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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋する乙女は永遠に生きてゆく――

挿絵(By みてみん)



 大世界ワルキューレ・トリス924年の伝記。



 デュオン帝国が一国のスペシアン海軍はカトロスとマドロスの発見に成功した。しかし海軍といえども、その統率は事実上とれてなかった。軍から独立し、海賊行為をする者に溢れかえってしまったのだ。結果マドロスは海賊島となった。そして世は大海賊時代を迎える――



 スペシアン国が領地として押収したカトロスも海賊らが押し寄せ存続の危機を迎える。しかしこの大海賊時代に名を馳せた一人の海賊皇帝が処刑された。



 彼は処刑される直前にこう言い残した。



「財宝か? 欲しけりゃあくれてやる! 探せ! 俺の全てをそこに託してやった!」



 彼が処刑されたとき、広場は大歓声に包まれた。その悪名を轟かせるゼアン・セキタクスの絶命に安堵した者もいれば、彼の遺した言葉に心を躍らせる者も。



 そして悲しみの涙に暮れる者もいた――




 セキタクス海賊団の見習い船員だったタックンは町の郵便屋を始める事にした。彼はゼアンが海軍に捕まる際にあったカトロス海域での海戦で船員達から海へと投げ出された。若い彼の未来を案じての計らいであったが、彼の心にはトラウマだけが残った。



「はい皆さん、こんにちわぁ~」

「ナオキモン?」

「その声はタックンか!? 生きていたのか!?」



 タックンと同じ見習いだった四本腕族のナオキモンは感激し、彼と抱擁し合った。



「お前も生きていたのか!」

「ああ、ウマヅラさんたちに海へ投げ出されて」

「いまは八百屋を?」

「ああ、海賊からは足を洗った。俺が海賊であるのはあの船長の船にいたから。あの船長なき航海なんか俺はしたくない。お前もそうだろう?」

「そうだな……船長の処刑には行ったのか?」

「いや、行かなかったよ。行ってしまえば暴れてしまいそうだ。お前は行ったのかよ? タックン」

「ああ、ただただ見届けた」

「そうか」

「お前だけでも生きていて良かった。今は郵便屋をしている。今日は貴方に手紙を渡しに来た。バシャール・アルモンドさん」

「そうか! ははっ! 俺は今もアンタをタックンと呼んでいいのか?」

「俺は……」

「住民登録をしたほうがいいと思うぞ? この町に教会がある。そこでできるよ。あ、海賊だったとか言わない方がいいと思うぞ? 言わないと思うがね」



 彼はこの島にやってきてまだ半年しか経っていなかった。



 確かにナオキモンの言う通りだと思い、教会へ向かった。




 その教会は海がよくみえる丘にあった。役所としての機能も果たしているとの事だが、教会のまわりには不自然にも柄の悪い連中がわんさかいた。



「おい、坊主! 何か金目のものがあったらよこせよ!」

「何もない。ここに住民登録しにきた」

「おい! ボウヤ! 仕事ならこっちにあるぞ? どうだ?」

「仕事ならしている。間に合っている」



 教会の中に入るのにも一苦労した。教会そのものはとても大きく、4階建ての新築建造物だ。住民登録は2階の一室で行われていたが、長い行列ができており、さらには人数制限があった。



「は~い、今日はここまで~! 登録したい人はまた明日~!」



 若いシスターがメガホン越しにアナウンスをした。並んでいた貧相な人々は皆「やれやれ」と言った事をぼやきながら去っていく。



「あの」

「何?」



 タックンは去っていく人々をかきわけながらシスターに声をかけた。



「どこかでお会いしなかったかな?」

「何? ナンパ? そういうのは別のところでやってよ?」

「俺、海賊をしていたのだけど、セレソンって島で君みたいなコと出会った記憶があってさ」

「………………」

「ごめんね、人違いだったら」

「また明日。朝の5時から夕方の5時で受け付けています」

「ごめん、今日の事は忘れて」

「住民登録したいのなら、朝の4時ぐらいから並んで。面接は1時間ぐらいある。1日13人ぐらいしかできない。それを知らず毎日30人も並んでいるのよ?」

「そうなのか! 教えてくれてありがとう!」

「べっ……別に……」

「俺はタックン・タックンというよ!」

「スレイ・ロメッツよ。さっきの名前は変だから新しくつけて貰うつもりで来て」





 セキタクス海賊団が幻の島と謳われるセレソン島に着いたのは今から4年ほど前のこと。上陸前に無数の槍が飛んできて、一時は戦闘態勢に入ろうとした。



 しかしそこでゼアンが船の先端に乗り出し大声で何かを叫んだ。



 するとセレソン島からの攻撃はおさまった。



 ゼアンが話した言語はセレソン島に住むセレソン族の言語であった。



「船長は彼らの言葉を知っているのか!?」

「まさか。ただ俺は昔から万物の声が聴こえるし、万物と会話する事ができる。その特技を披露したまでよ! はっはっは!」



 ゼアンは同じ海賊団のクルーからみても謎の多き男であった。実はデュオン家またはラベルス家の血を継ぐ元貴族だった話や伝説の英雄であったイデオールの子孫なのではという話がまことしやかに世間で噂された。しかし誰もその真実を知る事などない。



 ゼアンの特殊能力のおかげで海賊団一行はセレソン島に上陸し、セレソン族の長老を含む一族の者達と交流を育んだ。島をでる頃には3日通しで宴を開いた。



 島を出るまでずっとゼアンに攻撃し続ける女子がいた。彼女はフィア・セレスという。彼女には魔法が使えた。しかし魔法の威力はさほどなかった。ゼアンも鼻で笑うほどのモノだ。



 宴最終日、ゼアンはフィアと話をすることにした。フィアの見守りは見習いのタックンとナオキモンがしていたのだが、彼女が彼らを相手にすることなど全くなかった。



「船長! すいません! コイツ、全然ゆうことを聞いてくれなくて!」

「はっはっは! いいさ! 俺に用があるのだろう! 俺が相手する!」

『人間が! 私達に近寄るな! 生き物史上最悪の生き物が!』

『親を殺されたのだったな。俺もそうだ。同情する』

『お前ら人間が殺した! 海賊が殺した! 私の家族を返せ!』



 タックン達は「船長がセレソンと話している……」と唖然するばかり。



 ゼアンは口笛を吹き、妙な鳴き声をあげた。すると、森のなかから動物たちがでてきた。動物はリスに小鳥に兎などフィアが好きな動物たち。彼らはゼアンに懐いていたが、彼がフィアを指さすと彼女のほうに向かっていった。



『どうして……』

『俺は海賊だが争いなんて好まん。フィアよ、心の穴を憎悪で埋めるな。魔法を使うなら可能性を閉ざすことじゃなくて、広げることに使え。俺はそうしたぞ』



 涙に濡れるフィアにそっとゼアンは近づき、彼女の頭を撫でた。



 彼女は抵抗しなかった。そしてその時になって彼女は変わったのだ。




 ゼアン達が島を出航する時になって『私もゼアンについていく!』とフィアが主張し始めた――



『あの子は今も身寄りがいない。魔法が使える魔女でもある。だからという訳でないが、あの子を航海に連れていってくれないか?』

『ムギ長老、それはできない。俺達は男だけで航海しているから、理性も持てる。命だっていつ奪われるか分からない。ここにいるほうが彼女の為だ』

『ゼアン……それを私が言っても彼女が聞くとは……』

『俺が言うよ。俺が言う。だから彼女を此処に居させてあげてくれ』



 ゼアンはその足でそのままフィアが駄々をこねる港に向かった。



『ゼアン! 私も貴方の仲間にして!』

『それはできない。危険だ』

『危険でもいい! 私はあなたの傍にいたい!』

『まったく、どういう風の吹きまわしだ? 海賊が憎かった訳じゃないのか?』

『海賊は憎い! でも貴方は違う!』

『俺も海賊だぞ?』

『でも私は貴方が好き! 大好きなの! 私を貴方のお嫁さんにして!』

『フィア……』



 ゼアンはフィアをそっと抱き寄せて頭を撫でた。



『お前がもう少し大人になって美人になったら迎えにいく。約束しよう。お前に俺が愛読している本の全てを託す。あと、あれだな。魔法をもっと使いこなせるようになれ。そうなれば俺と一緒に戦う事もできる』

『約束してくれるの?』

『あたりまえだろう!』



ゼアンは船員に命じ、彼が持っている本という本をセレソンに置くことにした。そしてセレソンを発つ――




 フィアは3年かけてゼアンの遺した本を読みに読んで学習した。そして人間語まで習得するにあたった。彼女はムギ長老に頼み込み、遂には船出を果たす。




 しかし彼女がセキタクス海賊団の拠点であるカトロス島に着いた時にゼアンは囚われの身となっていた。彼を救おうと一度は監獄の襲撃を試みたが、失敗したうえに一時的に捕縛までされた。もっとも、その際に辛うじて脱出はできたが……。




 1年のときを経てゼアンは処刑された。




 その2年後、かつてゼアンと同盟関係にあったカトロス領総督、ヘズマ伯爵が何者かに城内にて襲われた。



「ま、ま、待て……何でも欲しいものならやる。お金ならば腐るほどある。この島の総帥になりたいのなら、それもいいだろう! 交渉しようじゃあないか!」

「何でもくれるのか?」

「あ、あ、 何でも!」

「ゼアン・セキタクスを生き返らせろ」

「何だって?」

「ゼアン・セキタクスを生き返らせろと言っている」

「それは無理だ……もう死んでいる……」

「ならばお前はここまでだ」

「待て! 話せばわかる!」

「問答無用ッ!!」

「ぎゃああああああっ!?」



 ヘズマ伯爵は何者かによって暗殺された。千本のナイフが彼を襲ったとされた――




 ヘズマ伯爵が殺害された翌日の朝、海賊船を出した男がいた。彼はタックン・セキタクスという。彼の横には副船長のバシャール・アルモンド改めナオキモン・セキタクスが誇らしげに複数生えている腕を組んでみせた。



「私もその船に乗せてってくれないかしら?」

「おや? どこかの教会のシスターさんじゃあないか」

「何だよ? その女海賊の格好は? やる気満々か?」

「ええ、久しぶりね。ずっとセキタクスを探していた。その名を掲げる海賊船が出るならば、私は黙ってなどいない」

「ははは、いいだろう? 名前は?」

「フィアセレス・セキタクス。セレソン出身の魔女よ」

「面白い運命だ! ゆこう! 共に!」



 海賊に恋した乙女は海賊となり、海を駆け巡る――





∀・)読了頂きまことにありがとうございます♪♪♪僕が主催してます「なろう恋ファンタジーフェス」の自由枠を使って企画概要に則って書きました♪♪♪自由枠ですけどGPの審査員もやるということで4000字縛りに挑戦しました(笑)正直まとめるの難しいね(笑)実感しました(笑)



∀・)僕はワンピースが大好きなのでワンピースの影響もでてると思います。何となくフィアちゃんがウタちゃんでゼアンがシャンクスになった感触がありましたね(笑)テーマソングは「世界のつづき」でイイと思いますが「もっとこういうのがいいんじゃない?」っていうのがあれば教えてください(笑)



∀・)スレイ=フィアについては読者様それぞれの感想もあると思うので僕からはノーコメントしておきます。でもGPでもそういう作品がでてくる可能性もあるのかな?変に被らないことを願っております(笑)よろしければ御感想そしてレビューをお待ちしております☆☆☆彡

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― 新着の感想 ―
[良い点] ワンピースのオマージュ風の作品ですが、癖のある登場人物たちと舞台設定が魅力的な作品であり、長編作品としても大きな可能性を秘めていると思います。 短編では難しいかもしれませんが、各キャラクタ…
[一言] 私にとって本作の主役は『ゼアン・セキタクス』でしたが、文字縛りがあったとは思えない、異世界というより中世の南洋の匂いを嗅がせて頂きました。 お見事でした。
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