいたします」


 慌てるエルサは可愛らしいわね。やはり恋愛巧者はわたくしではないでしょうか。わたくしは薄いその手の本で鍛えられておりますからね。


「とにかく、ありがとうございました。お身体にはお気を付けくださいまし」


 大きな笑みを浮かべるて感謝を述べる。短い時間ではありましたけれど、ドワーフ様たちとの有意義な出会いであったように感じます。


 だからこそ、感謝の気持ちを集まった全員に贈ろうと思いますの。


「エリアヒール!――――」



本作はネット小説大賞に応募中です!

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どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m

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