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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第一章 天界にて

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煩悩まみれの聖職者クリエス

 天界が定めた第6666番目の世界。アストラル世界と呼ばれるここは野山を平然と魔物が闊歩するような危険な世界であったけれど、住人たちは武器や魔法によって対処しており、一応はそれなりの文明を築いている。


 一見、平穏そのものであるアストラル世界だが、実をいうと存亡の機に立たされてもいた。


 その危機とは魔王と邪竜の同時発生。数多ある世界でも希有な災禍に見舞われようとしている。しかしながら、五十年以内に未曾有の災禍が高確率で訪れるなんて、世界に住む人々に分かるはずもない。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 アストラル世界は二つの巨大な大陸があった。南側にある大陸はそのまんま南大陸と呼ばれていて、海を挟んだ北側も捻りすらなく北大陸だ。


 俺が住む国は南大陸でも屈指の大国であるアーレスト王国。美と豊穣の女神ディーテ様を崇める国の一つだけど、アストラル世界の九割がディーテ教徒なのだから、特に珍しいわけでもない。


 首都デカルネの大聖堂で俺は働いている。何を隠そう俺は聖職者なんだ。クレリックという将来有望なジョブを持っていることから、割とモテているだけでなく収入だって悪くない。


 女神ディーテ様を崇拝する俺にとって、現状の仕事は天職だった。ディーテ様のたわわに実ったお胸を眺めているだけで幸せな気分になれるし、お胸に祈っているだけで生活ができてしまうのだからな。


 今日も今日とて、俺は早朝からディーテ様を模した巨大な石像に祈りを捧げている。

 毎日の日課なんだ。愛と呼ぶべき信仰心をディーテ様に伝えることから、俺の一日は始まるのだから。


「ディーテ様、どうかディーテ様に比肩するほどの巨乳な恋人ができますように……」


 あり得ない祈りだと誰しもが思うだろう。しかし、俺は本気なのだ。

 これまで色々な女性と付き合いはしたけれど、どうしても長続きしない。なぜなら、今まで出会った女性の体型は全員が俺の嗜好と違っていたからだ。


 従って、俺はいつも女神様に願掛けしている。聖職者としてあるまじき煩悩まみれの願い事を。


 かといって、別に俺は無類の女好きでも、生臭坊主として教会のはみ出し者というわけではない。

 寧ろ教団の評価は高いと思う。二十歳にして異例の司祭という地位を得たことは、俺の行動が評価された証しなのだ。


 その評価は弱者に対する慈悲の心を持っているだとか、高潔な強い正義感を持っているからだとか。まあでも、女性関係においては嗜好的な問題があって、司教様に説教されることも多かったのだけど。


 概ね仕事は充実していたんだけど、プライベートだけが上手く行かない。よって俺は毎日ディーテ様に願いを乞う。やっぱ、心から愛せる女性と付き合って、ゆくゆくは結婚とかして幸せな家庭を築きたいと考えているから。


「クリエス様!」


 祈りを捧げていた俺は不意に声をかけられていた。クリエスとは俺のこと。つまり、早朝から大聖堂の扉を開いた人は俺の知り合いに違いない。


 振り向いたそこには紫色の髪をした美しい女性がいる。だけど、当然のこと知らない顔ではない。なぜなら、現れた彼女は昨日まで付き合っていた女性なのだから。


「どうして私と別れるって仰るのですか!?」


 大聖堂まで押しかけてきた理由は、やはり別れ話に関してらしい。さりとて、俺は平常心だ。このような局面も既に慣れっこだし、落ち着いて話し合えば済む問題だからな。


「アリス、君は美しい。だが、駄目なんだ……」

「どうしてです!? 先日も愛してくださったではありませんか!?」


 問い質すようなアリスに、俺は長い息を吐きながら首を左右に振る。

 ここは素直に気持ちを伝えよう。誰が見ても美人であるアリスと別れたいわけを。


「君のペチャパイでは駄目なんだよ――――」


 どうしてかアリスは絶句している。呆けたように顔を振っては言葉にならない声を発するだけだ。

 そんなに驚くことか? 俺の理想と違ったのだから、別れたいってだけなのに。


「そ、そんな……?」


 呆然としつつもアリスは鞄に手を入れていた。

 キッと険しい表情をした彼女が取り出したもの。


 不気味に輝くそれは……って短刀じゃねぇかよ!? ちょっと落ち着けって! 冷静になって話し合おうぜ!?


「一緒に死んでください!」


 一瞬の出来事だった。アリスは叫ぶや、躊躇いなく短刀を俺に突き刺していた。


 痛ぇぇ。てか、死ぬなこれ。俺の神聖魔法ヒールじゃ手に負えねぇやつだわ。失血死不可避の大怪我だよ……。


 将来を嘱望された俺の人生はここで幕を下ろす。

 薄れゆく意識の中で、短い人生を脳裏にフラッシュバックさせ、更には悔恨というべき言葉を俺は口にしている。


「きょ、巨乳ぅぅ――――」


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