第十六話 エイレーン
不安や悲しみを押し殺すために頭を掻きむしりブツブツと同じ言葉を繰り返す。
「クロトクロトクロトクロトクロト………」
周りの人は怪訝な表情で見るがそんなものは私の頭には入ってきていない、常に付きまとう不安や悲しみで心がいっぱいなのだ。
その不安や悲しみとはクロトが死んでいないかとか他の女のところに行ってないかとか二度度会えないから来ている。
最初の一年半は大丈夫だったがある時から今まで押えていたものが爆発したように溢れ、精神のどこかが壊れてしまった。
こうなってしまっても休むことは許されない、なぜなら五万人に一人の『勇者』だから。
今はギルドに収集要請が入ったので向かっている途中だ。
私は魔大陸に集まっている『勇者』の中でも五本の指に入る実力は持っているが忙しくない時は一週間に一回ぐらいでしか呼ばれはしない、普通に性格とかの問題なんだろう。
気づいたらギルドに着いており扉を開けて入れば騒がしかったギルドは静まり返る。
誰も私と目を合わせようとはせずほとんどの人の顔には恐怖が浮かんでいる。
それを一切気にすることなく受付に来たことを伝え、いつも待つ場所に返事も聞かず向かう。
数分後、ギルド長が入ってくる。
「今日呼んだのはお前宛てにある手紙が来たからだ」
内心ではめんどくさいと思いながらも対応する。
「なんて書いてるんですか?早く渡して下さい」
「ほれ、お前に手紙を出す酔狂なやつもいたものだな」
その手紙の差出人には『クロト』と書かれていた。
私は一瞬で凍りつき震える手で開封する。
『エイレーンへ
まず最初に俺は今魔大陸に向かっている
出来ればだが着いたらすぐ会いたい。
お前がどんな状態になってしまっていて
もからなず俺は会いたいし会いに行くだ
から待っててくれ
最後にこの手紙は何度も書き直してこん
な短くなってしまったが会って話したい
ことばかりだ、俺の気持ちは一切変わっ
ていないからな』
その手紙を見て涙が溢れ、嗚咽する。
おそらくあと十日で船が着くだろう、その日が待ち遠しい。
残り十日、その日に会える。
誠に勝手ではございますが次回で最終回にします。
理由としましてはこの小説を書くのが苦痛になってきたのと新しい小説を書くからです。
無論この小説を書きながら新しい小説を書くのも考えましたが話のネタや書きたくなくなってきたのです、心の底から謝罪をします。