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にゃんにゃんこ
『にゃんにゃんこ』
「なぁ、にゃんにゃんこってほんとにいるのか?」
恐らく実在するのでしょう。ネッシーだとか雪男なんかは作り話の域を出ることはないでしょうけど、にゃんにゃんこに関しては世界的に表立ってプロジェクトが進められていて、その中心にいる存在が架空の存在でした、なんてことが起きては信用を失いかねないもの。活動資金の根源は国民……いや、全世界の民の税金なのだしね。
「んー、そういうことじゃなくてね、単にいるのかなーっていう話ね」
感情論で語ってもいいとするなら、にわかには信じ難い話でしょう。様々な憶測の飛び交うにゃんにゃんこの生態、いくつか挙げていくならば、実は神様が人間界に降りてきた姿であるとか、スライド移動しながらスパゲッティを食べているとか、六法全書を積んだ上に逆立ちする罰当たりだとか、高所を好んだ結果、ブルジュ・ハリファに住み着いたとか、年代物のワインしか飲まないとか、聖母マリアの優しさも兼ね備えてるとか、容姿に関しては並みだとか。まあ前提からしてあれだから、神様は置いておくとしよう。他の要素がいっしょくたんになった生物想像できる? できないでしょう。つまりはそういうことね。
「なー、ユリねぇは実はおれがにゃんにゃんこだって言ったら驚くか?」
いやー、どうだろ。まあ高いとこ好きだし、登っちゃうしそうなのかもね。
「さすがに反応薄くないの」
もしもの話でしょ。それにね、別ににゃんにゃんこであろうとなかろうと、ユウくんはユウくんなんだから。自信持ちなさい。それにね、にゃんにゃんこが自ら正体を明かさないのには訳があるのよ。そんな奇天烈で珍妙な生物、世界中の研究者がこぞって競り落としてモルモットにする他ないでしょう。世界規模でプロジェクトが立ち上げられているというのもあってか、日本だけであればまだ人道的な対応で済んでいたかもしれないけれど……これ以上はやめておきましょうか。私はね、ユウくんに限らず私の身近の人はにゃんにゃんこであって欲しくないのよ。多くは望まない、今まで通りの生活ができればそれでいいの。ピースが欠けることのないよう。ほら、抱きしめてあげましょう。
「あったかい……」
ユウくんがにゃんにゃんこについて切り出したのには、何か理由があったのでしょう、しかし私がそれを聞くことはありません。なぜならにゃんにゃんこもまた一人の国民なのだから。ユウくん自身がにゃんにゃんこであれ、周囲の誰かしらがにゃんにゃんこであれ、その生命を脅かされてはならないのです。そして私に相談したところで、どうすることもできないのです。私もまた無力な一人なのですよ。頑なに、にゃんにゃんこの影を否定するのはこういうことです。こんな私を許してください。
「ううん、違う。ユリねぇは優しいから、見ず知らずのにゃんにゃんこのことまで心配して、でも責任をとれないからって苦しんでるだけ。大丈夫、にゃんにゃんこは身体能力に優れてるって聞くから、それに頭もいいみたいだし、 実はユリねぇの近くにも隠れているかもしれないな」
だといいのだけれど。私は何処にいるか気がつかないわ。このまま平和に暮らしていけるといいわね。
「にゃんにゃんこは滅多に現れることはないし、争いを嫌い、今日も気ままに生き続けている。世界の捕縛機関に捕まらなければの話だけどね。ちなみに捕縛機関はまだ一匹も捉えられていないようだ。神とまで噂される存在を制御しようというなど、傲慢にも程があるよね、まったく」
『にゃんにゃんこ』
にゃんにゃんこ