第三話 武器の発注
今日は二話投稿します。
あれから三日、俺は町に来ている。
いつもは森の浅い所にある洞窟で暮らしているが3日前は大物を仕留めたので売りに来た。
売る場所は決まっており、冒険者ギルド以外に売れば罪になるのでほとんどの者は普通に冒険者ギルドに売っている。
また、素材として鍛冶師の所に持っていく時もギルドでC以上は狩ってきたものを見せなければならない。
…久しぶりに来たな。
前来た時から1年ほどは経っているがエイレーンと居た時以外は嫌な記憶しかないためそこまで思い入れは無いが、何か来るものはある。
そして扉を開く、誰が入ってきたのか一瞬視線が集まるがそこまでの実力者では無いと分かるとすぐ談笑に戻る。
俺はその中を突っ切るかのように買取受付の前で止まる。
「買取を頼みたい」
そう言いコボルトやオークの魔核の入った大きい袋をドンッ!と受付に置いた。
「冒険者資格はお持ちでしょうか?無ければ差し引き三割になりますが」
黙ってカードを差しだす。
それと同時に変異オーガの魔核とオーガの骨を出す。
「こっちは個人用だ」
「…少々お待ちください」
そう言い1年間貯めたコボルトやオークの魔核とオーガの魔核を職員が二人がかりで持っていく。
俺はそこら辺の椅子に座り、時間が掛かると思うので料理を頼み、待つ。
ちょうど食べ終わった頃に俺を呼ぶ声が聞こえ、席を立ち聞きに行く。
「査定が終わりました、金額は半金貨1枚、銀貨72枚と銅貨98枚です」
57万2980円か、これで新しく剣を作れるだろう。
「分かった、袋に詰めてくれ」
骨とオーガの魔核を返してもらい、お金を受け取って早足にギルドを出る、理由は早く武器の注文をしたいからだ。
そのままの足で剣が壊れた時に買う鍛冶屋に入る。
「カツジン!いるかっ!」
待つこと五分、目的の人が現れる。
「久しぶりだな、今日は何の用だ?」
俺はオーガの魔核と骨を出す。
「これで剣を作ってもらいたい」
カツジンの顔が少し険しくなる。
「…何故だ?実力に合わない剣は身を滅ぼすぞ」
そうなのだ、今まで身体能力が足りず魔剣の類いは使えないでいたのだが、それが今日は作って欲しいと頼みに来ている。
才能がある者は平然と聖剣、魔剣を使えるのだ、それが俺には無かったので使えるずにいる。
「…見た方が早いか、広場を借りるぞ」
そう判断をして剣の試し斬りをする場所に向かう。
「これから何をするんだ?」
「前言っていた【魔闘】を使えるようになったんだよ、って言っても五秒も今は使えないがな」
「!?…本当か?それが出来るならばあるいは…」
「まだまだ身体能力は上がるはずだ、今使えなくとも使えるようになる日が来る」
俺は断言して言う、その確信があるからだ。
「…わかった、丸太を切れれば剣を作ってやろう」
幸いにも俺は筋肉痛になっても治りが早く、既に完治している。
その後は無言で広場に行き、カツジンは軽々と丸太を持って現れた。
「これを切ってくれ」
「集中をするから掛かるがいいか?」
一応確認を取っとく。
「構わん、その技術は戦闘でも使えるのだろう?なら問題は無い」
俺は返事をして集中をしていく。
混ぜる時は一気にやらなければまだ体が持たないので集中をする必要があるのだ。
血に流れている魔力均等に流し、下腹部に溜まりやすい闘力を今は魔力とは別に全身に流す。
戦っているときでは無いので一瞬には出来ないが繰り返していけばこの技術と身体能力も上がるので一石二鳥だ。
その次は剣だ、これは体に流すより難しいのでそこそこ時間がかかるが一分で終わる。
…今だッ!
一気に魔力と闘力を結合させて剣を振り下ろす。
丸太はバターを切るかのように真っ二つに切れ、まさかここまで簡単に切れるとは思っておらずそのまま地面に叩きつけてしまう。
剣はそのまま抵抗なく行こうとするが既に【魔闘】は霧散させたため県は半ばが土に埋まり、止まる。
オーガの時は必死で気づかなかったがここまで威力があるとは…
さすがに地面を切り裂いた時は少し驚いていたがこのぐらい冒険者ならばできるため驚かれない。
「ふむ…、作ってやろう、代金は50万だ」
「礼を言おう、少し頼んでもいいか?」
「なんだ?言っておくが魔力と闘力は流せるようにするからな」
「いいのか?結構掛かると思うが…」
「はっ構わねぇよ、お前はまだまだ成長すると見た、このぐらいどうってことない」
そして細かい部分を決めていく。
剣の形は今まで通りだがなんとカツジンは魔力を通しやすい銀ではなくオリハルコンを混ぜ、そして聖鉄を使い、聖獣の骨を使うというのだ。
さすがに最後のは遠慮したがカツジンは絶対に譲らないでそれで決まった。
カツジン言わく「お前のような弱い奴には最高の武器がないとダメだ」と言われてしまった、これを言われてしまえば押し黙るしかない。
ちなみに魔力と闘力を流せれる武具は聖魔武具と呼ばれ一握りの職人しか作れず、カツジンの腕の高さが分かるだろう。
それだけの素材を使うには熟練の魔力操作と闘力操作が無ければ作れないため聖魔武具を作れる者はだいたい戦闘の達人だ。
なので先程の一撃もカツジンからすれば余裕で防げで、簡単に俺を殺すことが出来る。
「何故ここまで俺を助けるのだ?これじゃ大赤字だろう?」
カツジンは目を細めて話す。
「…簡単な話だ、お前には俺と違い後悔をして欲しくない、それにオレは気に入った奴にしか本気で作った武器を売らないからな、お前には見込みがある」
「…分かった、いつかこの借りは返そう」
そして頭を下げる、本当にいい人だ。
「ふんっ…話が終わったなら帰れ、早速取り掛からないといけないからな」
「あぁ、ありがとうな」
そして店を出る、もう一度店の前で頭を下げてからギルドに向かう、今度は模擬戦のためだ。
冒険者になる者は少なからず常人よりは数倍の闘力、または魔力が必要で俺は常人の闘力、魔力しかなくてエイレーンと一緒に冒険した3年間は何とか技術で補って戦っていたが17歳の時ついに限界を迎えて別れた1年間は必死に追いつこうとしたのだ。
しかし俺は幸運なことに力を手に入れる資格を得たのだ、喜ばずにはいられない。
まぁ今は置いといて模擬戦をするか。
そしてもう一度ギルドの訓練場に入り同じCランクの者に模擬戦を誘う。
武器は木剣で十回先に当てた方の勝ちだ。
相手は俺のことを知っているのか少し気が抜けた表情だ。
「いつでもいいぞ」
そして走り出す、俺は闘力だけの身体強化で。