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蜜柑の対策  作者: 榛原朔
蜜柑の対策1

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12-アオイの暗躍

『ね、ねぇ本当にどうするの……!? 私、死んじゃうよ……?

なぜか何日経っても来ないけど……』

「ど、どうするって……!! もう、力尽くで止めるしかないんじゃないかしら……!? 商会まで出てきて帰れと言うのは……」


ほとんどの記憶を思い出したガーベラが、蜜柑伐採についての新情報をもたらした数日後。

蜜柑が生えている丘の上では、いつものように焦った蜜柑とガーベラの話し合いが行われていた。


もちろん、傍らにはウィステリアもいる。

しかし、彼は普段から臆病で頼りないため、この場でもオロオロするばかりであまり役に立っているとは言えない。


その上、最も頼れる存在であるアオイは用事があると言ってどこかへ行ってしまったので、彼女達は大いに焦っているのだった。


「ま、ま、まずは状況を整理しよう……?」

「今更何を整理するの……? わたしは加護を使えず、ビオレ奴隷商会は準備万端。もう村に来始めてる頃よ。

詳しい居場所とかは、わからないけれど……」

『領主はあくまでも依頼主。わざわざここまで来ないだろうから、やっぱ止めたきゃ力尽くになるんだろーね。……やる?

一度駄目だった分まで、私の力は示せるはずだけど』

「む、無理だよ……!! 大人相手に、そんな……!!」


ウィステリアが状況整理を提案するも、既にどんな状況かは明白だ。交渉相手である領主は現地にはいないと思われるので、動き出したビオレ奴隷商会を止めたければ実力行使。


こちら側はガーベラ、アオイ、ウィステリアの子ども3人で対抗することになるので、いくら加護があっても明らかに無茶な話である。


加護がなくとも、魔導書のような強力な神秘を操る技術や、単純な身体強化などがある可能性があるため、結局は体格や人数も重要なのだ。


その上、彼女達には商会の大人たちが集まる場所を知るすべすらないので、今のままではここで迎え撃つしかなかった。

全てにおいて不利である。


もちろんそのことはみんなわかっているので、臆病なウィステリア以外の2人も乗り気ではない。

力尽くで止めさせるという話をしながらも、全員が「危ないことだよね」と深いため息をついていた。


『一応、ガーベラが旅に出たことで、多少離れていても私とみんなは話せるってことはわかったんだけど……

それでも賭けっていうか、強引だよねぇ……』

「そうなの? だとしたら、連けいでは勝てそうね……?」

「そうなの?って、ガーベラが初めて話してたよね」

「お、覚えてるわっ! けん属的なあれよねっ!?」


しばらく「やるしかない」「無理だ」というような話が続いた後、話題は蜜柑の新しい力についての話に移る。

どうやら、ガーベラが村を離れたからこそ見つけた力であるようなのだが、話した本人は忘れていたらしい。


呆れ顔のウィステリアに指摘されたことで記憶が蘇ったのか、毎回重要なことを忘れていることに恥ずかしそうにしながらも、強く肯定し始めた。


とはいえ、ガーベラが覚えていようといまいと、実際に使えることに変わりはないのだから関係ない。

蜜柑が伐られることを阻止したい以上、結局は今持てる力を使って抗うしかないのだ。


遠距離での会話が可能ということを共有した彼女達は、すぐに力尽くで止める話に戻っていく。


『そーそー。まぁ、連携はできるけどさ。私達は素人だし、結局は対応しきれない気がするんだよね。

やるしかなさそうだけど』

「や、やっぱりやるんだ……」

『無理には言わないよ? 私はみんなの意思を尊重します』

「もちろんやるわ! わたしは元々、あの人に勝手に伐らせるつもりはなかったもの!」

「ぼ、ぼくだって……強く、なりたいから……」


どうやら、ウィステリアが提案した状況の整理は、思いの外彼女達を落ち着かせる結果になったようだ。


さっきまで焦っていたのが嘘かのように、ガーベラは普段の勝ち気さを取り戻し、ウィステリアも強くなるという目標のために覚悟を決める。


そして、ちょうど「やるしかない」とまとまったところで、タイミングよく最も頼りになる少女がこの場に現れた。


「こんにちは、いい天気ですね」

「アオ!!」

『アオイちゃん!!』


どこか疲れた様子のアオイが後ろから挨拶をすると、彼女達は3人共に目を輝かせて名前を呼ぶ。

覚悟を決めたことは決めたが、やはりそれでも頼りになる存在が帰ってきたことは嬉しいようだ。


とはいえ、いきなり用事があると言ってどこかへ行ってしまったことには変わりない。現在が緊急事態なこともあって、真剣な表情に戻った彼女達はすぐさま彼女を問い詰め始める。


「それで、どこに行ってたのっ!? こんな大事なときに!」

「私達の後ろ盾になれる組織を雇いに行ってました」

「う、後ろ盾……?」


初めは強めに問い詰めていたガーベラだったが、彼女の返事が予想外のものだったのか、戸惑いを見せる。

それを見たアオイは、彼女の勢いが弱まった隙にすぐさま説明を開始した。


「はい。みなさんも話していたように、商会が準備を終えたのなら、もう領主様を説得する段階ではありません。

実力行使です。ですが、私達はたった3人。あまりにも多勢に無勢です。そこで、ビオレ奴隷商会のライバル組織をこちら側につけ、人数の補填や力及ばなかった場合の保険になってもらうことにしました」

『へー、ライバル組織なんているんだ?』

「一応、その辺りの説明をしましょうか。ビオレ奴隷商会とそのライバル組織……鬼哭衆のあるタイレンという国の話を」


ガーベラに弱みを見せないためにか、単刀直入に説明をするアオイだったが、蜜柑の問いかけを受けると速やかに話題を修正する。


誰かと争うのなら、まずその相手をよく知ること。

必須ではないかもしれないが、ビオレ奴隷商会の人間がどんな背景を抱えているかを知ることは、緊張感を高めるためにも意味あることだろう。


ウィステリアもあまり他国のことは詳しくないのか、身を乗り出して興味深そうに聞いていた。


「そもそも、なぜフラーのみかんの木伐採と砦建設にタイレンのビオレ奴隷商会が関わってくるのか。これは、タイレンという国の在り方に理由があります……」


アオイが語るのは、タイレンという国の簡単な歴史。

今彼女達がいるフラーとは違って、魔獣被害が国が滅びかねない規模で起こっている国の話だ。


「まず、大昔のタイレンは国としてまともに機能していませんでした。あまりに魔獣被害が甚大だったためです。

そのため、指導者は自らが生き残ることに必死になった。物資を独占し、フラーとは違った形で貴族制を敷いたのです」

『フラーとは違った形?』

「支配者が守るのではなく、支配者が生き残るために守らせる……ですね。魔獣に怯える人々は心の拠り所を求めて集まり、物資を独占されたことで上下関係を受け入れた。

そこに現れたのがビオレという魔人です。彼女は神秘に成っていたために強く、安定して魔獣を狩ることができた。

安全や食料などを貴族よりも提供できたことで、人的資源を奪い去ったのです。人々も生きるために彼女に従いました。

そして、圧政を逃れた彼らは誰よりも従順な駒となる」

『なるほどね。安全や食料の代わりにどんな仕事もしろっていうのが、この時代の……商会が呼ぶ奴隷なわけだ。

一応は立場が低いとかはなく、その上で従順ね……』


商会の人間は、間違いなくビオレという魔人の所有物ということになるだろう。そこに関して言えば、確かに奴隷だ。


しかし、名誉や権利、自由がなかったのはむしろ貴族に物資を独占されていた頃なので、立場は良くなっている。

おそらくは、便宜上奴隷という呼び方をされているだけで、社長に狂信的な社員というのが正しい認識だ。


人権がない人達ではなく、従順な駒となった人達。

この差は相手の意欲に関わることなので、蜜柑達はかなり役に立つことを学んだと言えた。


さらに気を引き締めた様子の彼女達を見て、アオイは満足そうに頷きながら話をまとめていく。


「はい。嫌々従わされていないため、彼らは本来の奴隷というよりは忠臣です。そんな彼らを、ビオレ奴隷商会は他国への強制労働という形で使って富と力を得ました。

そして、その不自由さに反発して生まれたのが鬼哭衆。

商会の一強を嫌った、何者にも従わない自由な無法集団。

近年、軍事化が進む商会と同じ土俵で争う対抗組織です」

『なんか、思ったよりも危なそうだね……

相手もヤバいけど、鬼哭衆も頼りになりそう』

「ガーベラも、土木企業などと思ってかからないように」

「そ、そんな気を抜くわけ無いじゃない!?

というか、タイレンはかなり遠いはずでしょう?

その依頼、間に合わないのではないかしらっ!?」


もしかしたら、ガーベラに釘を差すのが本当の目的だったのでは……? といった雰囲気でアオイは言葉を付け足す。

当然ガーベラは反発するが、多少思い当たる節があるらしく、目に見えて焦っていた。


しかし、図星を突かれながらも彼女の指摘は的確だ。

仕事の邪魔をする場合、かなり激しく抵抗してくると予想されるビオレ奴隷商会へぶつける鬼哭衆。


領主の元にいた商会ですら、この村に来るのに一週間は期間を空けているのに彼らは間に合うのか。

万が一の保険にもなるらしい彼らの存在は、最早唯一の頼みの綱である。


質問をしたガーベラだけでなく、ウィステリアや蜜柑も緊張した面持ちで返答を待った。

だが、最も頼りになる少女にそんな心配は無用だったようで、アオイは澄まし顔で言葉を紡ぐ。


「私の加護は、運良く風でした。とっても疲れましたけど、ちゃんと話はつけてきましたよ。空を飛んでね」

『うわぁ、アオイちゃんナイスーっ!!』

「あなた、かなりとんでもないことをしていないっ!?

けど、ありがとう! 希望が見えてきたわっ!!」


どこまでも従順なビオレ奴隷商会の手強さ。

先程の授業でそれを思い知った蜜柑達だったが、それに対抗してきたという助っ人を確約され、丘の上では歓声が爆発していた。



今日は昼にも投稿するつもりです

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