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蜜柑の対策  作者: 榛原朔
蜜柑の対策3 聖邪の対立

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20-聖邪の対立

遥か上空には、漆黒の翼を広げるクリフォト達7人の邪悪。

それより数十メートル程下方には、純白の翼を広げるアオイ達3人の聖者。


実力的にも先程クリフォト1人に完封されかけており、人数的にも2倍以上という圧倒的な不利の中、アオイ達は強い覚悟を瞳に宿して身構えていた。


彼女達はクリフォトが来る前から眷属達と殺し合っており、流れで彼にも宣戦布告済みだ。賽はもう投げられている。

挨拶を終えたクリフォトが眷属に指示を飛ばせば、すぐにでも殺し合いは始まってしまうだろう。


場違いにも穏やかな挨拶をしたクリフォトだが、当然見逃すようなことはない。心安らいでしまう微笑みと共に、開戦の合図は禍々しく発せられる。


『では、挨拶も終わりましたし、彼らの主が到着するまでに終わらせてしまいましょう。皆さん、戦闘です』

「……!!」


クリフォトが宣言するや否や、左右に並んでいた魔人の一部はアオイ達に向かってくる。

全員じゃないのはまだマシだが、ベルゼブュート、ペオル、リデーレと、迫りくるのは特に好戦的なメンバーだ。


特にベルゼブュートなど、アオイの動きを完璧に封じた相手であるため油断はできない。

敵のメンバーを確認した彼女達は、この逆境を乗り切るべく距離を取りながら相談を始める。


「情報共有、ピエロはベルゼブュート、完封されました!

思考力低下と、それに伴う行動制限!」

「商人――リデーレはぼくが完封できた。価値を示して!」

「……そレは、オレニ向けてデスネ? シかシ、オレノ敵ハ決めテイますノで。オレは、あの怪人を破壊シマス……!!」

「らじゃ! ぼくはリデーレ潰して2人でディアボロス!」

「はい!」


素早く現時点までの情報を共有し、彼らへの対応を決定した彼女達は、それぞれの相手に目を向ける。


向かってくる3人は、特に作戦などなくがむしゃらに突撃してきている様子であり、変な小細工などは気にしなくてもいいだろう。


逆に、彼女達側がなにかしたとたら一方的な優位を得られるはずだ。扇子を開いたアオイは、少しでも不利な状況を変えられるように風で味方のサポートを始める。


"ジェットブラスト"


"風隠・副腕装剣"


アオイが呪いの力を使うと、一度大きく後退していた彼女達の背中には純白の翼の他にも突出したものが現れる。


決して翼のように大きくはないが、羽ばたきを邪魔しない範囲で突き出し、風を吹き出してスピードにバフをかけている補助部が。


さらには、その付近や肩、横腹などから生み出されるのは、風が腕のように形作られている補助部だ。


万が一の時の防御、攻撃に使うことで攻撃回数増加、炎などはその威力の増強など様々な効果があり、アオイはようやく本領を発揮していた。


しかし、自分から腕を破壊しており、腕だった部分に風の腕を生やされたユウリは、それをちらりとだけ見るとフンっと否定的に鼻を鳴らす。


「コレ、オレにハいりマセンよ? 自分で、できマスので」

「え、役に立つと思いますが」

「スピードは、エェ。しかし、腕ハ不要です」


"ジャック・タービュランス"


"破壊された平穏(カマエル)"


ユウリの否定的な反応を受けると、大気を支配して敵の動きを妨害していたアオイは、わずかに眉をひそめた。

彼女は相当心配しているようだが、もちろん今長々と説明するような時間はない。


彼は背中にだけ創られた突出の有用性は認めつつも、背中や肩に創られた腕は否定し、即座に破壊してしまう。


風の腕は一瞬で崩れ、そこにはさらに壊した自らの体や先程まで使っていた地面などが纏わり付き、粒子による破壊の腕を形成していく。


切断などではなく直接的な破壊であるため、そこまで血が飛び散るということはないのだが、血肉は溢れる度に破壊され材料にされていて痛ましい。


その行為を見たアオイ達は、またしても辛そうに顔をしかめていた。


「腕も足モ、破壊シタものナら攻守ともニ完璧デス。

では、オレノ邪魔をさレナいタメにも、健闘を祈リまス」


四肢を欠損した胴体と首だけのユウリは、その部分を風より変幻自在な量子で補うと、不気味な多腕生物としてペオルに向っていく。


アオイ達もモタモタしてはいられず、残りのディアボロス、リデーレとの交戦開始だ。

後ろにはまだクリフォト達も控えているため、最速で状況を変えるべく神秘を行使する。


"ディヴァイン・オウレオール"


ユウリの標的は常にペオルのみであり、他は邪魔されないために量子の手足を伸ばして分断している。

もちろんただ分断しただけだが、追えずにただ気を取られているので隙は十分だ。


すでに攻略法がわかっているリデーレをさっさと倒そうと、ウィステリアは多大な価値のある炎を身に纏った。

アオイがベルゼブュートを抑えている間に決着をつけようと、避けられない距離から炎を放つ。


「この炎の価値の代価に、今度こそ君の命をもらうよ」

「ふん、そう何度も同じ手を食らうだなんて思わないでくださーい。この取引は炎とケガの悪徳取引です♡

お願いね、セファール!」


しかし、まだウィステリアがいるのに率先して前に出てきただけあって、リデーレにも策はあるようだ。

クリフォトの隣で羽ばたくセファールに呼びかけると、彼女の体は治療時のように全身を怪しく発光させ始める。


すると、今回彼女の身に訪れたのは治癒ではなく悪化。

ついさっき治してもらったはずの全身大火傷だった。


いや、それだけではない。彼女の旅装束は腹部が吹き飛び、じわじわと侵食していく破壊が顔をのぞかせる。

頭は割れて脳みそを垂れ流し、四肢はユウリ程ではないながらも弾け、血のシャワーを浴びせかけていた。


ウィステリアは炎であるため、血はその熱気で蒸発していく。だが、いきなりの奇行に直前の言葉もあって、彼が頬を強張らせるには十分だ。


「っ……!? まさか、これを……!?」

「はい♡ あなたに差し上げますわ♡」


"悪魔の押し売り"


思惑を察したとて、目に見えない取引などにまともな対策は取れない。前回は対価を求められたから炎の価値で対抗した彼だったが、取引の内容変えられればお手上げだ。


リデーレがその価値ある炎を見たことで、取引は成立してしまった。ウィステリアの全身は酷い火傷に覆われ、腹部にはユウリの破壊、手足は風に千切れ飛んで、頭からは脳みそが垂れ始める。


身構える暇もなく一瞬で重症を負った彼は、翼への損傷はないながらも堪らず口から血を吐き、地上へ落下していく。


「うっふふふ! 取引は成立したわ。さようなら♡」


リベンジを果たしたリデーレは、空中でくるくると回りながら満面の笑みを浮かべた。両サイドから3人ずつ出た2回戦の一戦目は、クリフォト側の勝ちだ。


また、他の戦いもクリフォト側が有利である。

ユウリの破壊も、2度目となればペオルに通用していない。


どれだけ自由度のある量子の手足だろうと、敵は醜悪にネジ曲がる肉の中を蠢き回避し、逆に触れた胴体は醜悪な病巣となる。


アオイとベルゼブュートの戦いも同様に。

サポート特化、頭脳勝負の彼女が思考を止められたら、実力のほとんどを発揮できない。


彼は馬鹿らしい言動のピエロだったが、やはり喉から取り出した剣の扱いは一級品で、彼女は完全に翻弄されている。

上空にまだ4人の魔人が控えていることなど関係ない。

彼女達セフィロト側は、今にも全滅しそうであった。


「ふんふ〜ん♪ セファールの欲は満たされなかったけど、私的には最高の取引でしたー。あとはこの街から‥」


ちらりと他の戦いにも視線を向けたリデーレは、最も危ない戦いが拮抗しているユウリとペオルだったことで、もう次のことに思考を切り替える。


ベルゼブュートの勝ちは揺るがず、ペオルも負けはない。

上にはクリフォトも控えているのだから、もう自分が関与する必要はないと街に目を落とす。だが……


「……!?」


突然、地上から金色の炎が飛んできたことで、彼女は慌てて体を反らした。パッと下に目をやると、そこにいたのはもちろんウィステリアだ。


彼は全身に火の神秘らしからぬ大火傷を負い、腹部から段々と広がってきた破壊に胸や足までもをひび割れさせ、手足の半分以上が風で切り飛ばされた状態でなお、彼女を射抜く。


もう誰なのか判別もつかないくらいにボロボロの彼だったが、瞳には炎が揺らぎ続けていた。

その姿を見たリデーレは、再び顔に恐怖を張り付けながら口を開く。


「は……!? あなた、なぜまだ動けるんですか!?

いくら神秘が丈夫だと言っても、その傷も神秘ですよ!?」

「君は……この中の、火傷だけで倒れたんだよね……?

ちょっと、覚悟が足りないんじゃないかな……?」

「覚悟!? 覚悟って何よ!? ありえない……ありえない!!」

「覚悟が、違うんだよ……!! ぼくは、あの子のように……

どんな姿でも、どんなに傷ついても、輝くんだ……」

「狂ってるわ……」


自分と同じ高度まで飛んできた彼の言葉に、リデーレは顔を引きつらせてドン引いた様子で後退していく。


他の戦場に変化はない。

上空で見守るクリフォト達に動きはない。


狂気的な覚悟の持ち主であるウィステリアを前に、リデーレはたった1人で恐怖と戦っていた。


「それが聖人、だよ。恨みではなく、決意だけでここまでの高みに昇るんだ。ユウリくんが自傷してでも復讐を続けるように。ぼくも、どれだけ瀕死でも誓いを守る……!!」

「……っ!!」


瞳に宿る炎の揺らめきをひときわ輝かせたウィステリアは、切り飛ばされて肘から上のない腕を持ち上げる。その輪切りの腕上に生み出されるのは、ほんの小さな太陽だ。


だが、当然小さかったのはほんの少しの間のこと。

みるみるうちに巨大化し、切断されて血の流れる腕を焼き、大火傷を上塗りするように彼に灼熱を浴びせかけていく。


夜を焼き、冷気を吹き飛ばし、この場には昼間が訪れる。

直径何十メートルもの大きさになった太陽は、彼の敵を存在から焼き始めた。


「君をすぐには倒せないというのなら……ぼくは、君を含めてこの場の全員を相手にしよう。今回は熱気だけじゃないよ。

日輪はここに。きっと君達に終末をもたらすだろう……」

「あ、あ……」


"バニッシュメント・デスフレア"


それはまさしく、天上に浮かぶ日輪。

一度リデーレが敗れた状況の再現。


神の如き聖人と対面する彼女が怯え、クリフォト達もついに身構え始める中、ウィステリアは邪悪を滅するべく瞳に輝く炎を揺らめかせていた。


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