第十一話 ハイオーガ
投稿を先週はできず申し訳ありません、今週か来週の月曜か火曜にはもう一度投稿します。
101日目、俺は森に入り、マジックウルフは避けてハイオーガを見つける。
「行くか…」
俺は深呼吸を一回して走り出す、俺を見つけたハイオーガは反射的に拳を放つ。
その攻撃は突然現れた物がいつものマジックウルフだと思ったのかそこまで力は込められておらず少し体を動かすだけで避けてすかさず右腕に聖魔剣を振り下ろす、聖魔剣は骨に当たって止まり、ハイオーガの腕は力が入らなくなる手応えを感じた。
「グオオォォォォォオォォォォッッッ!!!」
痛みに意識が向いてる隙に後ろに回り、足の腱を斬り捨てようとするが危険だと判断したのでそのまま背中を斜めに斬る。
ここまではハイオーガはおそらくここまで戦闘を意識していなかったので刃が通りやすく、動きも遅い。
ハイオーガ以上の魔物になれば本能で戦闘を意識すれば元の一倍、さらに闘力を使うと思えば三倍になる、今の内に攻撃を加えられたのは非常に幸先はいい。
ハイオーガが後ろを振り返ろうとしたので飛び引き、繰り出した拳の攻撃を避ける。
ここまで簡単に行っているが実際はかなりギリギリで一瞬でも迷えばもう死んでいるだろう。
これでも【魔闘】を使っている状態だ、それに【魔闘】を使ってようやく同じ土俵に立っただけで相手は俺より強い、それをどう覆すかが重要だ。
俺の手札は近接攻撃と五回ほど使える空撃ぐらいだ、空撃をどう使うかが鍵になるな。
俺はもうハイオークの時のようなことは出来ない、いきなり出力を上げる方法も無くはないがそんなものは十秒ほどで魔力も闘力も無くなる、必要に迫られれば使うが帰りがはるかに危険になるため使えない。
隙を見つけて攻撃をするしかないが相手は闘力の身体強化できる本能がある、昨日は仲間がいるから出力をあげれたが今回はそうは行かない、どうにかハイオーガが闘力を使っている間は耐えきるしかない。
「ここからが本番だ、行くぞ」
拳を聖魔剣で少しづつ傾斜をつけて受け流して拳はそのまま地面に落ち、完全に右腕を使えなくさせるため二の腕を下から切りつけ、横に跳ぶ。
剣は半ばほど骨で止まったがハイオーガは右腕をだらんとさせて動かしていない。
これで身体強化されても対応できる糸口ができた、ハイオーガは右腕が使えなくなったと分かるとすぐさま闘力を使う。
「ルぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁッぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
なぜ今までハイオーガが闘力を使わなかったかというと魔物は本来魔が付くだけあって魔力は十全に扱えるが闘力は持っていることは持っているが使えば生命を削り、寿命を縮める。
いつかの時代の戦士が言った、その行為は死神が全速力で走ってくるのを一歩も動けずただ見つめるしかない原初の恐怖だと言う。
魔力型(魔力を全て使えば頭が痛くなる人)は闘力を全て使っても問題ないので命に関わるレベルの闘力を扱えるのだ、闘力は言わば生命力、命の源だ。
神話の話になるが完璧に闘力、魔力を理解して操れるようになれば【創造】と【破壊】を思い通りに出来ると言う記述がある。
俺はこれを本当のことではないかと思う、実際闘力を体に廻らせれば自己治癒力が上がり、魔力を廻らせれば自己治癒力が下がる。
闘力は始まりを創る力、【創造】
逆に魔力は終わりを定める力、【破壊】
実はまだまだ魔力と闘力に関しては俺が知らないことが多いのだ、なぜ【破壊】の力で魔法や魔剣を創れるのだろうか?それは【創造】ではないのだろうか?
なぜ【創造】で斬撃を飛ばしたり、身体強化できるのだろうか?【破壊】では出来ないのだろうか?
無論、魔力でも半分以上魔力が馴染めば身体強化できるが分かりやすくいえば魔力総数の三分の一しか強化されない、ちなみに闘力だと完全に馴染んだ状態で二分の一だ。
これは何度も何度も考えたことだが未だに答えは見つかっていない、あと一歩何かが足りないのだ。
今考えるべきじゃないことを考えていたな、戦闘中に別のことを考える余裕は俺にはない、ましてやこれからより激しくなるのだ、一秒…いや刹那でもいいからどう対処するのかを考えるのだ、何も考えずに勝てる相手ではない。
とりあえずあの時のようにやろうにも無理だ、今は一人だからそれにあった戦い方をしなければ。
その瞬間ハイオーガが矢のような速度で迫る、当然俺は身体強化で脳の機能も強化されているため素の状態ならば目にもとまらぬ速さだろう。
「ぐ...っ!」
その恐ろしく重い一撃は受け流せれたが腕に痺れを残す。
続けて敵は蹴りを放つ、その攻撃はまともにかわすのは無理だと判断して間に剣を入れ自ら後ろに跳ぶ。
「ガハッ...!」
そうとう吹っ飛ばされ、その間に聖魔剣の効果で傷が治っていく。
くそっ!このままだと一方的にやられて終わりだぞ!
俺が今できることはより神経を研ぎ澄まし、ハイオーガの動きをとらえることだけだ。
...集中しろ、相手の動きを一片も逃すことなく、相手の些細な動きでも見逃すな、捉えろ、敵を。
その瞬間何かが変わるような音がしてハイオーガの周辺の色以外が消えていく、不思議なことにハイオーガがたてる音以外は消えていく、それはハイオーガに関係すること以外は無かったことかのように。
あれ...俺はいつからこれほどまでに思っただけで集中できたっけ?
おぼろげなその考えはハイオーガが動き出したことで霧散する。
先程までは俺より一段上の速さだったその拳は遅く感じられる。
それは俺が集中の先、常人が成し得る限界点だ、しかしそれに気づくのは先の未来だ、今は関係ない。
あのハイオークの時もそうだったがこの限界点に行かなければもう死んでいるだろうな。
この限界点は言うなれば【領域】と今後言うようにするか。
ここから避けるのは不可能と判断し、受け流す。
聖魔剣とハイオーガの拳が触れる、その遅く、長い一秒にも満たない世界で動く、少しづつ傾斜をつけるだけでなく完璧に衝撃を逃がすために細かく足の位置も変える。
そして俺の体感時間では五秒ほど経ち、これ以上は剣でそらす必要ないと判断して次の行動に移る。
左腕も無力化させるために剣を切りつける動作に入る。
体感時間三秒後、ようやくその拳が地面に落ちる、ハイオーガからしたらほとんど感触もなくいつの間にか地面に拳が落ちたかのように感じているだろう。
その間には既に剣は避けられない位置に迫っている。
ハイオーガは損傷を最小限に留めて今度は蹴りを放つ。
そうだな…少し試したいことがある、失敗しても巻き返せれるだろう。
俺はもし失敗してもすぐ判断すれば良けれる場所に行き目の前のことだけに気を配る。
右足から放たれる斜め下からすくい上げるような蹴りで普通なら避けるが会えて俺はその場を動かない。
刃を合わせる、左脚を斜め前に動かし、来たる衝撃に備える。
ぐっ…!思ったより重い!
しかしそれは想定内だ、俺は必死に空中に浮かないように耐え、少しづつ足や、体の位置、腕の位置、剣の位置を細かく変えていく。
今だっ!!
自分の体がその足の範囲から出た瞬間自ら地面から足を離し、ハイオーガの迫り来る足を起点に一気に力を掛ける。
それを見ている人がいるならばクロトが急に回転したと思うだろう、そしてその後の光景を見て絶句すると思われる。
ハイオーガの強力な力を回転力に変え、弾かれたかのように回転する。
その回転力を元に水平にハイオーガを切り裂く、剣の速度は到底今の俺では出せるものではなくその一撃はハイオーガを真っ二つにするには十分だった。
しかし俺はこの状態を解かない、理由は簡単だ、まだ敵がいる。
俺の残り【魔闘】は約半分、あと1分半というところだ。
俺はすでに目星をつけていた場所に一直線に向かう。
なぜ他にも敵がいることに気づいたのは単純に運が良かった。
それはたまたまハイオーガ以外白黒になった視界の中で狼…まぁマジックウルフだろうな、そいつが草の間から様子を伺っているのが見えたのだ。
このまま気づかなかったら本当にやばかった、油断したところで四、六匹のマジックウルフを相手するのは今では無理だ。
ハイオーガが居た少し開けたところから出ればマジックウルフが噛み付こうと襲ってくる、当然俺は予想していたことなので横に一閃して死に至らしめる。
完全に森の中だと相手側が有利になるため先程の場所に戻る。
ちなみにマジックウルフというとエアカッターみたいな魔法を使ってくると思ってるかもしれないがマジックウルフができるのは体に風の刃を纏わせるのと魔力での身体強化だ。
その分知能が高く、群れを形成して連携して襲ってくるのが特徴だ。
「こい、今の俺に勝てるのならな」
その後身体中に数えきれない生傷を作ったが勝ちを拾う、【領域】の状態になったらぎりマジックウルフには勝利できる。
クロトの身体能力は数字で表すならば10、魔力、闘力も10です。
そして【魔闘】にしても魔力、闘力の総量は変わらなく、合計で20になります。
【魔闘】では魔力、闘力の合計で強化されます、それで身体能力も合わせて合計30です。