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【本編完結】愛だの恋だの面倒だって言ってたじゃないですか!  作者: ぱっつんぱつお


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(本当は閉じ込めてあげたい)


「千聖さん、あそこのベンチが丁度日陰になって涼しいんですよ。出来立てのうちに食べましょう!」

「そうだね! 匂いテロでお腹空いちゃったよ〜」

「あっ! ちょっと待って下さい! こういう時はハンカチ敷くんですよねっ!」

「ふふ、ありがとう」


 ミハエルほどスマートではないが、そういうところもグレンらしくて可愛らしい。

 改めて紙袋から取り出したラップサンドは丁寧に食材を包み、見た目もカラフルで前の世界でも映ていただろう。

(てか、ピンクとか水色とかなんの野菜なんだ……)

 はむ、とひとくち食べると口の中いっぱいに薫るハーブ。ホクホクの多分ポテトと、シャキシャキの多分たまねぎ。


「おっ、おいしい……! 感動!!」

「よかったー! 千聖さんの美味しそうな顔とっても可愛いです!」


 とても恥ずかしいことを言っているグレンだが、君の方が可愛いよとくさい台詞が出そうなぐらい、かぶりついているグレンが可愛い。


「僕のもひとくちどうですか? 次は2ヶ月先ですから是非食べてください! 折角なので食べてほしいです!」


 間接キスを自然に勧めてくるのだが、このきらきらした瞳で言われると断れない。ある意味ズルい男だ。でも確かにちょっと食べてみたい。


「じゃあ……お言葉に甘えて……、代わりに私のもどうぞ」

「わーい! やった! いただきます!」


 どうぞと差し出したのだが、この男まさかそのまま私の手から食べやがる。これでは『あーん』と一緒じゃないか?

 流石に傍から見たらヤバいのではないか。周りにも似たようにランチしている人は居るし、大きな木が死角になっているので周りから見えていないといえば見えていない。

 そして「さ、僕のも、ほら、あーん」と言って差し出してくる。

(いや、あーんって言ってるじゃん! え? 私もそこから食べなきゃいけないやつ?? え??)


 ちょっと困っていると「あ……ごめんなさい、嫌でしたよね……」とそんな悲しそうな瞳をされたら食わないわけにはいかないだろうが。


「ううん! 食べる! いただきまーす」


(あぁ〜、私まんまと誘導されている〜、グレン君もしかして全て計算してる……?)

 侯爵家の長男で上位神官なのだから頭は相当良いはず。そう考えるととんでもなく恐ろしい男だ。


「んーっ、こっちもおいしい!」

「でしょうっ!? 次は違うもの食べましょうねっ!」


 さらっと次の約束もするあたりこの男は侮れない。

 やはり攻略対象者(的なイケメン)はヤバいということが今日改めて分かった。


 食事も終わり、グレンと紅茶を飲みながら暫しベンチで話していると、「千聖様?」と何処かで聞いた声。みると護衛騎士のカイだ。

 仲間3人で、同じく屋台のサンドを食べていたのか手には紙袋のゴミを持っている。


「は? なんだよカイ、お前どこで神官の女と知り合ったんだよ」

「彼女居るくせにズルくね!? 俺に紹介しろよ!」

「ばっか、違ぇーよ! 口を慎め! こちら来訪者の天宮 千聖様だよ!」


 初めましてと挨拶すると、血の気を引かせて「「もっ申し訳御座いません!!」」と敬礼。


「そんな畏まらないで下さい。私だって普通の人間なんですから」

「優しいお方だからこんなことじゃ怒らないぞ、千聖様は」


 にこりと笑えばほっと胸を撫で下ろすカイの騎士仲間。

 自己紹介と、グレンも交え屋台の話などしていれば、「あっ、そうだ千聖様!」と騎士のカイ。

 照れた様子で頭に手をやる。


「あの〜、その〜、私、実は、アニーと付き合う事になりまして」

「ええっ! アニーって、あのアニーさんですか!?」

「はい〜、なんと言うかその、千聖様は僕達のキューピット的な存在なので、ありがとうと、ひとこと言いたくて」

「わー! それは恥ずかしいけどおめでとう!」

「あ、あの、ありがとう御座います」


 誰の事だろうと首を傾げるグレンに、私が初めてここへ来た時にお世話してくれたメイドだと説明すれば、「そうなんですね!」と可愛い笑顔で納得する。あまりの可愛さに相手が男であるにも関わらず騎士3人はポッと顔を赤らめた。


「アニーさんにも会いたいから今度遊びに行くねって伝えて下さい!」

「勿論です!」

「あ! あと、個人的にカイさんにお願いがあって……、私、城下町に行きたくてその時護衛を頼みたいんですけど、今度お時間頂けます?」

「千聖様の護衛なら喜んでこの私が引き受けますよ! いつですか?」


 カイは他二人にまるで自慢するように、胸に拳を当て背筋を伸ばした。

 自慢されるような人間でもないが、来訪者を護衛したという事自体が名誉なことなのだろう。来訪者って本当に面倒だけれど、誰かが付いてくれているだけで安心できる。


「日付はまだ決めてないのでまた伝えますね、助かります! ありがとう御座います!」


 ではまた、と護衛騎士の3人とお別れして、グレンと私も神殿へ戻るため立ち上がった。此処から神殿までは15分程掛かるのだが、食後の運動には丁度良い。


「グレン君、ハンカチありがとう」

「これぐらいどうってことないです! それより、僕も千聖さんを案内したかったなぁ……」

「城下町?」

「はい……」


 しょげているこの姿もすべて計算なのかと考えるとゾッとするが、可愛いものは可愛い。

(羨ましいなぁ、こんな風にかわい子ぶれて。私もこれぐらい出来たらなぁ)

 弟妹(ていまい)がもし居たとしたらこんな感じなのかな。一人っ子なのでキョウダイというもの自体謎過ぎる。しかしグレンは侯爵家長男か。謎の弟キャラだな。


「しょうがないね、まだ私が慣れてないから」

「千聖さんは悪くありません! 僕が弱いから悔しいんです!」

「弱くないでしょう? グレン君はむしろ強いよ、ここまで頑張ってきたんだから」

「でも、騎士じゃないから、千聖さんを守れない……」

「うん?」


(なんかよく分かんないけどこいつ依存しすぎじゃあないか? 狂気的に私のこと崇めてるのかな? どうしたのかな?? 何なのかな??)

 落ち込むグレンの背中をさすって(なぐさ)める私は一体何をしているのだろうか。私のことを守れないと嘆いている男にわたし自ら慰めるとは、どういう状況なのか。

 同じ事を二度言ってしまうぐらいさっぱり分からない。


 因みに騎士といってもこの国の騎士は2つあり、ひとつはカイが所属する対人の騎士。もうひとつは対魔物の騎士、こちらはハント公爵が率いている騎士団だ。

 なので城下町へは対人向けに訓練された護衛騎士に付いてもらう。騎士も神官と同じく高級取りなのだが、(対魔物の騎士団は特に)見なくても分かるぐらい危険と隣り合わせなので、ある程度覚悟を決めた者しか入団しないらしい。

 裏を返せば神官の仕事は貴族に舐められているという事だ。


「騎士だったら、僕達たったふたりで、何処へでも連れていけるのに……」


 ぼそっと呟くグレン。

 言っていることが流石にやばすぎる。これ以上突っ込まないでおこう。うん、とだけ言っておこう。


「うん、そうだね」


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