第十二話 カツジンとギルド長
ちょうどクロトがハイオーガを倒し終えた時。
「もう一度言う…それは本当か?カツジン」
「そうだ、聖獣グロウスの聖核は使った」
そして話し相手は怒鳴りつける。
「それがどれほど大事な物か分かっているだろう!!お前が認める者にしか使わなかったのでは無いのか!!」
「うるせぇ!!そんなこと分かっているっ!俺の最高傑作に相応しい者が現れただけだ!!」
「本当にわかっているのか!!グロウスの聖核は『勇者』達にこそ必要なものなんだぞ!!」
「ならば『勇者』共は【御業】の元となる力を操ることが出来るのか!?」
相手は突然カツジンがそんなことを言い出して困惑する。
「突然何を言っている!?そんなものいるわけないだろう!!」
そこでカツジンはクロトの事を話していなかったことを思い出し、少し落ち着いてから話し出す。
「現れた、この調子ならば少なくとも春ぐらいにはほぼ消費なく使えるようになっているだろうな」
その物言いに相手は狼狽える。
「な、何を言っている、冗談言っている場合じゃないぞ!」
「事実だ、お前はこの街では有名な最弱の冒険者を知っているか?」
少し考えて思い当たる節があり頷く。
「あぁ、なんでも冒険者の基準の10分の1で冒険者になり、闘力、魔力操作がずば抜けて上手いと言うやつだろう?」
「そいつだ、そうだな…80日前ぐらいか?その時に新しい剣作ってくれと頼まれてな、最初はもちろんグロウスを使わないつもりだったがそいつは【御業】の元となる力…まぁ【魔闘】だな、それを操り、一瞬だったが【強化の御業】使い、丸太を斬りやがった」
それを聞いた相手は驚きで固まっている。
「冗談だろ?人類ができるはずない」
ようやく口を開けばその言葉が飛び出す。
「知っているか?魔力、闘力を体に馴染ませるのは総量が少ない方が痛みはない、そいつはただ少しでも強くなるため完璧に馴染ませ、闘力、魔力操作も完璧に行えるようになったのだ」
相手はもう口を噤んだ、これは嘘を言っている目ではないと。
「たしか…90日前だったか、あいつは【御業】自体を知らないようだが【成長の御業】を授けられたと予想する」
「確かに魔力、闘力の総量が増えている、確実な事だ」
相手は息を飲む、まるでそいつは神話のヘルロードのようではないか。
どんな者でも1つしか使えない【御業】を何千と使い、その手で人類を救ったとされる誰もが知る救世主だ。
ただその人生は絶望の連続で人類の危機を潰したあと自殺をしたと明確に記されている。
「それは本当の事か?信じられん」
「本当だ、グロウスの剣を持つのはあいつに相応しい、それに…」
「それに?」
「…ワシと違い、まだあいつは守りたいもの失っていない、まだ間に合うはずだ」
その瞳に移すのはここじゃないどこかの景色を移している。
約一分、ようやく口を開く。
「そうか...この後一杯どうだ?そいつの話を詳しく聞きたい」
そいつはその言葉で満足したのか落ち着く。
「あぁ分かった、少ししたら酒場に向かう」
そいつが…元冒険者仲間で今はこの街のギルド長のセージは出てったあとカツジンは奥に引っ込みむ。
カツジンは今は亡き婚約者の写真を見る。
「フィン…これで良かっただろう?…」
「命と引き換えに討った邪龍の血とお前の相棒のグロウスを一緒に使ったことは申し訳ないがそうでもしないとあいつ…クロトは使えないからな、許してくれ」
「生きる意味は分からなくなったがクロトがどこまで行くか最後まで見届けたい、それまで待っててくれ」
立ち上がり、去ろうとした瞬間聞こえないはずの声が聞こえた。
ーー頑張ってーー
カツジンは立ち止まり一筋の涙を流す。
「あぁ、分かった…」
そのあとは酔っ払うまで飲み明かし気づいた時は自宅で寝かされていた。