邪神、本気を出す。
「ここが、迷宮の都カラストフか。」
人族による侵攻が始まる前は、迷宮によって多大な資源が与えられ最も栄えた都市だった。人口も約数万人程だ、しかし今では見る影もない。ドーム状に膨れ上がった魔力障壁がボロボロになった街を守っていた。しかし、障壁のドームを囲い込む様に人族の兵士達が一斉にネクロムを発射し続けている。おそらく、崩落するのも時間の問題だろう。
「人族の兵士は約10万、その全てがこのカラストフへ集中しております。現在我々の軍勢も退行はしておりますが、魔力障壁の生成で時間を稼ぐ程度。ネクロムによる砲撃で街にも多大な被害が出ております。」
「ここが第一線というわけか」
迷宮からは多大な資源、マジックアイテムに装備も出現する。それらを求めて人族はいち早くこの都を奪取したいと言う。その為、遠くから見ても魔力障壁に向かって次々にネクロムが撃ち込まれている。街を取り囲む人間達も、虫の数ほど沸いているのがわかる。これは、本当に戦争なのだなとドーモンは理解した。
「そうか。丁度いい、お前達はそこで見ていろ。」
『「「「はっ。」」」』
崖の上に魔王達を残し、壊れた街の正門へと歩み出すドーモン。人間たちの背後へと徐々に近づいていく。
(さて、ここからは賭けだ。俺のこの能力がどこまで通用するのか。)
使用するのは【外殻創造術】自身が触れた箇所から、内部が空気で埋まった最硬の外郭を自由に生成する能力。代償は、HP。イメージするのは、街の外を囲い込む巨大な鉄格子。全てを囲い込んで逃さない様な、そんな形状をイメージする。
「フンッ。」
地面に両手を着けると同時に、異様な勢いで噴出する黒い液体。それは元となる液体であり、これが固まる事で異質な硬さを誇る外殻が完成する。力任せに発動しまくった事で、液体は街を取り囲むように地中から噴出。その結果、何人も逃さぬ黒い鳥籠が、十万人以上いる人族の兵士と共に街を囲んだ。
(この能力ってこんな使い方も出来るのか。やっぱ凄いな、もはや外殻とかよく分かん無いが。消費するのはHPだけだし、今後も使えそうだ。)
能力を確認し、自身のHPが100万ほど減っているのが確認できた。しかし、まだまだ余裕はある。
「【絶対魔力吸収】」
範囲内全ての魔力を吸収し、魔法の使用を絶対に禁じる能力。
スキルの使用と同時に、ドーモンの掌の上には小さな球体状の膜が出来上がった。
そして、イメージ通りにこの鉄格子内部を全て埋め尽くすほどにその球体は膨れ上がる。
街や人族、魔族さえも全てをその球体は飲み込んでいく。街を囲む障壁は消え去り、そうして出来上がったのは。
(初めて使ったが、砲撃が止んだのを見るに。勝ちか。)
魔力が一切存在せず、逃げる事もできない完全な包囲網。攻撃手段は、物理的な手段しか存在しない。
魔族は魔力がなかろうとも、その体に秘めた筋力や力は人間を凌駕する。
ドーモンはマントをたなびかせながら、正門へとたどり着く。
発動するのは【邪神的威圧感】効果は、邪神らしい威圧感とオーラを周囲に強調する能力。
発動されたそのオーラによって、全ての人間が正門へと近寄る異質な邪神へと気づく。
「な、なんだあの禍々しいオーラは!!」
「新しいネクロムを準備しろ!早く!!」
「ダメです!!!!全て壊れています!」
狼狽える人間達を見て、思わず内心ほっとする。ネクロムさえなければ、物理攻撃で人間が魔族に勝つことはほぼ不可能。そもそもの質が違う。だが、ドーモンのその予想は裏切られる事となった。
「はっ、神父様を恨むぜ。」
カキン、という音がした。たった一瞬、見切ることすら出来なかったその一閃。
知らぬ間にドーモンの後方にその男は立っていた。そう、この男は既に攻撃を終了していたのだ。
ゆっくりと振り向き、その男の方へと視線を向けた。すると、その男の背後から新たな人間が2人。
「よお、当代の邪神様。俺達は人族正教の執行者、フィアリィ。」
「アルマンド」
「ゴードラ」
白いコートにフードを深く被った男達。その手には十字架を模した剣が握られているが、既にフィアリィの持つ剣はひしゃげていた。おそらく、それを持ってドーモンに対して攻撃を仕掛けたのだろう。
「邪神自ら赴くなんて前代未聞だな、どうした?アンタが出張らなきゃ勝てないほど、追い詰められてるのか?魔王軍は。」
「玉座に座り、ただ指示を出すだけの行為などこの状況では……無意味。追い詰められてるというよりは、追い詰めているのだ。この言葉の意味が、理解できるか?人族よ」
ドーモンの投げかけたその言葉は、フードの3人を驚かせた。無論何が原因で驚いたのかは、邪神本人は全く理解していないのだが。
「……成程。想像以上の異質さだ、歴代の邪神とは桁が違う。ここは引くぞ。」
「よろしいのですか。カラストフを捨て置いて」
「はっ、所詮貴族共の機嫌取りの道具だ。今重要なのはこいつの存在を知らせる事。」
距離を取り、腰から何かを取り出した3人組。どうやらなんやからの手段を用いてここから退却するつもりの様だった。流石に何も攻撃出来ずに帰られるのはどうなのか?そう考えて、威圧感を纏わせたドーモンは一言それっぽい言葉を告げた。
「お前達の飼い主に伝言だ。『幼稚な考えは今すぐに捨て去れ、さもなければ。』とな?」
「っ!!!!」
言葉を聞いて口を歪めたフィアリィ。取り出した球体を地面に投げつけ砕けた瞬間、3人の姿は既になかった。
「さて、どうするか。」
向き直り、正門の前に並んだ兵士達を見てそう嘆く。なぜなら、既にこの兵士達の戦意は存在していなかったからだ。
「そ、そんな……!?ネクロムも使えず、執行者様まで先に退却など……!」
「ど、どうすれば……」
先程の3人組はそれ程までの存在だった様で、このカラストフを強奪しようと考えていた人間達は皆武器を捨てた。丁度いい、と考えてドーモンは四重に威圧感を纏わせ、言葉を告げた。
『人間共に告ぐ。反抗する意志のある者は死を以って、降伏する意志のある者には生を以って慈悲としよう。俺は慈悲深い、お前達は幸福だな。選択できる余地がある。』
どんな理屈か知らないが、ドーモンは自身の発する声が妙に大きく感じた。そして、その声を聞いたすべての人族は武器を捨て、その場にうずくまった。まるで何か化物を見たかの様に震え上がって。
穴の空いた正門を潜り、街の中へと入る。既に住人は全て、膝を突きこちらへ頭を垂れていた。本当に邪神というのは崇められるべき存在の様だ、と感じたドーモンは街の中央へとたどり着き、指示を出した。
「人間共を全て生きて捕らえよ。ネクロムは全て押収する、理解したか?」
「「「了解致しました、我らが邪神様。」」」
街の人間全てが同じ言葉を発するその光景は、余りにも現実離れしていた。思わず恐怖をかんじ、邪神ってなんなんだよと考えるドーモンだった。外殻を使用し玉座っぽいのを作り、そこに座りながら目を瞑る。まるで長考しているかの様に居座った。
(とりあえずカラストフは奪還したし、これで人質もゲットした。あとは作戦通り動くだけか。)
ドーモンの考えていた最初の作戦は、人質を使ってネクロムの使用を禁止する様に人族に向けて脅しをかけるというもの。相手がもし人質を無視して、ネクロムを使用した場合即座にすべての人間処分する。そう言って脅しをかけるつもりだ。
しかし人族がもし、この兵士という人質を蔑ろにしても良いという場合でも。この作戦はただ邪神の力の一端を、人族へ見せつけたという脅しにもなる。ただ1人で街を救い、ただ1人も殺さず制圧したのだ。実績があればまた、言葉にも重みが増す。これで魔王達に舐められることもないだろう。
(これで邪神を脅威に思って、ネクロムの使用に少しでも抵抗力が生まれれば。この勝負、俺の勝ちだ。)
安易だが、脅しや人質は非常に有用だ。そんな事を考えていれば、1人の魔族が近くに寄ってきた。
「邪神様、指示を完了いたしました。」
「そうか、御苦労。では、魔力は解放しておく。」
「感謝いたします。」
指を鳴らすと同時に、街を覆う魔力吸収の膜と外殻は消え去った。魔力を解放すればネクロムが使用できるんじゃないかと考えたが、この魔力吸収によって既に全てのネクロムは壊れていた。解放しても、問題はない。
「魔王共、帰還するぞ。」
『「「「はっ。」」」』
知らぬ間に近くにいた魔王達に指示を出し、拠点へと帰還する。
◇
瞬きする間も無く、謁見の間へ瞬間移動され玉座に座る。既に魔王達も話を聞く準備が整っていた様で、知らぬ間にアルスメイアも並んでいる。
「先程の人質を使用し、ネクロムの使用に脅しを掛けろ。」
「既に、済ませております。明日までには、返答が来るかと。」
既に考えを理解し、事を運んでいたライオン頭の魔王。本当に手が早い。
「これで少しは奴等の考えも変わるだろう。この俺を脅威と認識していない節が奴等にはあったからな。」
「人族にとって千年という期間は長い、故に邪神様のお力を正確に認知できないのでしょウ。」
魔族にとっては爺ちゃんの話で聞いたことある、くらい身近。しかし人族の寿命は身近い。邪神が本当に存在するかも怪しい、そう考えていたのだろう。だからこそこうして侵攻を開始していた。しかし既に邪神の存在は人類に知らされた筈。
「俺はこれから少し調べ物をする、何かあれば言え。では、励めよ魔王達?期待している。」
「「「感謝いたします。」」」
堂々と謁見の間から出て、自室に向かう。既に自室のテーブルには、食事が用意されていた。内容は特に変な物も入っておらず、無駄に豪華な肉とキラキラしたパンにツヤツヤのスープだ。材料が何か分からないが、美味しいので特に文句は無い。
(はぁぁあ……疲れた。いや体力はあるが、こう何というか演技に疲れた。)
食事を済ませてベッドに寝るドーモン。そして、枕元にある日本語の忍術書をまた読む。
(とりあえず返事が来るまでは、この本を読んで少しでもこの世界のことを知らなければ。)
全て読み終えるのには結構かかりそうだが、返事が来るまでの間出来ることは少ない。古風な日本語を読み解いて、この世界をより知っていこう。
(かなり掛かりそうだ。)
◇
「さて、集まったかな。これより情報共有を伴った事態の整理を行う。」
6人の魔王達は円卓に集まっていた。老龍の魔王、ヒャグレスが最初に声を出し事態を整理する。
「分かりやすく1から説明するかな。まず最初に人族がネクロムを秘密裏に量産、流布し反乱を起こした。」
最初に反乱を起こしたのは人族であり、その理由は資源の略奪と魔族対する不信感だけが理由。あまりにも身勝手なその侵攻だったが、事実としてネクロムの脅威は計り知れなかった。故にたった2週間で均衡は崩れ多くの町が占領された。そして、邪神の召喚という最大の一手を取った。
「さて、今回の一件で迷宮都市を奪還した。あそこの管理は確か、ライアルの管轄じゃったかな。」
「ええ、今回取り戻したカラストフには既に部隊と物資を派遣。既にあそこは我ら魔族達のものですな。」
「んで?街一つ救って、そのあとどうすんだ?」
声を上げたのは、事態を知り得ないアルスメイア。ヒャグレスは杖を出して、円卓の中央に映像を映し出した。
「今までは、人間はネクロムが有れば魔族への侵攻は簡単だと考えていた。しかし邪神という存在を目にして、奴等の考えも少しだけ変わる。難敵としてな。」
人族は魔族に対して、ただ魔術が得意なだけの魔物に似た種族としか考えていない。脅威なのも魔王達のみであり、数さえいればその魔王さえも脅威にならないと考えていた。実際ネクロムを数百も揃えて魔王に挑めば、何人かの魔王は散るだろう。しかしそれが、できないとしたら。
「じゃあアイツらも一回は尻尾巻いて逃げるわけか。それでクリアってわけじゃねえけど。」
「ああ、奴等も一度起こした戦火は消えん事を知っている。それに、火種を放ったのは奴等人族の方。今さら手のひらを返して降参はせんじゃろう。」
そこでと銘打って、ヒャグレスは言った。
「邪神様の申した【アレ】を人族が見つける可能性がある。」
「アレってなんなんですか?」
『神話級の魔道具とか?』
ヒャグレスは首を横に振り、円卓の上に紙切れを取り出した。
「先代龍魔王、ワシの父ディアノフは先代邪神と同じ時代に生きておった。そして、死ぬその直前にこの紙切れをワシに授けたんじゃ。」
「ディアノフ殿、先代邪神の右腕にして最強の魔術師カ。聡明でありその考えは先代邪神に並ぶとも。」
「それで?何が書いてあったんですか?」
杖を振ると同時に、円卓の中央の映像が切り替わる。それは、ネクロムについて。
「まずその説明をするためには、ネクロムについて知り得なきゃいかん。まあ魔術的専門用語が少しあるが、軽ーく理解してくれ。」
「難しい話俺わかんねえ」
『はっ、子供ね。』
「ぁあ!?」
ゴタゴタと喧嘩するアルスメイアとホロカリアス。
半分無視して、ヒャグレスはネクロムについて説明を始めた。
「まず、ネクロムは最小限の魔力で最大限の攻撃力を生み出す。その最小限の魔力というのが、まぁ量で言うと5くらいじゃな。」
「ああ、そのせいで誰でも使えちまうし微弱すぎて魔力も吸収し辛え。それは知ってる。」
うむと頷き、解説を続ける。
「魔力を込めると、内部で魔道具が反応し低位の転移門が開かれる。出口はネクロムの砲身の先であり、距離にして指一つ分程度。本当に些細な転移じゃろ?そこで、転移門の中に小さな火の玉が入り込む。その瞬間、転移門が消滅する仕組みになっておる。」
「あ?つまり……ゲートに火の玉が入った瞬間、ゲートを消すって事か?意味なくね?」
「そう、結果として。なぜか小さな火の玉が、空間を破り異常な勢いで破裂し、砲弾のように放たれる。」
ドーモンがいれば、一種のゲームのバグみたいなもんだな。と思うだろう。そして思わず、それ銃と仕組み全然違うじゃん。と叫ぶだろう。
「そこで重要なのが、空間が破れる瞬間に裂け目が発生する事。この瞬間内部は強烈な魔力反応をする。」
「空間が破れるの、そんな事が起きんのか。」
「先代の邪神様もそこに気づかれた。しかし通常のネクロムでは空間裂け目が小さく、確認しづらかった。そして、意図的に巨大なネクロムを作り上げたんじゃよ。」
巨大なネクロム、もしもそんな物で作り出したら結果がどうなるかなど目に見えている。異常な破壊力を保有するのだと、そう考えていた。
「この紙切れは、その巨大なネクロムを使用した実験。その跡地の場所じゃった。」
「跡地の……?」
「場所?」
「そう、実験の場所。それが、カラストフの迷宮の隠し階層。」
ヒャグレスは立ち上がり、転移の門をもう一度開けた。
「百聞は一見に如かずと、父上は言っていたな。」
「どういう意味だ?」
「聞くより見た方が早いって意味らしいのう。」
◇
「なっ……!?」
「これはっ…………なんという魔力濃度。」
迷宮隠し階層、そこは地下だというのに月の光が差し込む。一見するとただの草原であり、外のような不思議な階。そして最も異常なのはその魔力濃度。空気中に溢れる魔力が異常の一言だ。
「長居は禁物、アレがその実験の跡地。次元の裂け目じゃよ。」
草が生い茂るその草原にポツンと空いた、超大型のクレーター。そしてその中心にあるのは、次元の裂け目。大きさにして人間1人が入れる程度。
「なんなんです?あの裂け目。中に何が?」
「分からん。さっぱりじゃ。」
「はぁ!?分かんねえのかよ!それっぽいこと言ってたのに。」
膨大な知識を誇るヒャグレスでさえ理解できないその次元の裂け目。その先は黒くて何も見えない。
「巨大ネクロムを作り出し、使用した瞬間。爆発と共にネクロムが消失、代わりにクレーターとあの次元の裂け目が出来た。ヒャグレス殿から最初に聞いた時はびっくりしましたぞ。」
「ああ、最初見た時は……剣一本入る程度の大きさじゃった。」
ライアルは一足先に、ヒャグレスからこの場所を聞いていたようだ。そしてその時はまだ、剣一本入る程度の大きさ。しかし今は数倍にまで広がっている。
「人族がネクロムを使用した2週間前から、あの次元の裂け目は肥大化したんじゃ。」
「元々は通常より高いだけだった空気中の魔力も、それに応じて上昇している。本当に、何が起きてるのかこっちが知りたかった。」
「我も永く生きているが……こんな物は見た事がなイ。」
『何か、よくない感じがするわ……。』
異様な空気感に魔王達も圧倒されつつも、アルスメイアは築いた。
「邪神が言ってた……人間共もアレの存在に気づいているってまさか。」
「執拗に人族が狙っていたこの都市。しかし全軍を持ってここを攻撃しないのは、何かに気づいてしまわぬようにか。どうあれ、邪神様はこの迷宮を自身の手で取り戻した。」
「邪神自らが存在を認知させ、あえてこの場所を奪い返した。この次元の裂け目には……邪神様にしか知りえぬ何かがあると?」
ドーモンは知らぬ間に、偶然にも言い当てていた。
「此処のことは禁書庫にさえ記されていない事は確認済み。実験は行ったが、場所はワシ以外誰にも伝えていなかったはずじゃ。当代の邪神様は末恐ろしいことに、ただの推論だけでこの場所を奪った。あの場から一歩も出ずに、たった1日で。偶然とは思えん。」
「は……なんだそりゃ……それじゃほんとに神じゃねえか。この次元の裂け目には、ナニカが隠されてるって事か。」
日に日に肥大化する次元の裂け目、何も知らない邪神ドーモン。
「そういや、オルドレアが言ってた災厄の獣ってのは……?」
「ああ、アレはコチラとは関係ないだろうガ。先代邪神の時代よりも遥か昔、五千年も前である神話の時代。その時代の石板に記されていたのだ。【千年の周期によって、災厄の獣は芽吹き成長する。】と。」
オルドレアは語る。その他出土した石板にはその様なことは書かれておらず、ただ一枚にのみ書かれていたと。皆絵空事だと言っていたが、オルドレアは邪神の言葉で確かに確信した。この時代に必ず獣は現れると。
「分かんねえことだらけだが、邪神は全てお見通しってわけか。」
「ホッホッホ、底知れぬお方よ……千里を見抜くその知略。彼の方が召喚されなければ、この世界はどうなっていたか。」
「本当に、恐ろしいですね。」
『まさに邪神に相応しい。歴代の邪神でもここまで秀でた頭を持つのは、ドーモン様だけでしょう。』
ドーモンの知らぬ間に、信頼度と期待とハードルは異常なまでに上がっていた。もちろんこんな次元の裂け目が存在する事など、知る由もない。ドーモンはただネクロムの使用をどうにかして禁止にさせたかっただけだ。