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にゃんにゃんこ
《にゃんにゃんこ》
「な、なあやめとこうって。いくらにゃんにゃんこがにゃんにゃんこだからって、にゃんにゃんこのウソをつくのはよくないって……」
そんなに心配することないって、そんな臆病者に育てた覚えはないからいくわよ!
「気が進まない……」
にゃんにゃんこだー!! にゃんにゃんこが出たよーー!
「ああ、またボクも怒られるのか……」
呼び出されたあとで彼とこってり絞られた。曰くにゃんにゃんこは神聖であるゆえ、ウソをついてはいけないという。別にいいじゃん、あたしは他の人と感覚が違うみたいで、にゃんにゃんこを崇拝してないし、頭おかしいとすら感じてる。そも存在するか自体危うい対象を崇めるとか。まだ偶像崇拝の方がマシよね。
最近他のにゃんにゃんこの村が襲撃され、住民は全滅したと聞いた。他に、にゃんにゃんこの村があったことにも驚きだが、この事件でにゃんにゃんこについて触れられてないあたり、その身を呈してにゃんにゃんこを守ったのだろうが、控えめに言って狂っている。宗教的な怖さだね、これは。
そうして来るべき時として、この村にも襲撃者の集団が現れた。世間も過激になったもので。噂に聞いていた奴らかどうかは知らないが、ここはあたしが一肌脱いでやるとしよう。あたしは今までにゃんにゃんこが現れたと騒ぎ立ててきたため、あたしの声を信じるものなぞいないはずだ。さしずめあたしは狼少年というわけだな。あたしの犠牲のみで狂っている村とはいえ、救えるのなら儲けものだろう。
にゃんにゃんこだー! にゃんにゃんこが出たぞー!!
その声に襲撃者がこちらを見て唖然とする。あたしの顔に何かついてるのかと思えば、あたしの斜め後ろ上方から降り注ぐ光。振り返れば一一
《にゃんにゃんこ》
まさかのにゃんにゃんこはいたのだ。
にゃんにゃんこ曰く、あえて素行を悪くし、この事態を予期して自分を犠牲にするつもりで、狂人を演じて備えていたことに、一人で戦っていたことに感涙したという。いや、あたしは事態を予期してはいたが、この村が狂っていると思ってるのは事実である。が、わざわざ言うこともあるまい。
そんな健気なあたしのために、力を貸してくれたというわけだ。 他の村人が出てきていないのも都合がいいという。
え、襲撃者? にゃんにゃんこのひと振りで次の瞬間にはミンチよ。人ってあっけないね。にゃんにゃんこ様々ですよ。ほんと。
それからあたしは救われた恩義も感じているため、そこそこにゃんにゃんこに祈りを捧げた。その結果なぜか懐かれた。いや、あたしじゃなくて、もっと熱心な他の信徒にしたらと言ったら、それは違うと言われた。一体何が違うのか。
《にゃんにゃんこ》
にゃんにゃんこ