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今宵、勇者になる君へ  作者: みるぽん
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その小さき手に大きな世界を

保育園に通う3歳の男の子リョウ。

豊かな感受性の持ち主。

思ったまま行動する事で、大人に叱られる毎日を過ごしている。

自分を理解してもらえない事に、苛立ち、不安、孤独……と心に石を積み重ねてしまっている。

しかし、その感受性故に呼び寄せてしまった使者により、異世界の存亡を託される事になってしまう。

大人は子供をバカだと思っている。

自分を客観視することもなく、全てを正義と信じて、感情のままに向かってくる。


ボクは、気がついている。

どういう感情を抱いて、ボクにそれを強いるのか。

わかっていても、ボクには対抗できる術がない。


だって、ボクはまだ3歳で、保育園児だからだ。


頭でわかっていても、表現する言葉と方法がわからない。

先生がみんなの前でボクを叱責する。

そしてお決まりのセリフを声高らかに叫んでいる。


「リョウ君!どうして、みんなと同じ様に出来ないの!!」


ボクはいろんな感情がぐるぐるで、口に力を入れて涙が出ないようにするので精一杯だった。


そして、迎えにきた母に、先生は鬼の首を取ったかのような形相で、苦情を山のように言っていた。

ボクは申し訳ない気持ちで、母の手を握りながら聞いていた。


母はその場で、ボクに何も言わなかった。

ボクは(怒られるだろうな……)と少しばかりテンションが下がった。


しかし、母からの言葉は予想外に「公園によって遊んで帰ろう」というものだった。


ボクは公園が大好きだ。

滑り台で1人戦いごっこ。

架空の剣を手に、滑り台から駆け降りては、敵を蹴散らしていく。


保育園で友達と戦いごっこをした時は、服を汚した事を先生にこっぴどく怒られ、以後園内戦い禁止となる事態が発生してしまった。

子供は泥んこで遊ぶものだというのは、子供の言い分だったようだ。


今日の先生の小言の記憶が薄くなってきた頃、母から「理由」を聞かれた。

そうだ。あの時は涙が出るのを我慢する事が第一だったので、その涙の理由を自分自身受け止めれていなかった。


みんなで観ていた「人魚の話」

叶わない想い。捨て身の献身。伝えることも出来ず最期は海の泡となる。

可哀想過ぎて、途中でその場にいることすらつらくて、1人だけ後ろ向いて耳を塞いだんだった。

先生は「前を向きなさい」「ちゃんと観なさい」と怒るばっかりで、こんな悲しい話をどうやったら普通にみれるのかは教えてくれなかった。


母には「……かわいそうだったから」と、ようやく言葉として表現できた。

「そっか。優しいね」とそれ以上は何も言わなかった。


母がそれ以外何を思ったか、言葉を返すべきだったけれど、今は怒られなかった事による安堵感の方が大きかった。


仕事、家事、子育て、生きること、それだけで毎日いっぱいになってしまう。けれど、ふと、子供と同じ目線で世界を見ると……忘れていた何かを揺さぶられる。

きっと、大人の常識では考えられない世界で子供たちは戦っている。

守るべき子供たちは、その小さな手で誰かを守っている。

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